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勝利の報酬

試合は10時からだったので、ゆっくりと8時まで眠っていられた。


一緒に試合をするグランドに行き、観客席で座って始まるのを待っていると、

カオルの同僚という人が数人挨拶に来た。

少し緊張をしながらも、愛想良く笑顔で無難に挨拶をし、やっと一人になり

ホッとしながらグラウンドを見つめていた。



沢山いるカオルの会社の人の中にさっきから黙ってあたしのことを見ている女の人の

視線を感じた。それも刺すくらい痛い視線・・・


挨拶をする訳でもなく、ただ黙って・・・

(なんか怖いな・・・この人・・・)


そこにグランドからカオルが走ってきて「ジャージ持ってて〜」と手を振った。


するとその女の子がカオルの前で手を出していた。

行きそびれたあたしは、その光景を黙って見ているしか無く、

その人は一言、二言カオルと言葉を交わし、クルリと背を向けどこかに歩いていってしまった。

カオルは手招きをしてあたしを呼び、ジャージを渡すと駆けていった。

それを見て、同僚と言う祐子さんが



「あの子ね。矢吹君のこと好きみたいなの。今日彼女が来るって聞いて昨日から機嫌が悪くて、、、でも気にしないでいいわよ。矢吹君はその気無いみたいだから」

と気にかけてくれるように説明してくれた。


「そうなんですか・・・・」そう言ってその子のほうを見た。

その子は黙ってカオルの姿を目で追っていた。



「矢吹君とはどこで出会ったの?」いきなり祐子さんが聞いてきた。

すぐに答えることはできなかった。「インターネットで」と言う勇気が無かったし、

言うと変な目で見られそうだったから。



「あ。あたしの友達の紹介で」

「そうなんだ〜」と人の良さそうな祐子さんはそれを信じた。

「矢吹君て無口なほうだけど優しいから、結構モテるのよ?あ、試合始まるわよ!」



試合が始まり何度かカオルがシュートを決めようとするシーンがあったが

なかなか点数が入らず0−0で前半が終わった。


後半までのハーフタイムにカオルが側に来て「ゴール決めたらどうする?」と聞いていた。


「そうだなぁ・・・・なんでもいうこと聞いてあげる」

「忘れるなよ!」カオルは人差し指であたしを指しグランドに消えていった。



後半が始まりどっちもなかなかゴールが決まらないままロスタイムになり

祐子さんが隣で「うちのチーム弱いのねぇ・・・」とため息をついた。

たしかに見ていて抜群にうまい人がいなかった。

カオルも下手ではないが、何度となくボールをとられていた。



このまま引き分けでPKってとこかな、、と思っていた時、

このチームしては最高のパスがカオルに渡り、そのままゴールが決まった。


祐子さんが隣で「やったー!」とあたしの背中を叩き、ガッツポーズをした。


カオルはこっちを見て親指を立てていた。


「まゆちゃんもしかしたら勝利の女神かもね〜!明日の試合も来るんでしょ?」

「はい。明日も勝てますかね?」

「矢吹君が張り切ってるから勝てるかもね?いつもはバテバテだから・・・」



試合の後は明日に備えて早めにみんな解散した。

すれ違う人達はみんなカオルに

「10試合ぶりくらいじゃね?お前のゴール?」とからかっていた。

「彼女が見に来てると動きが違うな!」と冷やかす人もいた。



また遠くからさっきの女の人がこっちを見ていた。

そんなに睨まれてもなぁ・・・・・

そう思いながらそっちを見ないようにして帰った。

家について「絶対ゴールできないと思ってた」と笑うと、



「報酬があると俺デキる子なの!」と言ってさっきの話を蒸し返した。

「あ・・・報酬てあの「なんでも」ってやつ?」

「当たり前じゃん。忘れたとは言わせない!」

「忘れてないけどさ、、、で。なにがいいの?」

「それは今は言えない・・・ふっふっふ」


意味ありげな言い方をして浴室に消えていった。



シャワーから出たカオルにさっきの女の人の話をすると、平気な顔をして

「あ〜前からね。でも全然タイプでもなければ興味も無いし」

と言い顔色ひとつ変えずにTVを見ていた。


「でも、悪い気はしない・・・てヤツ?」

「マサに思われて悪い気しない?」

「悪い気する・・・」

「それと同じ」



なんとなくあの人が可哀相になった。

別になんの取柄がある訳でもないあたしがカオルの隣にいて、

彼女はただ見ているだけしかできないことが気の毒にもなった。


食事を終え、なんとなくTVを見て過ごした。

時計を見ると9時少し過ぎになろうとしている時間だった。


「今日はネットしないよ」

カオルはそう言い二階にあがって行き、とくに見たいTVがある訳でもないので一緒に二階にあがりCDを聞きながら話をしていた。


「さてと!じゃあ報酬もらおうかな!」

そう言って部屋の電気を消してベットの横にあるスタンドをつけた。


不思議そうにカオルを見ていると、サッとTシャツを脱ぎベットに座った。

そして座っている隣のスペースをポンポン!と叩き座るように目で合図した。



「もしかして、、、やっぱりこっち関係のことなんだ・・・」

「それ以外になにがー??」


外人並みにオーバーアクションをしながら驚いた芝居をしているカオルを

少しだけ引いた目をして見ていた。



「なんでもって言うから〜SMとかしちゃおうかな〜」



そんな趣味あるんだ!!!

悪いけどさすがにそれはちょっと困る。

あれはかなりそっちに興味が無いとできないでしょ??


かなり引いた顔をしてカオルを見ていると、

「それは嘘」とニヤリと笑った。



「取り合えず横になりなさい。話はそれから」

ちょっと偉そうに言うカオルに不審な顔をしながらもベットに横になりカオルの行動を見ていた。


静かに横になり、小さく耳元で、

「今日は、なんでも言うこと聞くんだよな?」と再度確認をしてきた。


「ど、、どんなこと?痛いのとか、、嫌なんだけど」

「痛くは無いよ。気持ちいい〜こと」

そう言って静かに服を脱がせようするカオルに慌てて、


「ちょ、、電気!」とベットの横のスタンドを見ながら言った。


「なんでも言うこときくんだろ?」

「いや、、だから、、まずは電気消して!」

「だ〜め。今日はこのまま・・・」


それ以上、何も言えないように口を塞がれ、スルスルと服を脱がされた。


「明るいの嫌ぁー!」

「どうして嫌なの?」

「見えちゃうもん・・・」

「見たいんだけど・・・」


困った顔をしてカオルを見つめると、

「いつも電気消してって言うだろ?俺さ、こっちに帰ってからまゆを思い出そうとしても

いつも何かが足りないなって思ってたんだよ。その原因がアレ」


そう言ってスタンドを親指で指差した。


「見えないから思い出せないんだ。腕の中のまゆを見ていたんだ。いいだろ?」

「でも・・・」

「どうして嫌?」

「だって、、変な顔するかもしれないもん」

「変なって・・・」


笑いだすカオルに「だって、、、頭の中が真っ白な時に気にしてられないもん!」と

膨れた顔をした。


「大丈夫。変な顔なんかしないよ。きっと、もっと好きになると思う」


そう言って優しく唇を重ねた。



(もっと好きになると思う・・・)



その言葉を聞いて、それ以上電気を消してとは言わなかった。



薄暗い明かりの中で真面目な顔しているカオルを見るのはいつもと違った感じがした。


感じている顔を見られるのが嫌で横に顔をそらせても、すぐ顔を正面に戻される。

ボンヤリ見えるカオルの上半身を薄っすら開けた目で見ると、

割れた腹筋も見た目よりも厚い胸板も格好よく見えた。


アゴをつたう汗も、胸の汗も・・・・


いつもより何倍も感じたような気がした。


そして、、自分の中でもそんな時のカオルを見て、

(もっと好きになるって・・本当かも)と頭の中で思った。


恥ずかしい気持ちは十分あったけれど、ありのままの自分を見て欲しいという

いままでに無かった気持ちが生まれた。

いまいち開放的になれなかった自分が変われたキッカケになった夜だった。



終わった後に


「ねぇ。知ってた?」と言ってカオルは背中を見せた。


小さくミミズ腫れができていた。


「ごめん・・・・知らなかった・・・」

「だと思った・・・・」と言ってシャツを着た。


「無意識に爪たてられるくらい俺って凄い?」


「エロオヤジ発言するカオルはあまり好きじゃない!」

そういって背中を向けて寝た。


「どっちも好きなくせに〜」と言いながら、いつものように

背中越しにくっ付いて眠った。


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