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二人きりのチャット

次の日の夜。部屋にいくと昨日の札幌メンバーは全員顔を揃えていた。


<タツヤ>「よう!昨日は面白かったなー 無事に帰れたみたいだな」


<ハヤ>「お。リオ!またこっち来たら飲みにいくぞ!」


<リオ>「こんばんは〜。またいこうね〜」


<ミライ>「ねー。今度いつにする?」


<ガオ>「今度は残業ないときにしてね〜」


札幌メンバーのノリは前と変わらずテンションが高かく

たぶん会う前よりもフレンドリーな感じになってた。

こっちのオフの親睦を深めるという目標は完璧だった。

しばらくは昨日の話で盛り上がり他の地方の人達もみな

昨日のオフ会の様子に興味を示していた。


<マック>「で。どうだった?みんな見た感じは?」


<サクラ>「そうそう!それ聞きたい〜〜」


<ジィ>「だよなー。女性陣は美人いた?」


などと次々質問をしていた。

内心、男性陣がだす自分の印象をドキドキしてみていたが、

意外にもウケはよかったようだ。

というのは、以前女子メンバーがいない時に男性陣で

イメージの話をしそこであたしのイメージはヤスが言っていたように

「不細工なヤンキー」で定着していたらしい。


それを頭に置いて昨日対面をしたので、

思ったよりも普通な女性だったということで好印象だったようだ。

最初に悪く言っておくといいことがあるもんだ。

別にナイスバディでもなく、美人でもないあたしが

「結構イケてるお姉さん」になれるとは。


ま。お世辞かもしれないから、ここはお礼でも言っておこう。


<リオ>「ま。本心かわかんないけどありがと。

     でも男性陣はみんなイケてたよ」


<ミライ>「そうそう!ヤスが普通に見えたよね〜〜」


<リオ>「だねー。昨日はホストクラブ気分だったね」


などと出した途端。レナが食いついてきた。

やっぱすごいよアンタ。あんなに文句言われて攻撃されたのに

そんなこと綺麗サッパリ過去のことなんだねぇ・・・・


<レナ>「なにぃー!そんなにイケメンばっかなん?

     うわー写真楽しみやわー」



あまりこの話題で長く引っ張るつもりも無かったので、

キレのいいところで終わろうとしたのだが、

レナが必要以上に食いつき思ったより長くなった。


他の男性陣もあまり面白くない話だろうし。

実際、北海道メンバーがイケメンだと言ってから、

明らかに他の地方の男性陣の

テンションが下がったし、ヤスでさえ下がっていた。


ここは話の終わり所だな。


<リオ>「まぁまぁ・・・写真がアップされたらわかるって〜」


それで話を終わりにした。

まだレナは話足りないようだったが、

それ以上はこっちが無理って感じだ。


<ヤス>「とりあえずこれで全員と会ったけど、

     ここの雰囲気そのまんまだな」


確かにそれはそうだなと感じた。

会ったからといって部屋での雰囲気が変わることは無かった。

ただ会う前よりは会った人同士はなにかしら近くなった印象があった。


ちょっと変わったといえばあたしはカオルが

いると少しだけ意識するくらいで・・・

とはいっても特別になにをする訳でも無く、ただなんとなく・・・


「あぁ・・カオルってタイプだったよな〜」程度のものだ。

電話もしたことがないし、部屋でもそれほど二人の共通の話題も無い。

カオルは車とサッカーが好きであたしは車は動けばいいや程度の

考えしかないので話が続かない。


だからといって車のことを勉強しようとも思わない。

普通であれば、あたしは相手のことが気になると

相手の興味のあることを一生懸命勉強するタイプなのだが、

今回はそんな気にはならなかった。


それは北海道と関東という距離もさながら、

写真は見たけど動いてる実物を見た訳でも無く、

それ以上の感情が盛り上がることもなさそうだし・・・


北海道メンバーの男性陣もたしかに格好よかったが、

あたしのタイプとはちょっと違い動いてるのを見ても、

やっぱり違う部署の人達くらいの感覚だった。


そう思えばネットの世界の人も実際会ってしまえば

普通の滅多に会わない友人よりももっと濃い存在なのかもしれない。

年に1回それも道で偶然遭う程度の顔見知りの人よりも、

毎日なにかしらの話題について話、

相手の意見を文字だけど感じ取りたまに会うほうが

現実社会の人よりも友達っぽい。


ほんの少しだけネットの文字だけの人が近くなった。


きっとカオルが北海道のメンバーならば、

あたしが札幌に遊びにいく回数は今よりもかなり増えるかもしれないが、

けどそれはカオルもあたしに興味を持ってくれればの話で、

今のままであればきっとなにも変わらない。

あたしは異常なくらい小心者なので、自分から行動とかできない性質だし、

ここで暴走でもしたら、レナ2号に成り下がる。


それだけは勘弁だ。

「結局タイプだとしてもなにも変わらないな〜〜〜」

そう思いながらカオルの出した文字をぼんやりと見ていた。


北海道オフの話を終え話題はみんなの仕事のことや

日常生活の普通の会話に戻っていた。

時間は0時少し前だった。


ポツポツと落ちる人もいたが、それでも部屋の人数は10人はいた。


ちょうど煙草が切れたので


<リオ>「ちょっとコンビニ行ってくる。まだ誰かいる?」

<ヤス>「おお。いってら。俺は明日遅いから2時くらまでいる」

<カオル>「気をつけてなー 痴漢すんなよー」

<レナ> 「まだいるでー。遅いから気つけるやでー」

<リオ>「OK。いってきまーす」


そう出して画面をそのままにしてコンビニに行った。


15分後・・・

コンビニから帰り、画面に戻るとメンバーは変わらず10人だった。

戻ったことを知らせる前に過去ログを確認した。


ちょっと驚くようなことが書いてあった。


ヤスがカオルに

<ヤス> 「絶対リオはカオルのことタイプだぞ。

      いっとけ!大丈夫だって!」


<カオル>「まじで?けどヤスの意見だけじゃん

      リオはなんとも思ってないかも」


<ヤス>「俺なにげに聞いたけどニヤリとしてたから大丈夫だって!」


<カオル>「うーん。ヤスの送ってくれた写真見た感じ

      俺も結構好きなタイプ」


<ヤス>「わ。字にすんなって。リオにバレたら殺される。

     隠し撮りなんだから!」


<カオル>「やべぇ。消せないじゃん。

      ガンガン文字打って上に隠しちゃえ」



その後、「あいうえお」とか無駄な文字を打ち、

無理やり画面上にこのやり取りが見えないように上げられていた。


なんとなく気まずくなるようなモノを見てしまった。

おまけに隠し撮りされてたとは・・・・

口とか開いてたら死にたくなるな、、、その写真。


実際、カオルに「俺も結構タイプ」と言われれば悪い気はしない。

それどころか最高!!と腕を高くあげてもいいくらいだ。

けど、なんとなくどーにもならないよな・・・

という気持ちは変わらなかった。


この腰の重いあたしが東京に行く訳も無いだろーし。

それにレナの事件で部屋はなにげにピリピリしているのに、

ここであたしまで色恋沙汰をおこせば間違い無く

部屋は無くなりそうだと思った。


これは見なかったことにして、そのままにしよう。


<リオ>「ただいま。寒かった〜」

<ヤス>「おかえりー」

<カオル>「痴漢しなかったかー」

<レナ>「おっかー」

<ミライ>「今日はこっち寒いよねー」

<マック>「こっちは暖かいぞー」


などなど・・・・

みんな普通の会話をしていた。

なんとなく複雑な気分ではあったが、そのまま会話に戻った。


時間も1時をすぎ、一人二人と落ちていき、残ったメンバーは

カオルとヤスとミライとあたしになった。

ヤスとミライはこの前の北海道オフの話をし、

二人でカラオケの話で盛り上がっていた。

散々最後まで寝ていたくせに、

シレッとカラオケの話をするヤスが可笑しくてミライとからかっていた。


2時近くなりそろそろ寝ようという話になりミライが先に落ち、

ヤスが落ちた。

「じゃねー」とか挨拶を打っている間にどんどん先に落ちられて、

カオルと二人になってしまった。


<リオ>「せっかく打ったのに、もういないし・・・・・」

<カオル>「だね」

<リオ>「じゃ。あたし達ももう寝ようか」

<カオル>「眠いの?」

<リオ>「眠いっていうか、みんないないしね」

<カオル>「そういや二人で話したこと無かった気しない?」

<リオ>「あー。話題がかみ合わないしね。あたし達(笑)」


なんとなくすっごい気まずい。

面白おかしい話も振れないし。


<カオル>「まだ眠くないならもう少し付き合ってよ」

<リオ>「いいけど」

<カオル>「またそっけないねぇ(笑)」

<リオ>「そんな訳でもないけどね」


<カオル>「北海道オフはイケメンが多かったみたいだけど、

      好みのタイプはいなかったの?」


<リオ>「そうだね〜 いなかった(笑)」

<カオル>「どんなのがタイプ?」

<リオ>「んー。痩せ型で目の細い人かな」

<カオル>「俺?(笑)」


「そうだね」と出せばレナ2号になってしまう。

「違う」と言えば嘘になる。


<リオ>「どうだろ?(笑)」 

<カオル>「なんだそれ〜〜〜(笑)」


二人が(笑)マークをつけているが笑っているのかと聞かれれば

少なくともあたしは笑ってる場合では無い。

ちょっとテンパってる状態だったので、その話をそこで止め違う話を振った。


その話に上手くカオルが乗ってくれたので、

それ以上は気まずい雰囲気にはならなかった。

時間も2時を過ぎ、そろそろ眠くなってきたので解散することにした。


<リオ>「じゃ。今度こそおやすみ〜」

<カオル>「今度電話していいかな?」

<リオ>「へ?」


<カオル>「いや、電話したこと無いから、たまにいいかなって」

<リオ>「あー。うん・・・そうだね」

<カオル>「結構ヤスとかと電話してるじゃんリオって」


<リオ>「あたしからはかけないけどね(笑)」

<カオル>「そっか(笑) じゃ、今度あんまり遅くならない

      時間に電話するよ」


<リオ>「わかった。じゃ、今度ね。おやすみー」

<カオル>「またなー」


急いで部屋を出た。

なんとなく嬉しい気持ちもあったが

突然がっついてるようなカオルに戸惑っているのもあった。

カオルと電話と言われても、とくに共通の会話がある訳でもないし、

確実に沈黙になりそうで、ちょっと困った。

部屋の話と言っても、とくに無い。


あんなことをヤスが言い出したから、こんな展開になったんだ。

ったく、アイツはいつも碌な事をしない。

文句の電話でもしてやろうかと思ったが、

2時すぎにわざわざ電話して文句を言う話題かと

言われればそうでもなさそうなので、その日はやめた。



その次の日、なんとなく部屋にいきづらい気分に

なりチャットをしなかった。

またカオルと二人きりになったら何を話していいか

分からないのもあったし、変に意識してしまう自分もなんだかな・・・

という感じがしたからだ。


11時をまわり今日は早く寝よう。

そのまま電気を消しPCのメールチェックすらしないで寝た。


チャララ〜ラララ〜♪


突然、携帯の音で目が醒めた。

寝ぼけているので、どこに携帯があるのか分らない。

ゴソゴゾとベットの頭のあたりを触り、やっと携帯をみつけた。

画面を見ると、いままで寝ていたのもあり眩しくて目を細めた。


画面には<カオル>と書いていた。


「わ!!!カオルだー!」


そう驚いて、電話をでないまま画面を眩しい顔をして見ていた。

でるのを躊躇したが無視するのも悪いので

エヘンエヘン!と咳払いをして声を整えてから出た。


「もしもし・・」ちょっとビクビクしながら電話にでた。


「あ。リオ?カオルだけど・・・・もしかして寝てた?」

初めて聞くカオルの声は思ったより低音だった。

でもそれは聞きやすくもあり、とても男らしくもあった。

写真のイメージではもっとヨワヨワしい感じをイメージして

いたが、まったく外れた。それもいい方向に。


「ううん。寝て・・・・なかったよ。大丈夫」

「そっか、今日チャットしてなかったから、

 もしかしたら寝てるかとも思ったんだけどさ」

「あー。うん、TV見てたの」


嘘八百だ。ぐっすり寝てたくせに大嘘をつくあたり、

カオルを意識している意外のなにものでもない。


「なに見てたの?」


そういわれても「夢見てました」とも言えず、

適当に「ニュースを見ていた」と誤魔化した。


「あのさ。今度北海道に遊びに行く予定があるんだけどさ。

 その時会えるか聞いてみようと思って」


突然の話にビックリして覚めきっていなかった目が

ハッキリと覚めた。


「いつ?」声がうわずっていたかもしれない。


「うーん。まだはっきりは決めていないんだけど、有給が溜まってるし

 北海道って行ったこと無いから一度行きたいなって思ってたんだよね」


「あ。そうなんだ・・うん。いいけど。

  じゃあミライ達にも連絡しておくね」


突然ミライとか他の人の名前を出してしまった。

慌てていてどうしていいかわからず、思わず出てしまった。


「あ。そうだね。みんなにも会いたいし」


それ以降はなんとなく「初夏の北海道はどこに行くべきか?」や

「おすすめ観光スポット」などダラダラと話、

気がつくと1時間は話をしていた。


「もう今日はチャットしないの?」

「もう誰もいないかもよ?」

「リオがやるなら付き合うけど」

「どうしようかなぁ」


時計を見ると1時少し前になっていたが、途中で寝たのもあり眠気は無かった。

でもここで「今日はしない」と言うと電話を切るタイミングを

失いそうだったし、これ以上電話をしていても、

いつ話が詰まるかと思うとヒヤヒヤした。


「じゃあ。今から少しだけしようかな」

「うん。わかった。じゃあ俺も今から繋ぐよ」

「うん。じゃあまた後でね。あ・・電話ありがと」

「え?なんでありがとう?」

「え、、いや、いままでカオルとは電話したことなかったし

 電話をくれてありがとうって意味。あんまり深い意味は無いけど?」

「あ。そうなんだ。また電話するよ。じゃ、後はPCで・・・・」


そう言って電話は切れた。

なぜ急にありがとうなんて言ってしまったんだろう。

いままで誰が電話をくれてもありがとうなんて

言ったことなど無かったのに。

ちょっと胸がどきどきした。

回線を繋ぐ間、ちょっと自分に「冷静になれ!」と説教をした。


たしかに写真のカオルは格好よかった・・

でも逢ったことも見たことも無いのに・・・

なにを期待してるんだ!

変な期待をして浮かれるとレナと同じ道を歩むことになるんだぞ!

たかだか電話でちょっと話をしたくらいで好きとか

嫌いとかって感情がでるほうが変なんだ。

もっと冷静に普通の感情でいかないとダメだ!



そう自分に言い聞かした頃には回線はとっくにログインしていた。



チャット部屋に入るのを少し躊躇した。

なんとなくこのまま自分がカオルに対して好意的なことを

言われ続けたらきっと今よりもっとカオルのことが気になる存在になる。

そうなった時に自分で自分をコントロールできるものだろうか?

もしかしたらどっかの誰かさんのように暴走しないだろうか?


自分の中でカオルという存在はいままでと違う一段上にあがった

存在になってしまったような気がした。




そう思えばレナの心境もちょっと理解できそうな気がしてきた。

ただ漠然とモヤのような相手では無く、

あたしはカオルの容姿を知った上でなんとなく気になっているが、

でも世間の人から見るときっとこれはちょっと異色な

感情なのかもしれないな・・・・・


やはり恋愛というのは相手の目を見て、

相手の感情を受けながら「これは恋愛だ」と感んじるもの

なんじゃないかと思う。

だから今こうしてドキドキしたり、

慌てたりしているのは恋愛感情とは違うものだ。


そう自分に言い聞かせ、自分で納得してから深呼吸をして部屋に入った。

カオルとヤスとミライがいた。


二人っきりじゃないことに少しホッとした。


あたしが部屋に入るとカオルが「遅かったねー」と言ってきた。


その文字を見て「わ!二人にバレちゃう!電話していたこと!」と慌てた。

が、あたしが入室する前にカオルが二人に

「いままで電話をしていた」と話をしていたようだった。


<ヤス>「リオいつの間にカオルとそんな仲に?(笑)」


その文字を見てちょっと動揺した。

ヤスは冗談で言っているのに過剰に反応してしまう自分がいた。


<ミライ>「本当だよー いつの間に!ヒューヒュー」


ミライにまで冷やかされスッカリ慌てて必死に弁解をする為に、

いままでに無いくらいのスピードでキーボードを打つ自分がいた。


「そんな仲じゃない!ただ今度北海道に来る予定が

 あるからみんなで会おうって話をしただけ!」

「そんな気は無い!」

「逢ってもいない人に特別な感情なんか持てないよ」

などと連発している自分がいた。

そこまで真剣にならなくてもいいほどに・・・


あまりの過剰なスピードに3人は


「いや、、、冗談だから・・・」と素で冷めていた。


しまった。墓穴を掘ってしまった。

どうも調子が狂う。

レナのように思われたくない自分とカオルになんとなく特別扱い

してもらったと勘違いする自分とでテンパッっていた。


<ヤス>「大丈夫だって。俺はリオがそんな簡単に

     落ちる女だとは思ってないって」


<ミライ>「もう冗談だってばー(笑)」

 

<カオル>「そんなに嫌わなくてもいいじゃん!」


そう出されて冷静になった。


一人で熱くなっていたようで恥ずかしくなった。

誰も本気で言ってないのに、バカみたいにムキになってアホみたいだ。



<リオ>「なーんてね。あたしだって冗談だってくらい分ってるよ」



と、慌ててフォローした。

そのフォローが成功したのか失敗したのかはわからないが、

ひとまず空気は和やかに元の普通の空気になった。


カオルが近いうちに北海道に来るということで、

ミライも一緒に食事できることを喜んだ。

ヤスも自分の出張に合わせてくれるなら一緒に参加したいと言った。


一瞬、ミライに会ってカオルがミライに興味を持ってしまうかもな・・・

と思ったが、それはそれで仕方が無いことだよなと自分に言い聞かせた。

別にカオルは誰の所有物でもなければ、

あたしと恋愛関係にある訳でもない。

男ならミライのようなほんわかした可愛さに

引かれるのは当たり前だと思った。


見るからに優しい雰囲気とおっとりした話し方。

理想の女性のように思えた。

あたしが男ならミライのような子を好きになると思う。


そんなことを考えながら1時間ほど4人でチャットをし、

ヤスが退室しミライが退室した。


また変なことを考えそうだったので、

慌ててあたしも「おやすみ」と出した。

そのまま急いで部屋を出ようとすると、カオルが話し掛けてきた。


<カオル>「なんか電話迷惑だった?」

<リオ> 「そんなこと無いよ」

<カオル>「そっか。なら安心した。いやさ、、、

      俺ヤスにいろいろ吹き込まれてっていうか

      ちょっと実際リオのこと意識したって言っても

      間違いじゃないんだよね」


黙ってそのまま文字を見ていた。


<カオル>「でさ。なんかノリで写真とか送ってもらったりしたんだけど、

      もしも本当にリオが俺のことタイプっていうなら、ちょっと嬉しいかなって」


<リオ>「あー。うん」


どっちともつかない返事をした。

ここで「うん。タイプです」と言ったところで、どうしようというんだろう?

相手もどんな写真を見てタイプとか言ってるのかサッパリ分らないが、

少なくともあたしはそんなに可愛い訳では無い。


困っていると、カオルが、


<カオル>「リオはレナみたいになるの嫌なんだよね?」


<リオ>「レナみたいって?」


<カオル>「逢ってもいないうちに盛り上がれないって

      ヤスに言ったんだろ?」


<リオ>「それ変?たしかに写真のカオルは格好いいなーって思った。

     けど、あたしは文字のカオルと写真のカオルしか知らない。

     実際逢った雰囲気とかそんなの分らないのに

     好きとか嫌いとかって感情は考え付かないんだよね」


<カオル>「それはわかるよ。俺もただ漠然としか思ってなかったんだ。

      けどさ、最近俺達って毎日チャットしてるだろ?

      そうなると普通の世界の人よりこっちの人のほうが

      いつも話ているだけあって自分のこと分ってくれそうな気がしてさ」


<リオ>「うん。なんとなくわかる」


<カオル>「けど、俺もレナみたいに一人で盛り上がるのも

      格好悪いなって思うし一方的って好きじゃないんだ。

      だからちょっと俺に会ってみる気ない?」


<リオ>「それは今度北海道に来るってことでしょ?」


<カオル>「うん。それもあってさ。北海道言ってみようかなー」


<リオ>「そっか。でもさ、カオルってミライの写真見てないでしょ? 

     ミライも可愛いよ。そんなあたし中心に考えないほうがいいよ〜(笑)」



笑いのマークをだして本音を言ったはいいが、

とても惨めな気持ちになった。

でも実際、みんなで逢うまでの間カオルのことを

少なくとも特別な気持ちで見てしまう。

が、ミライに逢った瞬間にそっちに気持ちが持っていかれる

カオルを目の当たりにするのは辛すぎる。

期待しないと言っても、それはちょっと無理な気がした。


こんな告白という言葉にカスリそうな発言をされて、それでも

「貴方のことなんか全然気になりません」なんて言えないなと思った。


<カオル>「俺、ミライの写真も見たよ?」


<リオ>「え!どうやって?」


<カオル>「そこは男の連携プレー(笑)

      女性陣がいない時に男ばっかで誰がいいとか

      そんな話したときがあってさ。ハヤがデジカメ

      持っていくからその日のうちに速攻男性陣に

      写真送ることになってたんだよ」



そんなことになってたなんて・・・・・

HPにアップされていないだけで、あたしとミライの写真は遥か海を越え

すっかり全国に飛んでいたようだ。


<カオル>「あのオフの日にハヤ帰ってすぐにチャット参加したんだよ」


<リオ> 「嘘!だって結構遅かったんだよ?」


<カオル>「男の連携プレー(笑)」


<カオル>「そんでミライの写真も見たよ。まあ可愛いね」


<リオ>「うん。可愛いなって思った」


<カオル>「男というのは、「タイプなの」と言われた女の

      ほうが良く見えるもんさ(笑)」


<リオ>「はぁ・・・・」


<カオル>「そんなんで、俺は結構リオのこと気に入ったからさ。

      一度会ってみてよ。で、それからのことは会ってからってことで」


<リオ>「うん」


<カオル>「あれ?あんまり乗り気じゃないねぇ(笑)」



<リオ>「あー いやそうじゃなくて。

     なんかこーゆーのって不思議だなって」


<カオル>「なにが?」


<リオ>「逢ってもいない人に「俺も君のこと気に入った」

     なんていわれるの」


<カオル>「確かにね(笑)」


<リオ>「なんか変な感じ(笑)」


<カオル>「俺もすごい変な感じ。でもなんとなく毎日頭に浮かぶんだよな。

      俺自分で「大丈夫か?」って思ったときもあったよ(笑)」


<リオ>「それわかるーー! あたしもそう思ったもん」


<カオル>「そうしたらヤスが会ってしまえばなにも変わらないってさ」


<リオ>「確かにそうかもね」


<カオル>「俺も自分で自分が大丈夫か確かめるのもあって会いに行く(笑)」


<リオ>「うん。わかった。楽しみにしてるよ」


<カオル>「もし逢ってみてなにかが違うと感じたらハッキリ言ってくれよ。

      勘違い野郎になるのキツイから」


<リオ>「うん。そっちも言ってね。

     あたし写真で見るほど優しくないから(笑)」


<カオル>「OK!じゃあさ、俺みんなに会うより先にリオのとこ行っていい?」


<リオ>「え?どうゆうこと?」


<カオル>「いや、みんなに会う前の日に北海道に入るから、二人で先に会わない?」


それは考えてもいない展開だった。

いきなり二人きりと言ってもヤスと会うのとはまた違う。


<リオ>「うーん・・・・」


<カオル>「俺って信用無いのな(笑)」


<リオ>「いやそうじゃないけど、、、なんとなくなー」


<カオル> 「なんとなくなに?」


<リオ>「わかんない。でもなんとなく会うのが怖いっていうか・・」


<カオル>「なんで?お互い顔知ってるんだし。あ、もしかして身の危険感じてる?」


<リオ>「いや、そうじゃないけど」


<カオル>「大丈夫だって。もし不安なら俺のスペック全部送るからさ。

      住所から職場からなんなら実家の電話番号も住所も。

      で、俺に会う前に第三者にそれ渡しなよ。なら大丈夫でしょ?」


<リオ>「なにもそこまでしなくても・・・(笑)」


<カオル>「俺、なにげに普通に言ってそうだけど、毎日このことばかり頭にあってさ、

      俺どっかおかしくなっちゃったんじゃないかと思うくらい。 

      だから早くこの件は解決したいんだよ」


<リオ>「解決って・・・」


<カオル>「ヤスの野郎が変に吹き込むからすっかり調子狂ったよ(笑)」


<リオ>「わかった。じゃあ先にカオルに会うよ」


<カオル>「よかった。じゃあ明日ヤスと休みの調節するよ」


<リオ>「うん。わかった」


<カオル>「リオ」


<リオ>「ん?」


<カオル>「なんか俺の都合ばかりでごめんな」


<リオ>「そんなことないよ。ちょっと戸惑ってるだけ」



<カオル>「やっぱちょっと変かもな(笑) こーゆーのって」


<リオ>「そうかもね(笑)」


そしてその日のチャットは終了した。

カオルはあたしのことが好きと言うより、

今自分がどうすればいいのか分らないからもがいているようでもあった。

その感覚があたしにも分る。実際会った人でもないのに気になるなんて

TVで見た芸能人を好きだという感覚に少し似ている。

そしてその芸能人が「俺もちょっと気になる」と手紙をくれたような感じがする。


その芸能人のことは好きだが、

それが本当に好きかわからない・・・そんなやり取りのような気がする。


それはとっても不思議でそれでいて手を伸ばせば触れるくらい近いような気がした。

そこは芸能人と一般人の違いでもあった。


これでカオルに会えば、このモヤモヤは解決するのだろうか・・・・

口では言えない不安な気持ちのまま、モニターを黙って見ていた。

友人にこんなことを言っても変な顔をされるだけだろうし。


「インターネットの人と会うの?怖くない?」ってきっと言われる。

ネットをしていない人にはこのことは未知の話だろうから絶対相談はできない。

しても気持ち悪いと言われるだけだろうし・・・・・



それから3週間後。

カオルから電話がきた。


「もしもし。あ、俺だけど」ちょっと照れたように電話をしてきた。

「うん」今ひとつ緊張して話の続きが出てこなかった


「あ。今週末に休みとれたんだ。金曜から日曜まで。

 で、木曜の夜に飛行機で行こうと思うんだ」

カオルも緊張しているようだった。


「うん。わかった。時間空けて迎えに行くね」

「おう。わかった。じゃあ木曜な!詳しい時間はメールする」


短い用件で電話は切れた。

その日、ドキドキしすぎるのとウッカリ墓穴を掘りそうなのとで

チャットをするのをやめた。


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