閑話、とある神の日常
俺は適当に神をやっている。適当な学校を卒業後、惰性で神を始めたら最悪だった。
他の世界では“タシンキョウ”という一つの世界を沢山の神が協力して支配する思想が有るらしいがそれならどれだけ良かった事か、現実はアホな量の世界に一人。幾つかの世界なんて手も届いて無いからそろそろ処分対象だ。クロノスに頼むのも面倒だ。
数々の時空情報で埋め尽くされたモニターはもう見るのも嫌になる。情報量で頭がバグりそうだ。
「生命の数が基準値以下?はぁ、俺が出向いて生命の誕生を促してやるか。また上にうるさく言われる」
俺達は管轄の世界では文字道理、全知全能の力を持つ。崩壊寸前の世界を未来都市に変えることすら造作もない。だが今回は違った。聞き慣れないアラームが鳴っている。
「信仰の不足?んじゃどうしろってんだよクソが」
こうなってしまってはもうどうしようもない。俺は再び携帯端末を弄って暇を潰す事にした。しかし、数秒画面をスクロールしてから俺は一つ面白いことを考えた。
モニターを見る。無数の世界から適当に選び出してその一つに俺は目を向けた。神としてこの仕事に就いてから最も集中しているかもしれない。俺が探しているのは面白そうな知的生命体。色々な国、地方を探すも気に入った奴は見つからない。
「しょうがない、面倒だけどな」
しょうがなく殺す事にした。もちろん手は汚さない。神としての世界への介入をした、今回はアラームが鳴らなかった。
「こいつにするか」
俺は一人の少年、学生のようだがひ弱そうでいかにも陰で生きてそうなやつに狙いを定めてソイツの近くの車を故障させた。ブレーキの効かなくなった車は少年にぶつかり、少年を見るも無惨な肉片に変えてしまった。
「うわーグログロ。心臓発作とかにしときゃ良かったな」
少年が死んだ事を確認すると俺は元の管理室に戻った。そこでは先程殺した少年が寝ている。もう時期彼は精神体として目を覚ますだろう。酒やコーヒー缶で散らかったこんな部屋を見られたら尊厳に関わる。俺はスイッチを押して神々しい雰囲気を醸し出す空間に変えた。
「うぅ、あれ?俺死んだんじゃ?……」
「ああ、お前は車に轢かれて死んだよ」
「ア、アンタ誰だよ?!よくある転生系だとこういうとこで会うのは美少女女神だからこいつは神じゃないのか?」
こいつの呑気な言葉に俺はイラついた。とはいえこの状況を知っているのなら話は簡単だ。
「あ?神だよ、オマエらのとこの。美少女じゃなくて悪かったな。そんな事は置いといてよ、お前さ、このまま死ぬのと特典貰って転生すんのどっちがいい?転生なら今の歳からでいいよ」
「転生ってほんとにあんのか、もちろん転生に決まってんだろ!いや、転生させて下さい!」
コイツの馬鹿さにはつくづく反吐が出る。俺に態と殺された事も知らないで『俺は選ばれし者だー』って喜んでるんだろうな。
俺は感情を表に出さずに、さもあたりまえのように言った。
「おお、転生か。俺が願っていた通りだ。準備するからその辺で待ってろ」
「特典ってなんですか神様!すごい武器とか一緒に居てくれる美少女とかですか?!うーん前に読んだ本にあったみたいに貴方が特典とかは嫌ですよ?」
「お前と旅とかするわけねえだろ、あと美少女もやらねえ。俺だって彼女いた事ねえのにお前にやらねえよ。お前にやんのはすごい能力とすごい武器!そんで楽しめ。どうせ前世じゃ冴えなかったんだろ?」
「すごい武器とか能力とかでもめっちゃ嬉しいです!どんな……え?」
話がいちいち早口で声もデカくてうるせえからもう転生させることにした。光の粒になって消えていく。
「自ずとわかる。自分で確かめな」
俺はそう吐き捨てて無事にあの少年が転生した事を確認し、スイッチを切っていつもの部屋に戻した。これでアイツを観察してれば暇は潰せる。ガキが植物観察するようなものだ。
ただただ先が楽しみだ。ニュースを見た時からやろうと思った。
生前、クソつまらない人生を送ってきた人間が天才、天宮来夢の能力と最強の武器を得たらどうなるのか。これを思いついた俺は天才だろう。
あー、アクションが起こるまでは暇だ。せっかく直々に動いたんだ。その辺の魔物にいきなり殺されたら魂ごと消してやりたい。