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羽ばたけ!ツイン二式水戦!

1943年、三菱、中島両会社の大型陸上攻撃機設計の遅れにしびれを切らした帝国海軍は、川西の二式大型飛行艇により長距離爆撃隊を編成した。しかし、ハワイ爆撃や西海岸爆撃を繰り返す内に敵迎撃戦闘機に追い回される事案が毎回と言っていいほど発生するようになった。

これに困った帝国海軍は、海軍空技廠に以下のような命令を出した。


「二式大型飛行艇に追随、護衛し、敵迎撃戦闘機を撃滅しうる水上戦闘機を開発せよ。」


海軍空技廠は悩んだ。本来、水上戦闘機などの「水上」と名がつく飛行機は川西に丸投げすると決まっていた筈なのに、何故自分達なのか。海軍首脳の考えはわからないものである。


仕方がないので設計を行った。すでに開発した零式双発陸上戦闘機は大好評である。零戦の胴体を延長して発動機を金星に交換して横並びにくっつけた双胴戦闘機であり、「アメ公のペロハチ(P38)と似ていて気分が良くない」といった不満はあったものの、性能はずば抜けて優れているため、訓練不足のひよっこ搭乗員が一夜にして撃墜王になるなど南方戦線で無双の限りを尽くしている。


とある若い技官が言った。「零式双発陸上戦闘機にフロート二つつけたらもう完成なのでは?」と。



……完成してしまった。二式双発水上戦闘機である。

二式水戦を二つくっつけたような形をしているが、実際のところは零式双発陸上戦闘機の胴体下に二式水戦のフロートを着けて、翼端を大幅カットして円く整形しただけの手抜き設計である。今回はさすがに着艦制動フックは取り外した。また敵地到達の時間が夜間であることも想定して赤外線暗視照準器と不可視光照射装置を装備した。このせいで1機当たりの単価が二式双発陸上戦闘機の3倍に膨れ上がった。なお二式としてあるが正式採用は1943年である。さらに言うと開発命令が下されたのも1943年であるし、初飛行は1943年の4月3日である。


フロートの装備によって各種性能が悪化したが、速度性能に関しては翼端大幅カットと円形整形によって最高速度568km/h(高度8000メートル)と良好である。この副産物として横転性能が零戦並みに回復した。また高高度を巡航するため、発動機を排気タービン搭載の金星に交換、電熱飛行服用電源と呼吸用酸素ボンベを搭載した。航続距離はフロート内部に燃料を満載していることもあって増槽なしで7500km+全力戦闘30分、本機専用の800L増槽三基を中央主翼と左右両主翼に懸架すると10000km+全力戦闘30分とこの時代の双発戦闘機にあるまじき値となった。


実際に戦線に投入した頃にはミッドウェー海戦の敗北が響いてだいぶ劣性になっていたために西海岸爆撃はおろかハワイ爆撃の成功率さえ無に等しかったが、北海道沖に潜水艦による洋上補給地点を設定してからはアラスカへの爆撃が安定して出きるようになり、二式双発水上戦闘機もやっと活躍の場を得た。零戦が元になっているとは思えぬほど機動が鈍重であるため、敵迎撃機が近寄る前に一撃離脱で叩き落とす戦法をとって二式大艇を必死に守ったが、しばらくするとアメリカが対日戦に割ける物量が増えてきたためか迎撃機の数が一気に増加、圧倒的性能を誇る二式双発水戦も圧倒的物量には勝てず米西海岸及びアラスカ爆撃は中止を余儀なくされた。


かといって二式双発水上戦闘機の活躍の場がすぐになくなったわけではない。なんと折り畳み主翼を装備、呉式射出機に対応した三三型が登場し、レイテ沖海戦にて小沢艦隊所属の航空戦艦伊勢、日向及び西村艦隊所属の航空巡洋艦最上に搭載され貴重な航空戦力として奮戦した。


特に最上搭載機の活躍はすさまじく、まず出撃地点で水偵と比べてあまりにも巨大な二式双発水戦を6機も詰め込んだり、敵が偵察として差し向けた小型機20数機をわずか3機で撃退したり、夜間照準器を装備しているのを利用して夜間哨戒を行い、迫りくる魚雷艇をとことん撃退したりした。


またその航続距離の長大さを利用して発艦からずっと無補給で哨戒活動を実施したため、数々の敵艦を攻撃前に発見、大量の敵艦が待ち構える海峡出口まで艦隊を無傷で突入させることに成功する。


海峡出口付近に近づいた際に最上三番機が海峡を塞ぐように並ぶ敵艦隊を発見、魚雷は最早不要と判断した最上艦長は魚雷を即席航空魚雷に仕立て上げ予備の二式双発水戦四番機、五番機、六番機に搭載して雷撃を行うよう命じる。なお思考するまでもなく重量超過である。予備機部隊は見事魚雷を全段命中させ、戦艦二隻を撃沈した。


その後も敵艦隊上空を舞い続け、照明弾を投下したり、敵電探と思わしき艤装に銃撃したり、敵巡洋艦の魚雷を銃撃し撃沈したりと劣性ながらに奮戦した。


しかし奮闘虚しく、西村艦隊は駆逐艦をすべて喪失、山城、扶桑、最上の順で海峡を突破してレイテ湾に向かうも、海峡突破の際に敵の攻撃を一手に引き受けて炎上していた山城がついに大爆発を起こし沈没、最後尾で通過した最上は敵重巡洋艦と衝突した際の穴からの浸水が原因で落伍、扶桑が単艦にてレイテ湾に突入、敵上陸部隊に砲撃を浴びせたが、敵護衛艦隊の攻撃を受け大破、なんとか撤退を開始するもハルゼー艦隊の攻撃機による雷撃を受け沈没した。


一方の最上所属二式双発水上戦闘機部隊は小沢艦隊方面に飛行するも途中で空襲を受ける栗田艦隊を発見し、空中戦に突入、敵攻撃機15機を撃墜するも4機が墜落、残る2機は引き続き小沢艦隊を目指す。しかし小沢艦隊上空に到着するもこちらも空襲を受けており、伊勢、日向搭載の同型機と共闘、合計で敵機22機を撃墜したがどの艦も補給は不可能な状況であるとわかると友軍基地に向けて飛行を開始した。


最上所属最後の2機はなんとかサンホセ基地に到着、補給を受け再出撃したものの艦隊はすでに敗走を始めていたため、単独でレイテ湾に向かい敵地上部隊に銃撃を行った後に特別攻撃を敢行、壮絶な最後を遂げた。


戦後、伊勢搭載の一機が海中から引き上げられた後に日本でオーバーホールされ、二式大型飛行艇と共に靖国神社所有の動態保存機として時々東京上空を飛行している。

当初の目的は全うできなかったものの、祖国を必死に守り抜こうとしたその機体を、どうか眺めてやってほしい。





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