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陰謀論 (2)

 私の親族は、しゃしゃり出たために、戦犯になってしまったわけですが、本物の軍医は、当然無罪です。

 軍医からすればラッキーだったでしょうね。

 自分より優秀な医者が、自分の部下にいる

 こんなこと普通ないです。

 特にこの時代では。

 私の親族は、巣鴨プリズンにぶち込まれていたわけですが、その時に、

 GHQに怒って、反抗的態度

 をとったことがあったのです。

 何に怒ったと思います?

 それは、

 GHQが日本人の医者を平等に扱った

 から。

 巣鴨プリズンの受刑者で医療班が結成された際に、GHQが選んだ日本人の医者のリーダーが、

 医専出身者

 だったのです。

 医専とは、今の地方の国立大学の医学部と思ってもらって結構です。

 当時、日本では、医者の格は大きく三つに分かれていました。

 最低ランクが医専出身者です。

 最高は、私の親族のように、帝国大学医学部を卒業して、医学博士を持っている人です。

 今では、医学博士というと、開業医がお金を積んで貰う、

 博士の中では最低

 のものですが、当時は価値があったようです。

 この医者の格は戦後も続きました。

 大きく変わったのは、高度経済成長期の東大闘争です。

 それまでは、地方の国立大学の医学部に東大教授が来ると、植民地の教授以下全員が一列に並び、

 敬礼

 して出迎えていたそうです。

 誰も同じ大学教授だとは思っていなかったのです。

 しかも、植民地の教授ですら、医専出身者はなれなかったのです。出身大学なのに。

 この傾向は1980年頃まで続きました。

 そんな医者の世界ですからね。

 自分の方が格上

 と思っているから、やっちゃったんでしょう。

 ありえないのは、軍医の下に当時の医学博士がいたことです。

 海軍医学校の文官で大尉格だったのに。

 やっぱり、懲罰徴集の為せるワザだったんでしょうね。

 米軍捕虜を殺して、解剖して、食べようと思ったら、

 それをサクッと出来る人が、たまたま下っ端にいた。

 これも不自然な話ですが、実は、当時この部隊にいた人達は、このような事件が起こることを知っていたのです。

 犠牲になったアメリカ人捕虜は、陽気な性格で、日本人兵士にも人気がありました。

 いつも、その捕虜の周りに人垣ができていました。

 アメリカ人捕虜は、当時の日本人よりも遥かに大きく、頭一つ飛び抜けていたそうです。

 やっぱり解剖したくねえ!

 得意ギャグは、

 「キンタマー」

 だとか。

 しかも、この捕虜は母一人子一人だったそうです。

 この時代は離婚なんて滅多になく、女性の社会的地位が低かったため、母一人子一人は同情されました。

 同じく母一人子一人で育った日本人将校が、この捕虜を守るために、英会話の家庭教師にしていたのだそうです。

 日本人が米軍捕虜を守らなくてはならない状況だったのです。

 この事件は、かなり前から、計画的に行われたようです。

 そう考えると、

 海軍大尉に陸軍から召集令状がきた

 という、笑い話が説明出来ると思います。

 海軍医学校時代、私の親族が何をしていたかは、詳しく知りません。

 ただ、

 アメリカ人捕虜を解剖していた時に、

 海軍医学校で研究のために猿を殺していたことを思い出し、

 懐かしく思った、

 と、日記に書いてありました。

 解剖能力はかなり高い

 と、みていいでしょう。

 デカイ米軍パイロットでも、短時間で手際よくやれるほど、解剖に慣れていたのです。

 私の親族が簡単にやってのけたので、誰もこの事件の不自然さに気付かないのです。

 そして、本人さえも気づいていません。


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