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命の優先順位  作者: ディひター
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鴨山さんがいない

 8月1日付で、鴨山さんがいなくなった。



 実際には6月からいなかったのだけれども、7月31日が交通政策課に所属していた最後の日となることになった。


 鴨山さんは今年の4月に交通政策課に異動してきて、交通政策班の班長だった。この課の経験はなかったというのもあって、この班ではどんな業務を担当していたか、説明しながら判断をもらっていた。


 しかし6月に、他の課の業務が多忙ということで、一時的に貸し出されることになった。2つ前に所属していた課らしく、私は入庁する前のことだが、かなりそこでの経験が長く、どうしても鴨山さんの知識と経験が必要だったそうだ。


「一時的に行くだけですよね? まだここ来て2か月ですし、鴨山さんこのまま異動なんてことないですよね?」


 その課には私の知り合いはいないが、激務だという噂は嫌でも耳にする。昨年から時間外は全員が月100時間を超えているらしく、鴨山さん以外にも他の課から応援が数名行くらしい。


「異動してきたばっかだからね、さすがに2~3か月だと思うよ。せっかく交通のこと、周防さんにいろいろ教えてもらって、面白いと思い始めたところだしね」


 そういって6月に鴨山さんを見送って、約2か月が経った頃だった。7月30日。終末と月末ということもあって、比較的余裕のある私たちは、ちらほら夏休みを取得している職員もいた。



「このあと正式な通知がグループウェアに載ると思うけど、来月から正式に異動になります。短い間でしたがお世話になりました。荷物はもう全部運んであるから、パソコンとか机とか、悪いけど周防さんよろしく」


 夕方ごろ、久々に鴨山さんが交通政策課にやってきて、そう課長や部長と話したあと、課内でそう私たちに伝えた。


「鴨山のとこが忙しいのはみんな知ってると思うけど、来月から10人ほど職員を増やすことにしたんだ。うちは残念ながら1名減となるけど、みんな頑張ってほしい。鴨山は大変だと思うけど、頑張ってくれ。歓迎会もできてないのにゴメンな」


「落ち着いたら、歓迎会と送別会ひらいてくださいね」


 目の下にクマができている鴨山さんは、少し笑いながらそう言ってくれた。



 8月1日付で、鴨山さんは正式に、健康増進課の職員となった。

 担当業務は、新型コロナウイルス感染症対策。

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