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17/35

間の悪すぎる男

カーテンを開けると射すような日差しが部屋に広がり眩しさに目を細めた。


「あ・・・もう時間?」


そう言いながら寝ていたカオルは眩しそうに窓に背を向け布団の中に潜っていった。



「もう起きないと遅れちゃうよ?今日は試合早いんでしょ」



「うーん・・・・・俺、何時間寝たらスッキリ起きれるんだろ・・・

 毎日眠いんだけど・・・・一生夜でもいいな・・・・」



そう言いながら寝癖だらけの頭を触り起きた。

朝ごはんを食べながら「朝、味噌汁なんて何年ぶりだろ」と嬉しそうに食べた。


「和食が好きなの?なら言ってくれたらよかったのに」


「いや、なんでも食うよ俺。朝からカツ丼だってイケるし」


「げぇ・・・・それは重いな・・・」


そんなくだらない話をしながら、。昨日のことはお互いなにも話さなかった。


(カオルのこと、、、信じよう)




「そういえばさ・・・」

「え?」

「昨日、俺報酬もらってなかった・・・・」

「もう。そんなこと朝から言わないでよ」

「ほら。一生夜のほうがいいだろ?」

「カオルの頭の中はそんなことでイッパイだね。まったく・・・・」

「で。なんだったの?報酬って?」

「こんな朝から言えないよ」

「いいじゃん。教えてよ」

「だーめ。今日帰ってきてからね」


おかわりをよそうのにキッチンに行くと後ろからカオルが着いてきて

ヒョイとキッチンの上にあたしを持ち上げた。


「ちょっと、、、ビックリするじゃない!」

「俺、こうゆーのしたかったんだよな〜」

「え?」

「まだ時間あるよ・・・・」


そう言ってキッチンの上に乗ったままの、あたしの唇に微かに触れるくらいのキスをした。

軽いキスだけのつもりだったのに、何度も小さくキスをしているうちに

自然とお互いの舌が絡み合い体が熱くなっていた。



目が虚ろになったあたしを見ながらカオルは不敵な笑みを浮かべていた。


「ダメだ!このままじゃ試合放棄しちゃうかもしれない・・」


耳元でそう囁きながら、カオルの手はシッカリと服のボタンを外し

肌蹴たブラウスの中に手が伸びていた。

少しだけ体を浮かせ下着だけを脱がされカオルが入ってきた。


突き上げられる度に側にあった食器が揺れる音がした。

狭いスペースに不自由な形で座らされていることが不安定でカオルにしがみつくしかなく、

そんなあたしの行動が更にカオルを興奮させていた。


「まゆ見るとヤリたくなってダメなんだよなぁ、、、」


しがみついたカオルの首元に薄っすらと汗が滲んでいるのが分かった。






暑い部屋で朝からそんなことをしたので二人とも汗だらけだった。


「一緒にシャワー入ろうか」

「え!いいの?一緒に入るの嫌だって言ってたじゃん」

「これが昨日の報酬だったの。だってシャワー浴びないと気持ち悪くて行けないでしょ?」



そう言って二人で狭いバスタブに立ちながらシャワーに入った。

何度となくまたしようとするカオルを「もう遅刻するからダメ!」とかわしシャワーを出た。



「軽くなったから今日も勝てそうな気がする!」と言うカオルに

「バカ!」と言ってグランドに向かった。





グランドに着くともうみんなが待ちくたびれるように集まっていた。


「遅い!こないかと思ったぞ!」

そう先輩らしき人に言われてカオルが頭を下げながら輪の中に入っていった。


観客席にはお盆だと言うのに人がたくさん来ていて、祐子さんの姿を見つけ近くに歩いていく途中、少し離れたベンチに池田さんが座りこっちを見ていた。


そのまま通り過ぎてもよかったのだけど、彼女の視線を感じて隣に座った。


「昨日はどーも」

そう言うと彼女は無視をして前を見た。


「もうカオルに変なこと言わないでほしいの」

「変なこと?」

「カオルのこと好きなの?」

「そんなこと貴女に関係無いでしょ!あっちに行ってくれない?」

「ここで見るつもりは無いけど。でも、これ以上カオルにかまわないで。迷惑なの」


そう言って池田さんの隣を立ち、祐子さんの隣に座った。



「まゆちゃんあの子となにかあったの?」


池田さんの隣に座って話をしていたのを見た祐子さんが聞いてきた。


「え?あぁ・・・まぁ・・・ちょっと。でももういいんです。なんでもないです」

「そう・・・・? でももしもなにかあったなら言ってね。

 でもできるだけあの子には近づかないほうがいいわ。

 矢吹君もわかってると思うんだけどなぁ・・・」



「そうなんですか?」

「矢吹君言ってなかった?彼女のこと?」

「え?ただ不倫のことで相談を受けたとか・・・そんなことは」

「それ以外にもあるのよ。いろいろね」

「そうですか・・・・」

「矢吹君も被害者みたいなものなのよ。可哀相にね」

「え?どうゆう意味ですか?」



「あの子ね。嘘ばかりつくの。たぶんちょっと病気なのかもしれないわね〜

 でも若いし、それなりに可愛いからちょっと甘えると騙される訳よ、

 男どもは・・・・・

 あ!でも矢吹君は大丈夫よ?そんなのには目もくれてなかったから。

 でもそれが返ってあの子の気に障ったみたいでね」



「はぁ・・・」



「残業をしなきゃならない時期があってね。

 他の暇な部署から人借りたことあったの。

 その時にあの子がうちの部に手伝いに来てね。

 うちの課長とデキちゃったのよ。

 その課長っていう男もなんだろな?って感じの男なんだけど、

 それと平行に矢吹君にちょっかいだしてね。

 矢吹君は全然興味が無かったみたいで相手にしてなかったんだけど、、

 それが気に障って他の人に矢吹君にセクハラされたって言いまわってね。

 私は彼がそんなことする人とは思わないから、

 真っ向から否定したし、彼も否定したわよ。

 ね?まゆちゃんだってそんなこと信じないでしょ?」




そう言われても・・・・・

(ナイとは言い切れないかもなぁ、、、、あの性欲じゃ、、、)



「あ。はい。そうですね」



「で、彼女を問い詰めたら結局は嘘ですって言ったんだけど、

 それでも一旦広がった噂はなかなか消えないものじゃない?

 矢吹君いつの間にかセクハラ大魔王決定よ。

 本人は笑って (ま、そのうち消えますから)って言ってたんだけど、

 それもあって今年の昇格無かったの、彼なら十分昇格もあったのよ?」


そんなことがあったんだ・・・

別に教えてくれてもいいのに・・・



「その話が消えかけてきた頃、例の課長の奥さんともめてたみたいでね。

 相談できた義理でもないのに矢吹君に相談したらしの。

 でもそれを受けちゃうのが矢吹君なのよ・・・

 人がいいっていうか、なんていうか。それでまた彼のこと好きになって

 いろいろ誘ったりしたみたいなんだけど、アッサリ振られたって

 聞いたわ。それを根に持ってるのかもね?

 最近じゃ彼女の素行の悪さをみんなが気がついて矢吹君のこと

 誤解してたって思う人達も多くなってきたからもう大丈夫だと思うけど」




「それ、いつぐらいのことですか?」

「そうねぇ・・・・今年の2月くらいかしら?」

「そうなんですか・・・・」



その時期のカオルを想いだしてみた。

でもあまり大きな印象は無かった。その頃はカオルのことなんか

なんとも思っていなかったし、部屋で会ったとしても特別カオルとはあまり会話をしたこともなかったし・・・





「あ。もう始まるわよ!今日は調子どう?カオルちゃんは!」

期待をした顔で祐子さんは聞いてきた。


「えーと。大丈夫だと思いますよ?朝から元気だったから」

(違う意味だけど)

「そう。もう今日優勝なんかしたら連休いっぱいあげちゃうね」


そう言って祐子さんはメガホン越しにカオルを応援した。



前半1−1で結構いい試合だった。

まだカオルはシュートを決めてはいなかった。2本外したけど・・・・


ハーフタイムに汗だくで横になってるカオルに祐子さんは

「こら!あんたが決めないとダメでしょ!連休あげないわよ!」と

ポカンとメガホンで頭を叩いた。



「は〜い・・・・・」タオルで顔を覆いながら弱い声でカオルが返事をした。



グッタリしていたカオルは起き上がり、みんなに聞こえないくらい

小さい声で内緒話をしてきた。


「なんか、、朝から張り切りすぎたせいか腰がガクガクしちゃって・・・

 ヤバい・・・」


「だから言ったじゃない!もう!」

あたしも同じくペットボトルで頭をボカッと叩いた。



「部長〜 今日はあんまり期待しないでくださ〜い・・

 俺バテバテなんすよ、、、この二日走りっぱなしだし、、、、

 もう体力限界ですよぉ〜」


祐子さんを見ながらカオルは情けない声で言った。


横で涼しい顔をした望月さんが

「だらしないなぁ。俺なんかこんなに元気だぞ?」と言ってカオルを見た。



「だって望月さんキーパーじゃないっすか!

 俺FWですよ?走る量が違うじゃないですかー」


「いや。気の持ちようだ!俺も気分は走ってる!」

「気分じゃないっすか・・・・・」



望月さんがあたしを見て



「こりゃまゆちゃんがなにかしてあげるって約束したら

後半違うんじゃないの〜」とイヤらしい顔をして言い、

その話に祐子さんが乗っかり話を大きくした。


「そうよ!この際なんでもしてあげるって言ってあげなさいよ!まゆちゃん!」




この二人、、、、他人事だと思って・・・・



「俺なら、、、そうだな、、、裸エプロンがいいなぁ〜 一度見たい!

古臭いかもしれないがあれは男のロマンだな〜 

まゆちゃん背高いし、スラッっとしてるから似合いそうだし」



そう言って人の体を下から上にジロジロ見た。

ちょっとその目線が気持ち悪かった・・・・


「望月さんは祐子さんにしてもらえばいいじゃないですか」

とカオルが言うと


「えっ、、、それはちょっと、、、、」

と祐子さんを見ながら望月さんは黙った。



「なによ?その目つき?あたしだって結構スタイルいいのよ?」

と言って祐子さんは怒りながら自分のボディラインを見せつけていた。



「ほら!矢吹君!シャンとしなさいよ!まゆちゃんのエプロンは

私が買うから後半きっちり決めなさいよ!」



いつの間に決まってるのよ?裸エプロンて・・・・・・



「俺。もっといいこと思いついた!」

そう言って耳元に口を近づけコソコソと言うと


「それOKしてくれたら決めれそう!」と言ってウインクした。


それを見て祐子さんが

「もうなんだっていいわよ!やっちゃいなさいよまゆちゃん!

 よし!OK!それを目標に絶対勝つのよ!矢吹君!」とカオルに吹っかけた。



「よし!頑張ります!」

あまり疲れていない望月さんとヨロヨロのカオルがグランドに走っていった。

それを見送り



「で。矢吹君なんだって?」と祐子さんが聞いてきた。


「いや・・・・なんでしょ・・・・・」と気の抜けた返事をした。


「なによ〜 教えてよ〜 いいじゃない!あーいいなぁ。

 まだセックスを餌に男を操れるなんて!羨ましいな〜

 私もあと20歳若かったらな〜」と言って笑った。




別にセックス関係って言ってないんですけど・・・・・




それにたかだかサッカーの一点では決めきれないことを

言われてちょっと困惑していた。





「まだ早いかもしれないけど、一緒に暮らさない?」






そうカオルは言った。

それはそう簡単に決断できるものではなかった。

さすがにちょっと早すぎる。

確かにカオルのことは好きだが、

まだ数ヶ月なのにそこまでは考えられない。

こんな時、女のほうが冷静かもしれない。



今はただ一緒にいることが楽しいと感じる時期だ。

体のことにしても、どれほど相手を求めても満たしきれないくらいに

欲しい気にもなった。

けれどこれが今後ずーと続くかと言えばきっとそうではないと思う。

いつか飽きてくる。

そして相手の悪い所が見えてくる。

その時に地元から遠く離れた場所に一人で悩みをかかえた状態で

相談できる相手もいなく解決できるかも心配だった。


仕事だって簡単にはみつからないだろうし。



まだそれはできない相談だな・・・・・そう思った。



試合が始まり、ヨロヨロながらもカオルは頑張っていた。

でも最後の最後には逆転されて負けてしまった。


祐子さんは気絶しそうなくらいショックを受けていたが、

あたしは(これで約束は無効だ・・・・)とちょっと安心した。


戻ってきたカオルは


「あーぁ。残念・・・・ 勝てる試合だったのにな〜」と項垂れていた。

「うん。残念だったね・・・もうちょっとだったのにね」と慰めた。



祐子さんは

「でも昨日はあんなに頑張ったんだし、このチームにしては最高成績だわ!

連休の件は安心して。約束は守るから!」とカオルに言っていた。



軽い打ち上げをして1時間ほどで解散した。

この後の関東メンバーとの食事会の時間には少し早く時計を見ながらカオルと相談をしていた。


「どうする?どこか見たいとこでもある?」


そう聞かれたが疲れていそうなカオルを振り回すのも悪い・・・


「ううん。今日はいい。また今度こっちに来た時に

ゆっくり案内してくれればいいよ」


「それもそうだな。ちょっと今日は疲れたな。

 俺も歳だな〜 体力無くなったよ」



そう言って車のシートを倒し横になった。

明日、カオルはまた仕事なので今日の食事会はちょっと時間を早めた。

でも試合がアッサリと負けてしまったので、その時間にはまだ4時間以上あった。


「一回、家に帰る?そのほうがゆっくり寝れるんじゃない?」

「また出るのがめんどうになっちゃうな・・・・でも時間ありすぎるなぁ」


目を瞑ったままカオルは考えているのか、もう眠りに入っているのか分からなくくらい

グッタリとしていた。



「映画館いかない?」


「え。なにか見たいの?あたしは別にいいけど・・・・」


「暗くて寝れるじゃん。クーラーもきいてるし。

 俺は寝れるしまゆも映画見れるし」


「うん。いいよ。じゃあそうしようか?」



そのまま街に出て車を停め映画館に入った。

休みのわりに人は少なく、カオルが言ったようにクーラーは適温で昼寝には

最高の場所に見えた。


あまり見たい映画もなかったが、適当に空いていそうな映画を選び入った。

上映中カオルはグッスリ眠り、あたしは思ったよりも面白かった映画を満喫した。



食事会の場所に行きのれんを潜ると3〜4人のメンバーはもう来ていた。

ラビとヒデが一緒の席に座りワイワイとしている姿が見えた。

その向かえにケイタとサクラが座っていた。


「こんばんは〜」と挨拶するとラビが飛んできて抱きついた。

サクラも感じのいい人ですぐに打ち解けた。

ラビの行動を見てヒデが同じようにカオルに抱きつき、すぐさま頭を叩かれて突き放されていた。


所帯持ちの4人はさすがにお盆ということもあり、お墓参りの為に欠席。

やはり独身のように気軽な休みは過ごせないんだね・・・とみんなで会えなかったことに残念だねと口ぐちに言っていた。


そこにヤスが来た。


「よ!噂のラブラブカップルじゃん!どう?東京は?」

とニヤつきあたしの隣に座った。


それを見てカオルが


「ヤス、お前余計なこと言いそうだからこっちに座れよ」と言ったが

ヤスは「いいから!いいから!」とその場を離れなかった。



「今日はみんなわざわざごめんね。忙しいんでしょ?」

「暇なのわかって嫌味?」とヒデが言った。


それを聞いてみんなで笑い、それほどみんな連休だからって

どこかに行く訳じゃないと言っていた。



ヤスがみんなを見渡して

「あれ?マサはまだ来てないのか?」と言った。


「マサってヤツ来るのか?」とカオルが怪訝そうな顔をした。


それを見てヒデが


「まぁまぁ。いくらマサでももうリオにちょっかい出さないだろから、

 そんなに怒るなよ〜 もう〜」と言ってカオルに甘えた。


「だから気持ち悪いってー」とヒデを引き離しカオルが笑った。


チラッとラビと目が合った。

お互い「来るらしいよ・・・・」と言う顔をしてるのがわかった。



マサが来る予定だと聞いてカオルはおもしろく無い顔をしていたが、

別にみんながいる中で変なことも言わないでしょ?と宥めてやっと機嫌が治った。


いつ来るか分らない人を待つよりも先に乾杯しちゃおう!とヒデが言い、みんなで乾杯をした。


斜め前のケイタを見て、


「わざわざ仙台から呼んだみたいでごめんね」と言うと、

「ううん。どーせこっちに遊びにこようと思ってたから」と温厚そうな顔で言った。

写真でも見るよりもケイタは優しそうないい人だった。



ラビとヒデがこの前のカオルの家でのことをみんなに教え

散々冷やかされた。


ヤスが

「結局、一番ウマくいってるのはお前達だな」と言った。


その言葉が引っかかってヤスに


「ミライとなにかあったの?」と聞くと


「一緒に住みたいって言うんだよ、、、、」と面倒くさそうに言った。


「俺、月に2回は北海道に行ってるんだぜ?それも長期で。

 それでいいと思わないか?毎回空港で大泣きするしよ。

 ちょっと最近めんどくさいっていうか、、、なんかな」


「逢いたくないの?」


「そんなこと無いけどさ。ちょっと真っ直ぐすぎるっていうか、、、

 重荷になってきた。いちいちどこに居るとかチェックするし、

 お前等そんなこと無いだろ?」


「うーん。そうだなぁ・・・・でもヤスの仕事ならどこに居るって

 確認してもおかしくないでしょ?一ヶ所にいつもいないし?」


「確かにそうだけどよぉ。なんか疲れてきたんだよな」




そう言ってヤスはトイレに行った。

逢う回数が多ければ多いほど、飽きがくるのが早いもんだな・・・と

思いながら隣のラビと


「難しいね・・いろいろ」と笑った。


ちょうどそこにマサが来た。


「どうも。こんばんわ〜」と言いながら、なにくわぬ顔であたしの隣に座った。


ヤスが座っていた時よりもラビのほうに自然と体を詰めた。


「あ。リオさん?どうも〜」と握手を求められ、断ることもできずに握手した。


「写真で見るよりも可愛いな〜 カオルうまくやったな」とカオルのほうを見てニヤついた。

それを見てカオルは特に笑いもしないで「おぅ」とだけ言いビールを飲んでいた。


なんとなく場の空気を読めない人だなと感じた。


そして今度はラビにむかって

「あ。ラビちゃん!今度また電話するから〜」と笑顔で言った。


ラビは引きつった顔をしながら笑顔でかえした。


ヤスが戻ってきて自分の場所が無くなったのに気がつき

カオルの隣に座り、なにやら二人で話をしていた。




そのうちみんなが少し酔ってきたのもあり、

適当に席を移りいろんな人の隣に座り話をしていた。

あたしはラビとサクラと三人でワイワイと楽しく話をしていた。

ちょうどラビとサクラが秋になったら北海道に遊びに来るという話で

「じゃあ、うちに泊まりなよ!」と言い、盛り上がっていた。


その話をマサが聞きつけ・・・


「じゃあ、俺が北海道に行った時も泊めてくれない?」と話に割って入ってきた。


「さすがにそれは、、、ちょっと、、、、」


「だっていいじゃない?カオルだって泊めてもらったんでしょ?

 逢ってすぐなのに?」


嫌味っぽくマサは平然と言った。


向かえの席で聞いていたヤスが


「おい。そんな言い方はちょっとどうかと思うぞ?」とそれでも笑いながらやんわりと

マサに注意を促した。



ヒデも話に入ってきて

「そうだよ。リオとカオルはその前から仲が良かったんだし、

 それもあって会いにいったんだから、そんな言い方するなよ」とヒデにしては真面目な顔で言った。


ちょっと場の空気が悪くなった。


マサはそれでも悪びれもせずに


「だって本当のことじゃん。逢って1日2日でヤッたんだろ?

 うまいことやったよな〜カオルは。それ知ってたら

 俺が先に行ったよ。そうしたら今頃は俺と付き合ってるかもよ?」




(・・・・・プチッ!)





目の前で大きな声でそんなことを言ったマサに瞬間的に手が動いてしまった。




パシンッ!




マサは驚いた顔をしながら叩かれた頬に手を当て、無言であたしを見ていた。

その場のみんなも。


「確かにそうかもしれないけど、なにも知らないくせに、、、

 そんな軽い言い方しないで!あんたが先に来たってあたしは

 絶対会ったりしなかった!カオルだから会ったの。勘違いしないで!」


そう言ってマサから離れた。


とてつもなく場の雰囲気が悪くなり、シーンとした。


なにげにカオルの顔が目に入った。

下を向いていたが、前髪の隙間から笑いを堪えているのが見えた。



「俺。今日はもう帰るわ。じゃ」とマサはそのまま帰っていった。



しばらくしてヒデがポツリと。


「マサの顔・・・手のひらの跡がついてたな。

 俺もリオを怒らすの気をつけるよ。カオルも気をつけろよ」



その言葉にラビが大笑いをし、他の面子も「プッ!」と吹き出しいつの間にか

場は大笑いになっていた。


その後、ラビが

「あの人、私にもサクラにも食事行こうって電話してきてるの。

 リオにもしたんだよ?なんだろね?変な人!」と怒っていた。




「なんとなく女を捜すのに必死な感じだもんな、、、あいつ。

 ちょっとヤバそうだな。自分のこと何も話さないしな」とヤスが言った。



「部屋に入ってきても女が少ないとすぐ落ちるしな。

 でも、もう来ないんじゃない?あの(パチーン!)で」とケイタが言った。



「もう来なくていいよ」

カオルは爽快な顔をしてタバコの煙を上に大きく吐き出していた。


「そうだな。結果的には俺達の部屋って今はこうして色恋沙汰が充満しているけど、

当初はそんなこと考えてもいなかったもんな。それ目的で来られるのは困るしな。

これで良かったんじゃね?目も覚めただろ、あのビンタで・・」

ヤスがニヤリとしてあたしを見ながら笑った。





それからはマサの話は誰もしないで、その場を楽しく過ごした。

ちょっと可哀相だったかなとも思ったが、もういまさら

そんなことを言っても遅いので黙っていた。


あそこまで力いっぱい叩いた人が言う台詞では無いな・・・と。


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