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人のクセして何が神!  作者: 黒露 れい
最低最悪で最強最高なお前に
17/19

一分後の未来で

  瓦礫の山の隙間を縫うように這い上がり新鮮な酸素を吸い込む。地上を砂山みたいに成型した少女の顔が映る。


  「これでも無傷なの?!」

  「生憎頑丈なんだよ、学園ランカー如きじゃ無理だぜ」


  3、2、1


  少年は強気な言葉を吐きながら心の中で時を数える。そしてそのカウントがゼロになった瞬間、獲物を狙う獣のように爆発的に攻勢に出る。


  「これが何か分かるか? 高沢瑠新」


  スタングレネード、少女が目を逸らし耳を塞ぐより先に炸裂する。閃光と残響によってへたりと座り込む高沢、空間を自在に行き来する能力者にとって空間を把握するためのソナーを無力化されるということはほぼ無防備になることに近い。


  そして高沢よりも至近距離で食らったはずのファルスはーー


  4、5


  視界良好、無論耳も聞こえる。そう、無傷。


  (最大の障壁、空間神は無力化出来た! 後はただ同い年の少女1人、武器を持つ俺の方が有利だ)


  少年は瓦礫の山を駆け降り懐からナイフを取り出す。スタングレネードの手持ちはこの1つだけ。これが最初で最後のチャンスである可能性が高い。


  標的を見据えたファルスに気付くように高沢の肩がピクリと跳ねてた立ちあがる。


  (無理だ、無理な筈だ!)


  そんなファルスの考えを嘲笑うように高沢は瞬間移動を繰り返す。空間を認識出来なければ操作すら難しい神技のはずだ。だが、もし少女が空間を認識しているとしたらーー


  「まぁそんなぴょこぴょこ移動は難しいけどさ、この辺の地形は大体覚えてるからある程度は転移(うごけ)るよ」

  「ッッッ! 化け物かよ!」


  それでも移動範囲は地上に絞ることが出来た。空中に逃げないのがその証拠だ。


  踏み込んだ右足に力が籠る。地面を蹴ってそのまま少女の至近距離へ。狙うは首、もしくは胸、確実に致命傷を与えるにはその辺だろう。


  それを見越してか首元は手で抑えている高沢。よってファルスの狙いは一択に絞られる。


  「もらった! ……あ?!」

  「ふふっ……もらった!」

 

  刃物を伸ばすファルスの腕を肩の辺りから上に持ち上げて狙いを逸らす高沢、その目はしっかりと開きファルスの言葉をそのまま返す余裕すらある。


  (腕から高沢の神気が流れ込んで来やがる。念の為に神技を発動させていなかったら今頃腕から解体されてたな)

  (直で触れても切れないとかなにコレ? まあいいや)

 

  そのままぐいっと横に引っ張りファルスをワームホールに投げ込む高沢、転移先は先程の瓦礫の上。攻撃がまたしても防がれて今度こそ相手の有利な展開に持ち込まれるよりは仕切り直した方がマシと判断した上で、だ。


  「スタングレネードって言っても持続性はせいぜい十数秒、カウントしてれば気づけたんじゃない?」

  「そうかもな、だが声に出したらタイミングが筒抜けになる。本当にアドバイスのつもりなら浅はかだな」


  わざとらしく頬を膨らませて腕をブンブン振る。見た目は綺麗だが先の大破壊のせいで全く可愛げは感じなかったが。


  そしてファルスの鼻っ柱に拳が叩き込まれた。


  「ガっっッッッ!?」


  痛みと衝撃でバランスを崩して瓦礫の山を後方に転げ落ちる。頭を守ろうと身を屈めたせいで全身が痛い、そして鼻血が白い服に真っ赤なシミを作り出して気持ち悪い。

 

  立ち上がろうとファルスが顔を上げると真上からは巨大なコンクール片、横に飛びついて何とか回避する。


  (不味い! 早く()()()を発動させねぇと!…… いや、長時間連続使用のクールタイムがもう数秒あるーーやべぇ!)


  「おーい、まだ生きてるんだ」


  空間切断


  全力で避けようとするも利き手の指が中指から小指まで3本切り取られる。


  「ーーーーーーー」


  言葉にならない激痛に硬い地面をのたうち回る。クールタイムは既に終わり今は無敵、標的の高沢も手を伸ばせば届く距離だ。なのに、少年の痛覚はそんな事お構い無しに少年の頭を支配する。感情と関係なく異常な痛みから涙が頬を伝った。


  「また無敵モードか、でもキミの神技が時間制限付きでマニュアル操作なのは割れてるからそこで転がってるとすぐ死ぬよ?」


  高沢から心配まだ少年は地面に蹲っていた。患部から意識を逸らして深呼吸して何とか思考を取り戻す。


  (無理だ……素路咲のお墨付きだろうが仲間に信頼されようが無理なものは無理だ。もうやめだ。これ以上酷く痛い思いをするくらいなら殺してもらおう、頭を輪切りにでもして貰えば痛み無く終われるか……数分とはいえ時間稼ぎは頑張った)

 

  本当に?


  素路咲の言葉が頭を反芻する。


  『俺や緋流でも近づくのが難しいんだからファルス時間稼ぎ出来ればOK、後は俺が相手してやんよ』


  学園上位をして接近が困難という相手がこんな至近距離にいるのに? そして今の自分は無敵で一方的に攻めれるというのに?


  「ああ、やってやるよ!」


  まるで虫を観察する子供のようにしゃがんで俺の神技が解除されるタイミングを待つ高沢の腕を掴んで立ちあがる。先程、彼女にされた様に。


  高沢瑠新は触れている程度のものなら隔てて転移させられるが掴んだり固着しているものはどうしても同時にしか転移させられない。だから、このポジションを保つ限り神技で引き剥がされることは無い。


  高沢は冷静にワームホールに腕を突っ込むとファルスの右手に人差し指を突き刺す。これで終わり、ファルスの神技は攻撃無効化もしくはそれに近しい何か。元から怪我をしている部位を触って痛みを与えるのは効果的と踏んでだ。


  「ッッッ!! まだ、離さねぇぞ……」

  「思ったより根性あるね、()()()()()()()()()


  不遜な仮面も剥がれ泥だらけの凡才に堕ちて尚天才にしがみつく理由はーーただ、可能性に挑戦したい、仲間の信頼に応えたい、それぐらいでいい。


  「俺の神技は〈未来神〉……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。次の解除まで後一分と少し、それまでに殴り殺す! 高沢瑠新ッッッ!!!」

  「いい威勢、そう来なくっちゃ。それじゃどうぞ! ターンを譲ろう!」


  刃物は落としストックも無い。片手も塞がって持っているのは血塗れで欠けた拳だけ。高沢にとっての耐久戦、そしてファルスにとってのタイムアタックが始まった。

 

 


 


 

 


 


 

 

 


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