1話:バスケとわたしたち①
初めての投稿です、よろしくお願いします。(o^^o)
あんなに好きだったのに、今となってはただ自分を苦しめるものでしかない。
そんな思いが、私の胸を締め付けると同時に、所詮自分には無理だったのだという諦めに似た静けさを体中に広げていく。
冷たい廊下を歩いて行くと、職員室のドアが黙って立っている。
私は、ただ黙って立っているそのドアを軽くたたいた。そして職員室に入室するときのお決まり文句をとりあえず言う。
「失礼します。1年D組の星空です。川口先生いらっしゃいますか。」
川口先生と見られる黒い頭が少し左右に揺れてから、パソコンの端から目だけ出して手招きした。
「おう。で、例の件はどうなった?」
先生は、静かにそう言いながら、パソコンから目を離して私を見た。
「はい。やはり、これから先続けることはできない状態なので、退部します。」
「そうか、やめるのか。まあこの学校は、部活以外も盛んだし、高校生活、部活だけじゃないからさ。まあ、色々楽しみなさい。」
それだけ言って、またパソコンに目を戻した。
「はい。今までお世話になりました。ありがとうございました。」
私もそれだけ言って、静かにドアの方に向き直って歩いて行った。
黙ったままのドアが少しだけ、私に同情しているようだった。
一人で冷たい廊下を歩いて行った。
外からは、野球部のかけ声やバットで球を打つ音が聞こえてくる。
今は部活中だから、昇降口には誰もいない。なぜか、そのことにほっとして、私は自分の靴を靴箱から出してそっと履いた。
外に出ると、冬の冷たい風が春の匂いを帯びて、私の隣を走って行った。
その風が走り去った瞬間、聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「あれ? なんでお前ここにいるの?」
私の幼馴染み、月見岳だ。今、1番会いたくない人物に会ってしまった。私の胸の締め付けがさらに強くなる。
「部活・・・辞めたの・・・」
「辞め・・・た・・・?」
いつも冷静で落ち着いている岳の声が、少し震えているのがわかった。こんな声聞きたくなかった。
二人の間の重い空気を取り払うように、私は、最大限に笑顔を作って、いつもの倍明るく振り返った。
「そう!辞めたの。もうどうでもいいの、バスケなんて。やっぱり私には無理だったんだよね、こんな強い学校で岳と同じようにバスケ頑張るなんてさ。」
岳は、にこりとも笑わなかった。眉間にしわを寄せ、唇をかたく結んだままだった。
「どうでもいいって・・・どうでもいいってどういうこと?だって、お前あんなに必死で毎日頑張ってきたのに・・・辞めていいのかよ!?」
腹の奥から絞り出すように、しかし怒りと落胆がにじんだ声だった。こんな岳は珍しかった。
部活を辞めると決めたときから、ずっと胸が締め付けられる思いがして、どうしようもなかった。毎日毎日、この胸の締め付けの行き場がなくてつらかった。
そんな胸の締め付けが、岳の言葉で、自分の無力さに対するやるせなさに変わって溢れた。
「できるやつにはわかんねーよ!!もう私は・・・私は・・・痛くて、つらくて・・・限界なんだよ・・・!!」
目から熱いものが溢れて、流れた。
とめどなく、何度も、流れた。
読んでいただきありがとうございました(o^^o) 続きも読んでくださるとうれしいです\(^_^)/