【第21話】 リリティア
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異世界アルファザードの上空に浮かび3人の女神たちの拠点でもある『空中神殿』…
その空中神殿から数百メートルほど離れた位置で、オレ・春埼隆人は魔王軍四天王のひとり『天空王スカイダル』(巨乳なダークエルフ)と空中戦を繰り広げていた。
ドヤ顔で的外れなことを語っていたスカイダルに対し、オレは面と向かってそのことを指摘した。
指摘されたスカイダルは、(恥ずかしさと怒りからか)顔を真っ赤にしてプルプル震えている…
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顔を真っ赤にしたスカイダルが音速の数倍の速度で突進してきた。
『 ドオオオォォンッッ!! 』
スカイダルに遅れて、衝撃波と爆音が巻き起こる。
だが、スキル【自動加速】がかかっているオレにはスローに見える。
余裕を持ってスカイダルの魔法剣による(オレの心臓を狙った)突きを剣で受け流した。
そこから更にスカイダルは、胴を狙った横薙ぎ、肩口を狙った袈裟斬り、胴を狙った突き、頭部を狙った兜割り、右手首を狙った斬撃、等、次々と技を繰り出してきた。
だが、オレにはもうスカイダルの剣はまるで通用しない。
( まぁ、厳密には、最初から通用してなかったんだが…。 )
…と言うか、オレがスカイダルの剣筋に慣れた(剣を見切った)ということもあるが、音速の数倍の速度での体さばきや剣さばきの戦闘により、スカイダルはだいぶ疲労してきているようで、技のキレやスピードが徐々に低下していった…。
更には恥をかかされたことで頭に血が上っているのか、攻めも単純になっているようだ。
オレも、少し軽めに反撃してみるか…
スカイダルの左肩から右わき腹に抜ける軌跡で袈裟斬りをしかけてみた。
『 ギイィィンッ!! 』
スカイダルはオレのこの袈裟斬りに反応し、剣で受け止めた。
そして、剣を受け止めつつ、右足でオレのみぞおちを狙って膝蹴りを放ってきた。
( おいおい…これは最初にオレがスカイダルの膝にカウンターで肘打ちを入れた時と同じパターンじゃないか…。 スタミナを欠いてきただけでなく、冷静さも欠いているようだな。 )
オレはスカイダルの右膝の上あたりにカウンターの左肘打ちをあわせた。
『 バキィッ!! 』
オレの左肘がスカイダルの右膝上に直撃した!
「 ぐうぅっ!!? 」
スカイダルが顔をゆがめ、たまらず後方に5mほど飛びのいた。
スカイダルは『ハァハァ…』と肩で息をしている。
骨折したであろう右膝を【治癒】する余力もないようだ。
「 もう限界みたいだな? そろそろ終わらせるが、いいか? 」
オレはスカイダルに死刑宣告を突き付けた。
スカイダルは…ちょっと意外なことに目に涙を浮かべている。
なんだ…?
やっぱ、『四天王』とかでも死ぬのは怖いってことかな…?
この時、スカイダルはちょっと気になることを呟いた。
「 くっ…私はこんなところで殺されて終わるのか…村のみんな…仇を討てなくてゴメン… 」
…ん?
今のスカイダルの呟き…『村のみんな…仇を討てなくてゴメン…』とか言ってたな…。
オレが初っ端 殺したのはドラゴンライダー1000騎だ。
その『ドラゴンライダー1000騎』が『村のみんな』って意味か…?
…しかし、ドラゴンライダーの騎手たちは、ダークエルフだけでなく、ゴブリンやオークや人間(悪人)すらも混じっていた。
あの『ドラゴンライダー1000騎』が同じ村で和気あいあいと楽しく暮らしてる姿は想像しがたい…。
だとすれば、スカイダルの呟いた『村のみんな』ってのは、なんのことだ…??
「 なあ? 今オマエが呟いてた『村のみんな』ってのは、なんのことだ? まさか、オレが瞬殺したドラゴンライダー1000騎が、その『村のみんな』ってわけじゃあないよな…? 」
オレの問いかけに対して、スカイダルは返答したが…
「 …私はヤハク村の唯一の生き残りだ! 」
なん…だと…!? …って、『ヤハク村』なんて初めて聞く単語だ。
たぶん結構スゴイことをカミングアウトしたんだろうけど、初めて聞く単語なんで さっぱりピンとこない…。
そこでオレは、【アカシック・レコード(宇宙記録)】にアクセスすることにした。
( 【アカシック・レコード】とは、宇宙のすべてが記録・記憶されている特殊な空間である。 パソコン用語的に言えば、『データベース』といったところだ。 創造主であるオレは、いつでもどこでも【アカシック・レコード】にアクセスして、必要な情報を引き出すことが出来る。 )
( 「 【アカシック・レコード】アクセス…惑星アルファザードの『ヤハク村』とは? また、『ダークエルフ』との関連は? 」 )
瞬時に回答が頭の中に流れ込んでくる。
それによると『ヤハク村』とは…
惑星アルファザードの北半球にある『ヤハクの森』のすぐ近くに作られた、ダークエルフたちの集落だった。
但し、30年前、『ヤハク村』の近隣の人間の国家である『ヤークド帝国』によって滅ぼされている。
人間にも善人や悪人や中立の性格・性質があるように、基本的には人間に敵対的で悪事を働くダークエルフが多い中、『ヤハク村』のダークエルフたちはダークエルフとしては珍しく中立な性格・性質の者がほとんどで、人間の味方とまではいかないが、人間と敵対もしていなかった。
30年前、『ヤハクの森』で希少金属である『魔鉱石・翡翠』が発見されたことから、その独占を目論んだ『ヤークド帝国』の『ヤハド皇帝』と『宰相リヒャルト』によって、『ヤハク村』は滅ぼされた。
尚、アルファザードの表の歴史では生き残りは皆無とされているが、実際には当時10歳のダークエルフの少女が一人だけ生き残っている。
その少女の名前は『リリティア』といい…
「 なるほど…四天王の一人『スカイダル』は、その生き残りである『リリティア』というわけか… 」
と、呟いてしまった。
「 なっ…!!? キサマ…なぜ私の本名を知っているっ!!? たしかに私は『ヤハク村』の生き残りであることをキサマに告げた…だが、なぜ私の本名までわかるのだっ…!!? 」
リリティア…じゃなくてスカイダルは驚きの表情を浮かべている。
うっかり呟いてしまったが…まぁ、いいや。
いくらでもごまかしは効く。 ( 【現実改変】、【時間逆行】、【記憶改ざん】、等々…。 )
つまり…
『村のみんな』ってのは、今は亡き『ヤハク村』の村人たち。
『仇』ってのは、(オレのことではなく、)『人間』たち…もっと突き詰めれば『ヤークド帝国』の『ヤハド皇帝』と『宰相リヒャルト』。
…ってことになるわけか…。
…ってか、ついさっきまではスカイダルを始末しようって思ってたんだけど、こんな過去話知っちゃったら、スカイダル(=リリティア)が可哀そうになっちゃったな…
(^_^;)




