ブラフと空間少女、そして……
学園2位、そして6位、過去の英雄にトリックスターとして有名なカップル。このメンバーの中に適当な所を出て才能もあると思えず無名な自分が何故要るのか?
ほら、相手だってそうだ。
不思議そうにこっちを見る少女が1人、遠くから見ているだけだと思うと今度は瞬間移動して少し小突いてまた戻る。
素路咲が言っていた。ワープに切断、物体転送、なんでもありな学園5位、高沢瑠新。
「おかしいなぁ、なんで空間切断が効かないの? キミ。さっきから100回は切り込んでる筈なのに」
100回、その言葉に背筋が凍る。例えそれを完全に防ぐことができていてもだ。
「高沢瑠新、俺にお前の攻撃は効かない。さっさと諦めてその能力で自分から死んどけ、俺を敵に回すよりマシだろう」
ブラフである。こんな尊大な態度をとれる人間でもないし神技の隙を突かれると一瞬で負ける。でも、だからそれを悟られないようにやり過ごすのだ。
チームメイトとの会話を思い出す。
『んー、問題は天宮より高沢かな。あの能力で動き回られるだけで軽く3キル食らう……よし、ファルスがんばっ痛てぇ!』
素路咲の頭蓋に上から拳が突き刺さる。あぁ、と嘆く表情のセンセーと爆笑するバカップル。俺もアホだと思ったから緋流の行動は正解だと思った。
『アホが、悪いけどファルスじゃあれは無理でしょ。それこそ私、拝火、シルド先生が複数人で囲わないと……』
『落ち着けって、そんなん分かってるっての。殺るのは俺とコイツら、数人リタイアさせてから行ってやるよ。それまで耐えてて〜』
言われた時は緋流にもクソほど愚痴ったしセンセーにアドバイスを受けても自信がなかった。今はーー
不可能では無い。高沢は動きながら不自然にこちらを見る瞬間がある。それが空間切断。素路咲からの入れ知恵だ。
『主な攻撃は空間切断、高沢の視界内で低速移動してるとぶった斬られんぞ〜』
だからこうする。高沢の視点が移動する瞬間、落ちているコンクリート片を目の前に突き出した。予想通り、コンクリート片は粉々に切り刻まれた。
分かっているぞと、お前の攻撃は予測できるのだと、そう示す。
「ふーん、もうパターン読んだの? センスあるんだねキミ」
「喋るのが好きみたいだな、素路咲と言い学園組の癖かそれは?」
「………………」
高沢は少し黙り込んだ。この方がいい。相手のペースに崩されるのは嫌いだ。そして上からキミキミ言われるのも。
この思いが伝わってしまったのだろうか。高沢は再び口を開く。
「余裕無いね? 今まで私の攻撃を耐えてたのも……キツかったんでしょ。いいよ、すぐにその神技を暴いてあげよう! この世に私を殺せるのは両手の指以上いらないしねッ!」
来る!
空気を切る音、かかる重力、どうやら遥か上空に転移させられた。落ちれば即死、能力が無ければだが。顔を上げて上を見上げる。逆さに落ちているため地上が映る。がーー
「な!?」
そこにあったのはさっきまで確かに立っていた建造物の一切が存在しないコンクリートと土の荒野、ではそれらは何処へ?
足元に答えはあった。地上に俺と共に降り注ぐのがそれ。ビル、家、電柱、それら全てが地面を穿つ雨として空中にあるのだ。
「バケモンがッ! 〈未来神〉ッッッ!」
これは長く未来を固定する必要がありそうだ。
(がんばれファルス・トラッド! 素路咲の期待は裏切らねェ! 才能には負けねェぞ!)
● ● ●
今年一番の名勝負候補として話題に登る天宮VS素路咲、学園上位2人の決戦の開始1時間の顛末はこう。両チーム数人を残して戦闘を開始した。
過去の英雄の復活に仲間と立ち向かう学園1位。
有象無象は相手にならない。言葉通りに1分以内に挑戦者を叩き潰す学園2位と彼を出し抜き満身創痍で生き延びた者。
天才になりたかった努力家と無名の異才。
圧倒的上位の少女を相手に全力を以て拮抗する少年。
どの戦いを切り取っても話題なるような組み合わせの中、それら全てがほぼ同時に動き始めた。後のクロノス界に語り継がれる戦いが開幕する。
余談
高沢を殺せる10人の中には学園3位と自身を除いた天宮から緋流までの学園ランカーは確定で入ります




