宣戦布告
「おひさー天宮?元気にしてるー?」
「当たり前だよ、お前こそ最近名前聞かないからどっかでくたばったんだと思ってたよ」
ヘラヘラと軽薄に嗤う白髪の少年の挨拶に向き合う少年もまた最大級の煽りを以て返した。二人は世代最高格のクロノス、天宮来夢と素路咲拝火である。
サバイバルの舞台となる時空への転送を前に稀代の天才達は両者を罵りはじめた。
「やっほー赤乃ちゃん!」
「瑠新?久しぶりね。まったく、あの二人またやってるわけ?付き合わされるこっちの身にもなってよね」
「私はもう慣れちゃったけどね、どうする?一戦交える?」
「やめとくわ、こっちにもこっちのペースがあるの。瑠新の方もでしょ?」
「ふふ、それは言えないよ?」
会場に集まって思い出話(?)に花を咲かせる四人を後目に残りチームメンバーは相手を推察しだす。勝負は始まる前に決まる。
「なぁリゼル?あのイチャついてるカップルいるじゃんあいつらもしかしたら神技ーー」
「うんうん!私の神技がどうしたって?」
ゼノンが話していたはずのリゼルはいつの間にか観察していたカップルの少女に入れ替わっていた。逆も然りーー
「あーあ、可愛い可愛い彼女がこんな根暗そうな野郎と入れ替わるとか……桜子〜早く戻れよ。退屈で死ぬ」
「呼び出しといて失礼な奴だな、お前」
「ふーん、根暗そうってのは評価のミスかな?」
カップルの彼氏側と一触即発のリゼル。互いに睨み合っているとリゼルの頬に衝撃が走る。
「もう一発欲しい?リゼル君」
「いや、いい。確かに流され過ぎは良くないな」
衝撃を与えたのは御鈴鹿だった。理由は明白、リゼルは意図を理解した、『相手のペースに乗るな』だ。状況を把握して退いたか彼氏に呼ばれたからか、小走りで少女も自分の彼氏の傍に戻った。
天宮は心の中で安堵した。このチームと数ヶ月過ごして分かった欠点、前のめり過ぎる点が悪い方向に進まずに済んだからだ。
「お前のとこのにちょっかい出せれてるんだけど?」
(御鈴鹿には感謝だな、だがーー)
天宮は気づいている。人一倍強者であることに貪欲な素路咲ならばーー計算して仕組みかねないということに。
「悪いな天宮。好奇心旺盛なんだよね、俺のチームは」
(ありゃ、失敗か。こっちの神技を晒してでもあっちの平常心を崩して起きたかったのに……まあいい、天宮ごと実力で潰せばいい)
素路咲は自らの策が失敗したことを頭でそう評価し、綺麗に忘れることにした。得た物はプラスどころか一人の力を晒すマイナスだが切り札のおっさんの神技がバレていないだけマシだ。
歪な交流も中断されていよいよ時空への転送が始まる。このゲートより先に待つのは天宮から見れば学園最大のライバルからの防衛戦、素路咲から見れば下克上を狙う戦いとなる。一人一人が目標を胸にし、今転送が始まった。




