episode9〜訪問〜
初連載の続きです。本日2回目の投稿です。ゆるく読んでいただければと思います。
服装をちょっぴりキメている麗しの王子。
只今、馬に乗って爆走中である。
側近のカブラともう一人の従者を従えて、リヴール家に向かっているのである。
そう、目的は決まっている。
ウィルは馬から降りると、軽く身だしなみを整えた。
カブラがリヴール家の門を叩く。
すると、中から使用人のエミリアが出てきた。
「はい。リヴール家使用人のエミリアでございます。どちらさ… !? 少々お待ち下さいませ!」
勢いよく一礼したエミリアは、挨拶の途中で顔色を変え、一度扉を閉めた。
「奥様!!! 大変です!!」
外からでも慌てているのがわかる。
その声は、屋敷中に響いてた。
丸聞こえである。
ガタン! バタバタバタバタ… ! スゥー、トントン…
公爵家とは思えない騒々しさだ。
一瞬静かになったと思ったら、ゆっくりと扉が開いた。
それとともに、凛としたそれでいて落ち着いた(ように見える)リヴール家の女主人、アメリが出てきた。
「ごきげんよう。ウィルテンダー殿下」
アメリは、とても美しい一礼をした。
「本日はわざわざご足労いただき、誠にありがとうございます。主人は只今私用のため、外に出ておりまして、夕刻には戻られるかと… 」
アメリの言葉に、ウィルが前へ出てきた。
「あ、いや、いきなりすまない。今日ここへ参ったのは、その… 」
カブラが、圧のすごい笑顔でこちらを見ている。
「カヌアーリ嬢はおいでか?」
ウィルが言うや否や、アメリがとても驚いた表情で応えた。
「カヌアーリ… ? でございますか? 娘は今… 」
何か言いたげに、エミリアをチラリと見る。
エミリアはふりふりと首を横に振り、何やら口で伝えた。
「申し訳ございません殿下。只今娘も外出しておりまして、恐らく… ミザールの街にいるかと」
「そうか、わかった。久しぶりに街も見たかったし、少し寄ってみることにする。急に来てすまなかったな」
そう言い残すとウィルは、頭を下げたままのアメリとエミリアを後にして、馬の方へ戻った。
(殿下… カヌアを探しに街へ?)
その姿を見送ったアメリは、胸の鼓動が収まらないまま屋敷へと入った。
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ミザールの街。
その場所は、王都グランシャリオから少し東よりにある。
屋敷から近いこともあり、カヌアはよくこのミザールの街に出没していた。
当の本人はというと…
馬具専門店をうろついていた。
手にしているのは、手綱を引くためのグローブだ。
その丈夫さとフィット感を、念入りに見定め試着していた。
「わ! すごい柔らかい! 変に指の間に当たるところもなく、無駄なところが全くないわ! 店主殿、これ下さいな」
「カヌアーリ様、いつもご贔屓にしてくださり誠にありがとうございます。またいつでもお待ちしております」
(フラフィーの目がお金になってるぞ、店主)
そう思いながらも、満面の笑みで上質な逸品を手に取り、店を出た。
「……… 」
(ってちっがーーーーーーう! 私はこんな呑気に買い物してる余裕なんてっないのにぃぃい)
そうである。
カヌアはデビュタントのためのパートナーを物色…いや、探すために街へ来ていた。
はずだった。
え? 成り行きすぎないか? 安易じゃね? ってお思いのところだろうが、本当にピンチなのである。
もう、手当たり次第なところもある。
彼女はこれでも必死なのだ。
(くっそ! こんなことになるなら、あの時人脈作っときゃ良かった! あの三年前に… ん? 人脈… うーん、いるな一人… )
脳裏に浮かぶ麗しの…
(いやいやいやいや、ないないないない)
すぐさま消去した。
すると、街の中が少し騒がしくなった。
人々のフラフィー達も、飛び回って動揺している。
(あ、ヤバい。酔いそう… )
するとカヌアはふと、煙の匂いを感じとった。
遠くの方で、黒い煙が上がっているのが見える。
「まさか!!」
そう発した時には、足がそちらの方向へと走っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
こんなぺえぺえが調子に乗って2話も投稿してしまいました。突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。