厨二病と観測者
いつもアイツが憎かった。努力も才能も嘲るような態度で異常なセンスを持ち、人一倍の努力も惜しまなかったアイツが。
『その辺は感覚でいいだろうがっ、こんなんに時間かけんのはアホだけでしょ! ま、ほぼ出来てないヤツしか学園に居ねぇから俺から見りゃみんなアホだけどな』
そんな彼が最優に次ぐ微妙な天才だとしても……私が憧れたのは馬鹿馬鹿しい向上心に満ちたアイツなのだ。
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初めは惰性で行っていたクロノス活動も回数をこなす度にハマっていった。無論、人を殺すのが好きなわけではないしストレス発散という訳でもない。
光約・リゼル・アルジールは旧文明の治安維持部隊の中枢である建物のモニタールームにてブルーライトを浴びていた。文明の崩壊と共に失われた機械は彼の神技で最低限のシステムを復旧し、街の様子を粗く映している。
ただ、人の技術を吸収する。その事に特化した神技と能力にピタッと重なるような知識欲を満たすのに最適だと気づいてしまったからだ。
「派手に崩れたな、あんなん出来るのは天宮が言う相手側のスロサキ? かゼノンくらいだが……念の為に偵察機でもーー」
気配を感じて振り向くと少女が1人、チームメイトでは無い。つまり敵。
「これ、貴方がやったって事? 天宮も凄いのを釣ってくること……」
「悪いな、話している余裕はーー無いだろ?」
リゼルの神技〈技術神〉、天宮のようにドーピングや力そのものの創造は出来ないが製造物であればそれは技術の賜物、創造できる。
故に手に創造した銃の発射口を少女に向けてそのまま発砲。人が生み出した『目標に上手く弾丸を当てる技術』も用いてほぼ必中。躊躇はない。
しかしそれで殺せるのはせいぜい中堅である。この少女はその程度では敗退しない。
「遍く総てを無に帰す風よ!」
とても痛々しいフレーズと共に弾丸は彼女の眉間の少し前でポトリと落ちた。
「奇襲ご苦労さま、それじゃ殺すね」
本能が危険信号を発している。少女から逃げろ、危険である、と。決断はーー否、逃げずに迎え撃つ!
少女が手を翳すと同時に莫大なエネルギーがその掌に収束し煌めいた。そして対象=光約・リゼル・アルジールという方向性を得て放出された。
聞いている側が恥ずかしくなるような取り敢えずカッコよさそうな横文字を繋げた詠唱と共に。
「ロストディメンジョンッッッ! ディザスタァアア!」
リゼルは複数の隔壁を創造、更に文明最高レベルの耐熱性をそれらに持たせて前面に展開、対して少女の叫びによって極太のレーザービームの形をとったそれはリゼルの防御を軽く一蹴するように壁を焼く、流す、飛ばす、潰す。
「まぁ、そうだよね。私だって学園序列一桁なんだし」
少女は少し安心した口ぶりで立ち去ろうとする。目の前には無惨にも消し飛んだモニター、更にその奥の建物さえ自分の攻撃で崩れる様。勝利の跡だ。
2、3歩歩いて少女は首に違和感を覚えた。触れた指にはーーベッタリと赤、赤、赤。
「えっ?」
「気づかなかったろ? これが人の生み出した気付かれずに人を殺す技術、要は暗殺術の最高峰って感じだな」
リゼルは手持ちの刃物をトドメと言わんばかりに背中から彼女の心臓を貫くーー
事無く制止させられる。
「あのさぁ……君何者なの?」
人の焼ける匂いが少しだけ、それは少女が指先の熱で首を止血した証拠。刃物は圧力によって受け止められる。溢れ出る殺気にリゼルは一度距離をとる。
「何者って、光約・リゼル・アルジール。それが俺の名前だ。お前はーー」
組み合わせ発表の時に天宮が話したメンバーの特徴と現状を照らし合わせる答えは至極簡単に分かった。熱、風、圧、電気などのこの世に存在するエネルギーをぶん回すが如く神技とその言動。
「ああ、厨二病の緋流だよな」
「っーー、厨二病言うな!!」




