表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/134

プロローグ〜蘇る〜

初投稿になります。

小説を書くのも初めてです。

お心広く読んでいただければと。

よろしくお願いします。


その時、男の頭が濡れた。


カヌアが、頭から水をぶっかけたのだ。


顔を伏せながら言うカヌア。


「… ぇだよ」


「あん? 何しやがる!?」


「お前だよ… お前が一番迷惑な、ん、だ、よ!!」


そう、指を強く男に突き出しながら言った。


周りが静まり返る。


王子達も唖然としていた。


しかしカヌアはもう止められなかった。


何故… こうなった。

五年前のあの日…

その時から、カヌアの人生が一変したのだ。



〜五年前〜


(あれ? ドレス? 木... ? おおお落ちっ… !)


ドスン!!


少女は、木の上から盛大に落ちた。


すると、突然過去の映像が甦る。


目の前が真っ白く光り…


「え? 死… んだ… ??」


そう、彼女の前世の記憶が突然蘇ったのだ。


何もかも嫌になったあの時… 私はある事を望んだ。

色んなことを押し付けられて、押し潰されて、心が荒んだ…

それで、空っぽになった、心が…

そう、胸を押さえる。


(そうか、あの日私は… トラックに轢かれて死んだのか… )


変わりたい、やり直したい、分かりたい… そう願った。


そう願った、願っ…


(ちがーーっう! そうじゃないっ! そうゆう事じゃない!! 死にたいとか! そういう事じゃなかったのに… え? 死んだ? 私… 本当に死ん… )


彼女は、緑色に揺れる葉の隙間から空を見た。


(…… ん? でも生きてるな? でも何だか身体は小さい気が… それに何かの… 感触もあるし… ?)


彼女は木から落ち、芝生の上にいたとそう思った。


(いや!! 芝生じゃない! 人だ!!)


「痛っってぇ… 」


運悪く彼女の下敷きになっていたのは、艶のある黒髪の少年であった。


「ごぉごごごごめんなさい!! いーーったかったですよね!?」


驚いた彼女は横に退きながら座り、少年の髪の毛に付いていた葉っぱを払った。


少年はとても綺麗な装いで、左目の下に涙ぼくろがある。

そして、右肩にいる怒ってる小さな綿毛も払った。


(ん? あれ? 払えない? なんで??)


そう思いながらも、払い続ける。

それに対し、その綿毛はもっと怒り始めた。


(ナニコレ??)


「おい!! 痛てぇよ!」


少年は怒る。

横に同じで綿毛も怒る。


「ごめんなさいぃぃぃ!」


(めっちゃ怒ってるー!)


彼女がそう思っていると、遠くの方から誰かが駆け寄ってきた。


「カヌア! 一体どこに行っ… !!!?」


この状況を見て途端に顔色が変わったその男性は、頭を地面にこれでもかってくらい押し付けながら正座をし始めた。


「ウィルテンダー殿下!! もも申し訳ございません! 娘がとんでもない失礼を!」


男性と一緒に来た女性は、彼女を少年から即座に離し、頭を下げさせている。


恐らくこの世界での彼女の父と母なのであろう。

こちらの世界での今までの記憶も微かにある。


彼女はカヌアと呼ばれていた。


(え。殿下? でんか? デンカ?? 殿下って王族? え!? 王子様って事??)


その状況を読み込んだカヌアの顔は、途端に青白くなり、血の気が引いた。


(やべぇ… とんでもねぇことしちまった… あぁ、え? 死刑とかになるのかな? 鞭打ち? 一家差し押さえ? 崩壊? この国のルールがわからない… でもやばい事は確か… ん? 父の肩に…

見えるなぁ… あの王子様の肩にもいたような綿毛が、父と母の肩にもいる。しかもなんか、怯えてる? 何だろ? 殿下の綿毛ちゃんは怒ってるし… )


カヌアがそう思っている中、殿下は立ち上がった。


こちらを睨みつけてるのか、様子を窺っているのかわからない。


そして、口を開いた。


「まぁよい… お前、怪我は?」


と殿下が言うが、右肩の綿毛ちゃんは罰が悪そうな顔をしたままだ。


左肩からひょっこり顔を出した綿毛ちゃんは、今度はものすごく心配してるような顔をしてこちらを見ていた。


(… ん!? 何だ!? 左肩から大量に心配した綿毛が出てきたぞ!! なんだ、おい! 妖精? … にしては、それぞれ主の表情に似てるなぁ… はっ!!)


カヌアはそう思いながら、返事をした。


「だっ大丈夫です!! 大変失礼致しました!」


腰が折れるのではないかというくらいの、精一杯のお辞儀をして謝った。


ウィルは少し安堵したような表情を浮かばせながら、頷いた。


「ならよい。家でちゃんと診てもらえ」


「はいっ! 寛大なお心痛み入ります!!」


父が恐れながら言う。


両親は深い一礼をした後、娘を猫を連れ帰るかのように、足早に馬車へと戻った。


すると城の方から、剣を持った青年が走って来る。


ウィルの側近、カブラディアである。


カブラはニヤニヤと笑いを堪えるのを、隠すこともなく言う。


「ウィル様、助けに行ったはずなのに、なぜわざわざ彼女の下敷きなんかにおなりに?」


「うるっさい!」


ウィルは顔が真っ赤になりながら、城へと踵を返した。


ここまで読んでいただき、誠に有難うございます。

何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ