表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

残された家族 (4)

 私の親族の奥さんは、GHQにお願いに通っているのにも関わらず、公然と東京裁判を否定してしまったわけですが、それで不利な扱いになったかというと、

 判断が難しい

 のです。

 なぜなら、懲役四年のところを、実質二年になったからです。

 お願い

 が叶ったことは、叶ったのですが、ほとんどの人が

 減刑

 になっているので、なんとも言えないです。

 それに、他の人達が、どんな釈放運動を展開したのか、裏取引ですからね、知る由もないです。

 他と比べられないのですよ。

 A級戦犯なんかは、CIAの手先になって、釈放されたわけですが、それと比べてもねえ。

 A級戦犯から、

 アメリカの手先になって、

 総理大臣になって、

 安保法案を成立させて、

 総理大臣を辞職した

 人もいるわけですからね。

 そこまでアメリカに貢献した人と比べてもねえ。

 それに、GHQに通っていたのは知っていますが、

 具体的にどんな釈放運動をしたしていたのか、

 までは、わかりません。

 ただ、金がかかったようです。病院も医者が逮捕されていなくなったにも関わらず、やり続けていたようですし。

 金銭的に支援したのは、主に私の祖母です。

 私は、この祖母の判断が間違っていたと思っています。

 この時、すでに六十歳を越えていましたからね。この当時の六十歳ですからね。

 もうボケていたのでは、

 と思っております。

 そう、祖母は全財産を失ったのです。

 祖母は一人娘ですので、親の財産を、実質的には、独り占め出来たのです。

 祖母は、ある私鉄の本社駅近く、という好立地に家を持っていました。

 私の父はそこで育ちました。

 お手伝いさんに育てられたそうです。

 幼稚園には、お手伝いさんにおぶられて通ったそうです。

 歩って行ったことはないと言っていました。

 小学生になると、電車でいろいろなところに遊びに行ったのだとか。

 その、父にとっては思い出の家だけが、私が生まれた時に残っていなかったのです。

 残りの三軒の家はありました。祖父の持ち物だったからです。

 その当時、父は高校の教師だったのですが、給料日になると、教室の隣の廊下で、祖母が待ち構えていたそうです。

 そして、祖母が亡くなる時、行き先がなかったのです。

 その時、私の父は、私の母の姉の嫁ぎ先に厄介になっていました。

 日本人はニワトリ小屋に住んでいる

 時代ですからね。住宅事情が最悪だったのですよ。

 私の父は、血の繋がっていない人の家に居候しているのにも関わらず、祖母を引き取ったのです。

 ありえない話でしょ。

 老人の介護をしたことがある人なら、わかると思います。

 老人介護施設はウンコ臭いんですよ。

 老人がいる病室も同じです。

 一歩中に踏み入れただけで、気持ち悪くなります。

 そんなのを自分の家に入れるなんて!

 私の父が祖母を引き入れた家の持ち主は、私の伯父です。

 父と一緒に住んでいますが、ただの義理の兄弟です。祖母とも血が繋がっていないのです。

 その伯父が、祖母を引き取る時に、父になんて言ったと思います?

 「○○(父の名)さんは、親孝行で偉い」

 と言ってくれたのだそうです。

 私は今、母の介護をするようになって、この話を思い出すと、涙が止まりません。

 伯父の偉大さが。

 伯父は一代で財産を失ったため、はっきり言って、評価が低い人です。

 伯父の家は、伯父が子供の頃の大正時代には、日収が一万円あったそうです。

 三菱財閥クラスですが、当時の日本の主力産業を押さえていたのだから、そんなもんでしょう。

 それが、伯父の長男が国立大学に合格した時には、入学金が払えないほどになっていたのです。

 伯父の家が没落した理由、もう、おわかりですよね。

 アメリカ無双しなかった

 からです。

 第二次世界大戦の日本の戦費は、今のお金で4400兆円とか言う人がいるのですが、それを主に負担させられたのは、地方の地主階級です。地方にいてGHQと上手くコンタクトが取れなかったのです。

 具体的には農地解放です。

 それに対して、財閥解体は、GHQに媚びへつらうのに成功したため、ほとんど痛手無しです。

 私の親戚は、地方の地主階級のため、全員没落しています。

 地方でノホホンとして、誰も東京に行こうとせず、アメリカ無双しなかったのです。

 唯一、私の祖母だけが、情報を得てきました。

 ある時、祖母が株を買い占めようとしたことがあったそうです。

 その時、祖母は使えるお金がないので、祖父の財産で勝負しようとしていました。

 でも、祖父に反対されて、せっかくの情報を活かすことが出来ませんでした。

 あの時、株を買っていれば

 と、父は言っていました。

 せっかくGHQに通っているのに、

 戦犯を釈放させただけ、

 なんてもったいなさ過ぎますよね。

 上手くやった人は、

 総理大臣

 にもなれたのだから。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ