episode10〜炎の中で〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
カーンカーンッと危険を知らせる鐘の音が、街中に鳴り響く。
(火事だ!!)
飲食店であろうか。
その建物から高く登った黒煙は、真っ赤な火と共に街を赤黒く染め始めていた。
街の人々が逃げ回る。
転んで逃げ遅れそうになる者もいる。
そんな中、現場のすぐ側で取り乱してる男女がいた。
「娘が!! ロザリーがまだ!! 中に!!!」
今にでも火の中に飛び込みそうなその二人を、必死に止める大人達。
「ダメだ!! もう中に入れないぞ!! 危険すぎる!」
「いやぁぁあーー!!」
(嘘でしょ… 中にまだ? そんなのって… )
カヌアは考え…… なかった!
そんな考える余裕なんてなかったのだ。
近くにあった洗濯途中だったであろう水樽を持ち上げ、全身に浴びる。
そして、濡れてた布を頭から被り深呼吸をして、燃え盛る建物へと入って行った。
「おい!!!」
そう制止しようと周りの大人達が声をあげたが、カヌアは既に火の中に飛び込んでいた。
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(熱い… 熱い… どこにいるの??)
灼熱の燃え盛る炎の中、カヌアは低く身を屈めている。
(うっ… こんなの… 息が持たない… )
ガラガラ… ドンッ
燃える建物から、何かが落ちる音が聞こえた。
(どこ… )
すると、女の子の声が微かに聞こえた。
「マ… マァー」
(早くしなきゃ!!)
「ママァーパパァー熱いよ… 助けて… ゴホッ… 助け… 」
弱々しくも、必死に助けを求める声が聞こえる。
(声が近い!)
すると、部屋らしき隅に女の子が、ぬいぐるみを持ってうずくまっているのが見えた。
(いた!!!)
ゴホゴホと咳き込む。
しかし、女の子はうずくまって動かない。
「ロザリーちゃん!?」
カヌアは、頭からかけてた布を少女にかけた。
その時、バラバラっと天井から建物が崩れ落ちてきた。
(あぁ、本格的にヤバい… マジで。この子だけでも助けない… と… )
カヌアは咳き込む中、意識が遠のくのがわかった。
(苦し… い)
「いた!! ここだ!! おい! おいっ!! しっかりしろ!! くそっ!」
(誰… ? か助け… )
「ウィル…… ?はっ!! この子をっ! 早く!!」
その目の前にいたのは、カヌアを探しに街へ来たウィルであった。
ウィルは一瞬ホッとしたが、すぐに険しい表情に戻った。
「もう少し我慢しててくれ」
そしてウィルは、カヌアを抱えた。
付き添ってきたカブラは、少女を抱いて足早に建物から出た。
外では少女の両親が、絶望で立てなくなっていた。
しかし、ウィル達が出てきたのに気が付くと、カブラの腕に抱えられたロザリーを見てすぐに駆け寄ってきた。
「あぁーロザリー!! ロザリー!!」
両親が精一杯の声をかける。
「大丈夫ですよ。少し煙を吸い込んだみたいですが、彼女が濡れた布で保護してくれてました。あとは火傷がどの程度か見てあげて下さい」
カブラはそう微笑むと、そっと父親の腕に手渡した。
「ありがとうございますありがとうございます!」
何度も頭を下げてお礼を言った。
一方、ウィルはカヌアを現場から、少し離れた木陰へとおろした。
(熱いな… )
ウィルの手が、カヌアの顔をすべる。
水で濡らした布で顔を拭ってあげると、カヌアの意識が少し戻った。
「あ… れ?」
「大丈夫か? 水… 飲めるか?」
ウィルはそう言うと、持っていた水を口に運ぶ。
しかし、弱々しくも口から水が流れ出てしまう。
するとウィルは水を自身の口に含み、そのままカヌアの口に流してあげた。
飲み込むのを確認すると、ウィルの腕がカヌアの背中に周る。
そして、そっと抱き寄せた。
(なんでこんな無茶なことしたんだ。まだお前に何も伝えられてない。何も出来てないのに… )
心が押し潰されるような思いで抱きしめた。
カヌアの意識は昏蒙していたが、その温もりに安心を覚えていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。