肉薄もどき
高沢はいくら協力な神技を持ち、更に超人的な頭脳を持っていようとも肉体的にはただの少女である。しかも、高沢は自分の神技の高い殺戮能力に戦闘を依存気味な節があり、他の有力者に比べて身体を全く鍛えていない。
よって掴んで仕舞えばファルスが有利を取れる。
「ハァッ、クソが! 当たれええぇぇッッ!!!」
が、勿論高沢は神技のワームホールでファルスの拳を移動させて避ける。腰からしっかりと拳を打ち込むファルスの体力だけが削れていく。
「当たらないよ~♪ てか、爪たてるのやめない? それは効いてるから」
「断る! クソ、埒が明かねぇぞ!」
(爪だけ効いても意味はねぇ。でも痛みは与えられてる。後四十秒と少し、どうあがいても決着なら賭けてやるしかない)
左手の力を一度抜いてから再度全力で爪を立てる。高沢の意識が掴まれた方の腕に集中した瞬間をファルスは見逃さなかった。
左手で手を引き、前傾姿勢にさせたところで足を上げて爪先を高沢の胴体にめり込ませる。ワームホールで別の場所を蹴った感覚ではない。入った。
「うっぇ……」
くの字に体勢を崩す高沢に追撃を決めようとするファルスだが高沢は2度も攻撃を食らうほど甘くは無い。その体勢を利用しファルスの片足を掴んだままもう片足を掛ける。
「もらい!」
「ッッッ!…………」
再び地面に身体をつけたファルスだが未だ高沢の腕は離さない。
「嘘っ、しつこさだけなら素路咲と張れると思うけど……」
「そりゃどうもっ!」
ファルスの視線は高沢では無くその上、先程足を掛けられた時に蹴りあげた小石。勿論これが攻撃になるとは考えていない、それでもーー
「痛っ!」
誰だって頭に硬いものが当たれば反応はするだろう。普通に戦ったのならこんなチャンスすら起きず蹂躙される。無傷で特攻出来るファルスだからこそ得た機会、その成果は今。
「うぉおおおおおおおおおおおお!」
転がるコンクリート片を右手の人差し指と親指で掴む。何せそれ以外の指は切り落とされている。高沢のこめかみに叩きつける。鮮血が舞い、驚いた様な高沢の表情が少しずつ苦痛に歪む。だがーー
(ちくしょう、ここまでかよ……)
ファルスは自分の身体がまるで刺身の様に切断されていくのを見た。痛みは不思議と感じなかった。時間切れなのは知っていた。最後の一撃も命を奪うには程遠いと知っている。結局ダメだったのだ。
(だけど俺はやったからな素路咲! お前が来るまで耐える事は出来なかったけどよ、一撃は与えてやった)
切断が頭に伝播する寸前、遠くの空に見慣れた人影が映った。年齢に対して髪は吸い込まれるほどの純白、口元にはいつも誰かを嘲笑っているのではないかと思う程傲慢な笑みが宿る男が。
(ったく、遅ぇよ。負けんなよ)
そうしてファルスは空間切断によって細切れにされ光と消えた。この戦いにおける初の脱落者となった。
高沢は冷静にワームホールを広げて頭を確認する。出血の割に傷はそこまで深くは無さそう、手足も問題なく動くし立ちくらみなどの症状も出ていない。触れば痛むのと血が気持ち悪いとかその程度の話だ。
取り敢えず上空に転移して辺りを見渡そう、そして相手を見つけて倒しに行けばいい。そう思い、見上げた空には学園二位が居た。
「よぉ、高沢ァ! 一戦交えようぜ!」
「あーもう……最悪。テンション下がるなぁ」
ズーン、と地面を鳴らして着地した素路咲に高沢は挨拶代わりの空間切断。しかし、素路咲では無く素路咲の足元の地面がバラバラに切り裂かれる。
「うぉっと」
わざとらしく転ぶフリをしておどける素路咲は手でバランスを取って低姿勢の獣のようになるとニヤリと嗤った。
「学園二位ィ、素路咲拝火ァァァァ! この俺がお前をボコにしてやらあ!」
「ハイハイ、学園五位です高沢瑠新……尋常にっと」




