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01 自称公園の番人、ついに見られる


 5月の日曜日、昼下がりの公園。


 穏やかな天気だ。



「やめろよ!」

「いじめじゃねぇって、なぁお前ら?」



 そんな日に気持ちよく眠っていた俺、望月もちづき あおの目の前で、実にベタな展開が繰り広げられていた。


 両手を広げている5歳程の少年は、将来かなりモテるだろう。何せクリックリの二重だ。ちなみにその少年の後ろで守られている小さな女の子もクリックリだ。


 その少年と相対する子供達はいかにも悪そうだ。反抗期が来る前に親に反抗するタイプだろう。


『行くの? 蒼お兄ちゃん』

「あぁ、放っておけない。何よりも、俺の昼寝を邪魔した子供には天罰だ」



 心配そうに俺を見つめるのは義妹のみおだ。彼女の不安を他所に俺はのっそりとベンチから起き上がり、騒動の中心へと近付く。


「待ちたまえ君たち」

「汚ねぇおっさんはすっこんでろよ」

「おっ……はぁ!?」

『蒼お兄ちゃん落ち着いて、相手は子供だよ!』


 ……そうだ、子供には冷静に優しくだ。

 ニィっと笑って悪ガキの方に近づく。


「き、気持ちわりぃ笑顔だな!」

「いいかお前ら。いくらその女の子が好きだからって、こんな事をしては逆効果だ。少年と女の子を見てみろ、引っ付いちゃってるじゃないか」

「ちげーよ! そいついつも男の影に隠れてだせーんだよ!」

「知るか。とにかくだ、この公園で問題を起こすな。親を呼ぶぞ」

「う、うるせぇな……分かった帰るよ。行こーぜ」


 悪ガキ達はぞろぞろと去って行った。

 今時あるんだな、こんなシチュエーション。 


 振り返り、勇気ある少年の頭を撫でる。


「大丈夫か?」

「うん。おじさん、ありがとう」

「おじっ……おう。どういたしまして」


 こっちのイケメン少年は礼儀正しい。女の子の方も将来美人になりそうな顔立ちをしている。けど、おじさんは酷い。


「でも注意しろよ、これだけでは終わらないかもしれない。むしろこれからだ」

「え?」

「君がその子を助けた事によって、君も悪ガキ達にいけ好かない奴だと認識される。そうなってしまうと恐ろしい事になる。……奴らの興味が、君の方に向くんだ。一つ怖い話をしてやろう、数年前に起きた出来事でな……」

「お、俺は女の子の方がいい!」

「いや、そうじゃない。何だマセてるな君」


 俺の注意を聞いて、少年は怯え始めた。女の子に至っては、ジリリリとなる防犯ブザーに手をかけている。え、ちょっと待って俺が不審者なの?


「と、とにかく気を付けろよ、困ったことがあったら両親だけじゃなく先生にも相談するんだぞ!」

『ぷぷ、蒼お兄ちゃん格好悪いね!』

「ほっとけ!」

「ひぃっ!」


 あぁもう。


 怯える子供達に背を向けて、ベンチに戻る。

 バイト前に寝ておかないと。


『蒼お兄ちゃん、もしかして噂になってるんじゃないの? この辺で昼から寝て幼稚園児に声を掛ける浮浪者みたいなさ』

「まさか。俺は公園の番人のようなもんだぞ、たまに行儀よく本読んでるし」

『最近の子供は怖いよ? 今みたいにそうやって私と独り言してる姿もしっかり見られてるし』


 そうだ。


 ()()()()()()姿()()()()()()のだ。


 澪に言われて後ろを振り返ると、さっきの子供達が公園の隅で女子高生に抱き着いたままこちらを指差していた。


 というか、あれはうちの学園の制服だ。

 それに……よりにもよって知っている顔。



 雛白ひなしろ ゆい――。



 透き通った白い肌にピンク色の唇。二重の大きな目に長い睫毛。それに人目を引く薄い亜麻色の長髪は、常に光を反射しながらサラサラと流れている。


 整った容姿とは彼女の事を言うのだろう。雛白は学園が始まるや否や、その圧倒的な美少女っぷりで学園中の男子の話題をかっさらった。


 一言で言うと、絶世の美少女。

 誰がどう見ても可愛いのだ。



 そんな人物が、汚物を見るような目で俺をじーっと見ながら携帯電話を耳に当てている。


『ねぇあれ、もしかして通報されてない?』

「冗談だろ……いや怖いな、逃げよう」


 小声で澪に返事をする。

 彼らに背を向けて、早めにバイト先へと向かった。



 あの女子高生は学園随一の人気者で、俺は目立たない一人の生徒。


 どうせこれからも関わる事は無い。

 そう思っていた。



 だがこの出来事こそが、雛白からじーーっと見られる学校生活の始まりだった。


この物語は見えちゃう人と気になって見ちゃう人がじれじれイチャイチャするお話です。

序盤はややしっとりしていますが、少しずつ日が照り出しますので、お気軽にお楽しみください。

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