創造VS完璧 1
「やっぱりメンバーがバラバラに転送されるのはダルいな、いきなり学園の二人とぶつかる奴が出ないといいけど……」
天宮は廃墟と化した歳と遥かなる蒼穹を見上げて呟いた。自分以外のメンバーが素路咲、緋流と一対一でぶつかるのは厳しいだろう。全員といかなくとも数人との合流は必要だ。
ふと、天宮は気配を感じて創造した銃を向ける。神技同士のぶつかり合いに銃など意味は無いーーが、
「やはり君レベルにはバレてしまうか、私も歳だな……」
相手がこちらとの接触を選択に入れている場合、促す事が出来る。天宮は影から現れた中年男性に銃口をゆっくり向けながら怪訝そうな目で見つめて問いかけた。
「開始数分、なんでこんな傍にいるんです? シルド先生」
「君を斃す為、では不満かな?」
銃口に怖気付く事無くシルド先生と呼ばれた男は答えた。そして、会話は不要とでも言うように溢れ出る神気を展開した。神技が来る。
「話し合いは不要ですか…………」
天宮は目を細めて表情を変えずに引き金を引いた。眉間に誤差ひとつなく命中、だがポトリと貫通すること無く地面に落ちた。
「敬語はやめろ。既に私……俺達は生徒と教師ではなく同業者にして敵同士、間には殺意だけでいい」
シルドはブカブカになったスーツを脱ぎ捨てた。白髪混じりの髪は夜のように黒く、皺のあった顔は潤いを取り戻し引き締まっている。中年特有の腰からはみ出た肉は彫刻の様な筋肉に変わっていた。薬莢を拾い上げる彼に初見時の面影は既に無い、まるで映画のヒーローのようだった。
「そうでーー、そう、分かったよ。俺もアンタとは一戦交じえたかったんだ。負けて泣くなよ? 」
(クロノスシステム黎明期のスーパースター、シルド。神技〈完璧神〉。どのようなものでも完璧に変える神技……自分の肉体すらも対象か。腕が折れそうだ)
天宮は軽く煽りながらも脳内で事前情報を反芻させる。相手は界隈の有名人、能力が開示されている分やりやすい。近接は強化されている相手の方が上、こちらの創造強化では経験差で押し負ける。ならば狙うは中~遠距離、銃撃や爆発、トラップで距離を取りつつ確実に絶対物質を当てに行く。
故にーー
天宮は何十メートル単位で距離を取った。
「無論、過去の栄光を取り戻すために……俺はここにいる」
自らを鼓舞するような言葉を吐き捨ててシルドは大股で一歩、天宮側へ勢いよく踏み込んだ。
(やはり、近接格闘狙い)
(近接格闘を狙う、と思うだろうな。天宮は優れているからこそ、俺の戦法を見極めてくる。ならばーー)
シルドはその一歩をキャンセルするかのごとく半歩で足を地面に下ろした。そして腕を鞭のようにしならせて天宮に高速で拳大の瓦礫を投擲、その完璧な肉体から放たれた塊は直線を描いて飛翔する。
とはいえ天宮との距離は未だ……空気抵抗による減速を加味すると攻撃用としては遅すぎる。
(圧力でガード出来る程度、遠距離はブラフかな……)
天宮は圧力を前方に展開して受け止めようとした。
だがーー予想とは常に超えていくもの。
「見くびるなよ、天宮!……完璧神!」
瓦礫はシルドの神技によって在るべき姿に、完璧な状態に戻る。そう、巨大なクリスタルみたいな超高層ビルのその姿に。
「うわぁ……どうしよこれ……」
天宮の声をかき消して質量兵器が牙を向いた。




