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episode99〜朝から〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




翌朝、カヌアはベッドの中で目が覚めた。


昨夜の出来事が、全て夢だったら良いのにと思いながら。


そして、どうしても反対側を向けない。


カヌアは今、狸寝入り中であった。


なぜなら、後ろからしっかりと身体を抱きしめる腕があったからである。


(どうしたもんだか…抱き枕と勘違いしているのかな?)


カヌアがそーっと、その腕を剥がそうとする。


しかしその腕は離れるどころか、更に力が強まる。


「なぜ離そうとする?」


そう後ろから、寝起きの声がした。


カヌアはビクッとしながらも応える。


「ウィ、ウィル様?起きてらっしゃったのですね?少し苦しくて…」


嘘をついた。


顔が熱くなっているのが自分でもわかるので、後ろは向けない。


その言葉でその腕の力が少しばかり緩まったが、相変わらず離してはくれない。


カヌアはしょうがないので、このまま顔を合わせないで会話を試みた。


「あの…昨夜はいつの間にか眠ってしまったようで…確か、月を見ていたら急に眠気が…」


すると、ウィルもその状態のまま会話をする。


カヌアには見えないが、とんでもなく幸せそうな顔をしていた。

とんでもなく。


「あぁ、昨夜は綺麗な満月だった。カヌアは遠征中に寄った湖で、花模様のアザの男を見かけた時も満月だったと言いかけたように思えた…その時に眠気が一気に来たようでそのまま眠ってしまったんだ」


「えっ!?ではもしかしてウィル様が、ベッドまで運んでくださったのですか?こんな重い女体を担いで?」


カヌアは驚いて後ろを向きそうになったが、堪えた。


「ふっ、女体って…いや、全然重くもないし、それにもう何回も運んでいるしな」


ウィルは優しく応えてくれる。


(た、確かに…この国の殿下を運び屋になんかにさせてしまって、なんて罰当たりな…申し訳なさすぎる…)


「いつも、ありがとうございます…ウィル様の筋力向上に貢献させて頂き光栄です」


カヌアはいらぬところに貢献していた。


ウィルも全然気にしていない。


むしろカヌアの身体に触れらて、ラッキーとさえ思っている。


「その満月にも何か意味があると思っているのか?」


ウィルが気になりそう言うと、カヌアは少し考えながら言う。


「う〜ん…全然根拠はないのですが…なんとなく…薄い直感で言いました。…あまりお気になさらず…そう言えば、昨日はあの後、都の人達は何事もなかったんですかね?」


「そうか…カヌアの直感はどんなに薄かろうが、俺は信じている。他にも気になることがあれば、何でもいいから言ってほしい。都の件だが、今朝方、カブラからの報告があった。他の街の民達の行動も全て止まっていたらしい。そして更に周辺を確認させたところ、民の異様な行動にはムラがあった…北から北東にかけてが多かったようだ」


そう説明してくれたウィルのある言葉に、カヌアは引っかかった。


(ん?今朝方?)


「えっ!?今朝、カブラ様がここに来たのですか!?えっ!?まさかとは思いますけど…この状態で聞いたりは…」


とカヌアは思わず、ウィルの方をバッと向いて聞いた。


変なところに焦点を向けるカヌア。


しかしウィルはどんなカヌアの言葉にも、ニコッと笑ってちゃんと応えてくれる。


「あぁ朝方、このベッドの上でな」


(マジか…見られた…この状態を見られた…めっっちゃ恥ずかしいんですけどっ!!)


カヌアは寝起きのウィルを見てしまったがために、更に顔が赤くなった。


ウィルはとても幸せそうに、ニコニコしている。


(ち、近いよっ!めっちゃ温もりが…心臓の音が聞こえちゃ…)


きゅるきゅるきゅるきゅるるるるる…


彼女のお腹の虫さんである。


もはや、動物の鳴き声だ。


気持ちより先に、お腹の音が伝わった。


ウィルは笑う。

屈託のない、幸せそうな笑顔で。


「着替えておいで。朝食を一緒にとろう」


そうウィルに言われ、カヌアは部屋に戻り着替えをした。


その前に少しばかり湯浴みをして、さっぱりともした。



そして朝食をとり終わったカヌア達は、昨日の民達の行動の軌跡をもう一度確認すべく、都へと移動していた。


(昨日のままだ…色んな場所が塞がれているな…)


あちらこちらに、石や土などで穴を塞ごうとした跡がある。


そのために集めたであろう、様々な大きさの石が積み重なっているところもある。


家から持ってきたような、ガラクタなんかもあった。


「ウィル様、そのカブラ様がおっしゃっていた、北東の方に行ってみたいのですが…」


「そうだな…それは俺も気になっているが…少し寒いところになる。羽織物を持って行こう」


とウィルはカヌアの身体を労るように言ってくれた。


そして二人は愛馬を走らせた。


「北東の方だと、アリオトの街ですよね?それ以上北の方だと、ケーフ山脈?でも山の方には人はあまり住んでないですよね?」


「確かにケーフ山脈の麓には少し離れたところに姉さ…エウネ王女が住んでる旧邸があるくらいか…アリオトの街も放牧を生業としているから、アルデリアの中で一番住民が少ない街だ」


(もう姉さんで良いのに…恥ずかしいのかな?ふふふ、お可愛い事)


「人が少ない場所なのに、一番塞がれてる数が多かったんですよね?…やはり都の人達は何かをしようとしていた…いや、意識がないから操られてる…に近いのかしら?ん?誰に操られていた?何のために?」


「ふふっ、心の声が漏れているな。いつもその調子で聞いていたいものだ」


ウィルは微笑んで言った。


それを聞いたカヌアは思った。


(あ…漏れてた?でも、私の声全部を外に出したらヤバいのよ?ドン引きするよ?)


それはやめといた方がいい。


まずカヌア達は、アリオトの街に来た。


広大な草原が、先の見えない所まで広がっている。


至る所に牛や羊、馬や豚などが放し飼いにされていた。


どの動物達ものびのびとしているように見える。


「んっっあぁぁ!きぃもちいぃ…」


カヌアは思わず、素のまま伸びをしてしまっていた。


それをニコッと微笑んで見ていたウィルの視線に気が付き、顔を赤くして途中で伸びるのをやめた。


「良い所だよな…何回来てもここは落ち着く。夜も一面の星が綺麗なんだ」


と言ってウィルは空を仰いだ。


「それは是非とも見たいですね!では街の人に話を聞いてみましょう」


ウィルは優しく頷き、民達がいる住宅街へと向かった。


街というよりは集落に近い。


そこには、これまた自由に歩き回っているニワトリやアヒル達がいた。


しかし、やはり昨日の出来事のせいか至る所に石などが集められて置かれていた。


都ほど目立つ穴はなかったが、どんなに小さな穴も塞がられていた。


民達に話を聞いたが、都同様に行動を起こしていた人はやはり何も覚えていなかった。


見ていたもの達は、止めようとしても誰も耳を向けなかったらしい。


そして、突然一斉にその不可解な行動をやめたと思ったら我に返っていったという。


(都の人達と全く同じだ…行動をやめたのは恐らく…)


カヌアはウィルの方を見た。


するとウィルは、足元の塞がれていた小さな石ころを足で転がした。


それを一緒にかがんで見たカヌア。


(こんな小さな穴も?)


カヌアが見てそう思ったのは、蟻の巣穴であろう小さな穴だった。


「蟻さんのお家が…塞がれてしまって、外にも中にも出入りできなくなってしまってますね…土の中にある…家…が……」


カヌアは自分で言った、その言葉に思わずハッとした。


ウィルも目を見開きこちらを見て、同じことを思ったようだった。


「地下…にある家!地下室!あるいはもっと大きな…何かが?」


「あぁ。もしかしたらその地下に行かせない、もしくは出させないために穴を塞いでたんじゃないか?」


カヌアは激しく同意して、首を大きく縦に振った。


「すんごくそう思います!!絶対そうだと思います!ウィル様!見つけましょう!絶対に!その地下への入り口をっ!」


カヌアがそう意気込んで言うと、ウィルも力強く頷いた。


そして二人は更に北にある、ケーフ山脈へと向かった。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。


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