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ラビとヒデ

カオルの家に来て3日目。

朝はご飯を作って仕事に行くカオルを送り出し、

簡単に掃除や洗濯をして夫婦ゴッコのような日を楽しんでいた。


きっと新婚てこんな感じなんだろうな・・・

仕事から帰ってくるカオルはいつも急いで階段を駆け上がり、

息を弾ませて中に駆け込み


「ただいまぁー!」と笑顔で微笑む顔を見て小さいことだけど

(幸せだな・・・)って感じた。


その日も部屋の中でDVDを見ながらカオルの帰りを待っていると携帯が鳴った。

また数字ばかりが画面に並び、なんとなくマサのような気がした。


「もしもし・・・」

「あ。マサだけど。今いい?」

「あ・・うん。なにか?」

「いや、東京のどこにいるのかなと思って」

「友達の家に泊まってるの。週末その友達と予定があるし」

「そうなんだ?週末以外は用事無いの?」

「そんなことないけど。でもみんなとは日曜の夜にってことになったの聞いた?」

「聞いたけど、二人で食事でもいかない?」

「それはちょっと・・・・」

「考えておいてよ。また電話するから」




考えるも考えないも・・・

困ったなぁ。そんなつもりまったく無いのに。



7時半を過ぎた頃にカオルが帰ってきた。

ご飯を食べながらその話をすると、「で、どうすんの?」と言った。


「会うわけないじゃない!今度電話きたらハッキリ言うよ」

「そっか・・・・」


カオルはそれ以上、その話はしなかった。





その日の夜。

カオルがチャットをしているのを後ろから見ていた。

レナはあの話を聞いてからほとんどヤスに話し掛けていなく、

それとは逆にカオルに集中して会話を振っていた。

懲りない人だなぁ・・・・と思いながらレナの文字を見ていた。




<レナ> 「カオルは今好きな子とかおるん?」


<カオル> 「あぁ。いるよ」


<レナ> 「ほんま?付き合ってるの?」


<カオル> 「うん。付き合ってる。今も部屋にいる」




それを見て「いいの?」と聞くと

「いいんじゃない?」と普通の顔で言った。


他のメンバーも

「えー。そうなの?どんな子?」とか

「いつのまにー」などとワイワイと騒いでいた。


そこにはマサもいた。




<マサ> 「なーんだ。彼女いるならリオのことは関係無いんだ?」



<カオル> 「別にそうとは言ってないけど」



<マサ> 「だって彼女が今、部屋にいるんだろ?ならいいじゃん」



<カオル> 「その彼女が本人だったら?」



<マサ> 「え?もしかしてリオが彼女ってこと?」




その文字のやり取りを見て、みんなが大騒ぎになった。




<ラビ> 「そこにリオいるのー?」


<レナ> 「嘘やろ?本当に?」


<ヒデ> 「まじで?そこにいるの?」




「あらら・・・大騒ぎになっちゃった」

それほど驚きもしない顔で画面を見つめながらカオルが呟いていた。

あたしはそんな部屋の大騒ぎに動揺しながらも、目の前で平然な顔をしている

カオルを見て、何も言えずに黙っていた。


こっちではさっそく携帯にレナから電話が入った。


「もしもし?」

「リオ、今どこにおるん?」

「あー。東京に・・・・・」

「それは知ってる!隣にカオルおるん?」

「えーと、、、うん。ごめん言わなくて」

「そうなんや?まぁ、前から気にいっとったもんな」



そんな会話をしばらくして電話を切った。

画面を見るとレナが電話をしたらやっぱりカオルのところにいた!

と文字を打っていた。


みんなは

「いつから?」

「やっぱり先月の札幌で?」

「いつから来てるの?」とどんどん質問を打ってきた。


それにカオルは返信する言葉を声に出しながら、、


「一ヶ月くらい前から」

「そうそう」

「木曜の夜から来てるよ」などと返信した。


本当にバラしちゃってよかったのかな?

みんな気まずくならないかな?そう心配をしながら画面を見ていた。


すると急にマサがみんなに


<マサ>「僕も彼女欲しいから、誰か紹介してくださいね。ヤスとカオルもアドバイスしてくれな。」


と平然と出していた。


それを見てカオルが

「俺。こいつやっぱり気にいらねぇ」と呟いていた。



「でもこれで問題無いんじゃない?あたしもレナが暴走する心配無いし」

「されても俺はヤスみたいに優しく電話には付き合わないけどね」


なんとなく・・・カオルはそんな感じがする。

普段無口な分、本当にノリ気じゃないとまったく口を開かない人だから・・・


カオルがチャットを終わろうとすると、他のメンバーが



<ヒデ> 「おい!一人だけいいおもいはさせないぞ!まだ落ちるな!」


<ラビ> 「きゃ〜 エッチ〜」


<ヤス> 「いや、昨日もうとっくにヤッてるだろよ」




などと妄想全開で話が進んでいた。


「だから昨日はヤッてねぇって」とブツブツ言いながら

カオルは返信していた。

さすがにそれは書き込んではいなかったけど。




<カオル> 「いや。俺、明日は仕事なんだよ。だからもう寝ようと思って」


<ジィ> 「そうなのか?休みじゃないの?」


<カオル> 「うん。お盆の休み以外は後回しになったから」


<ラビ> 「じゃあリオは昼間一人なの?」


<カオル> 「そう。楽しくやってるらしいよ」


<ラビ> 「えー。じゃあ私明日休みだから会いたいなー」





「ラビが会いたいって。どうする?」

「場所がよくわかんないなー」


カオルはラビにそのことを伝えるとラビが迎えに来てくれることになった。

それを見てヒデが「俺もー!」と言い出し、明日ラビとヒデが家に来ることになった。



「いい暇つぶしになるんじゃない?俺明日は8時くらいになるし」

「うん。どこか行くならそれまでには帰ってくるね」



突然に明日の予定が入った。

詳しい住所はカオルがチャットを終えた後、ラビにメールを送った。



「じゃ。もう1時だし寝ようか」

「うん。そうだね」






「これでマサってやつ諦めたみたいだな」

カオルが布団に入ってから言った。


「そうみたいだね。でもどっちにしろ行かなかったけどね」


「あいつどっかの有名スポーツクラブのインストラクターだって言ってた。体が自慢でとか言ってたし・・・見るからにそんな感じだったし」


「ふーん」

「そういうのって女の子は好きだったりするんじゃないの?」

「そういうのって?筋肉ムキムキってこと?」

「うん。格好いいじゃん。インストラクターなんて?」

「そう?」

「そうでもない?」

「別に興味無いかなぁ?」

「そっか・・・・」

「どうしたの?あたしがあの人のこと好きになるかもとか思ってる?」

「いや?そんなこと無いけどさ・・・」

「変なの・・・」



そう言って布団をかぶって目を瞑った。

しばらくお互いなにも言わずに黙っていた。



「ねぇ?明日何時に起きるんだっけ?」

「え?いつも通りに7時半だよ?」

「今が・・・・1時半かぁ。6時間しか寝れないね」

「うん?まぁ、、、そうだな」

「5時間でも大丈夫?」

「4時間でも大丈夫!」



そう言ってカオルはあたしが言った言葉の意味を理解した。

仲直りにはこれが一番と聞いたことがある。

確かにそうだと思った。


結局、その日の睡眠時間は4時間半になり、

思っていたより朝はすんなり起きれた。

カオルはギリギリまで寝ていたけれど・・・



「今日は早く寝ようね」そう言って笑うと

「うん・・・・そうしようね」と言って眠そうな顔をして出ていった。



10時くらいにラビから携帯に連絡が入り、

もう近くまで来ているようだった。

しばらくすると、チャイムが鳴り、

小さい窓から覗くと手を振っているラビがそこにいた。


ドアを開けると


「りオー!会いたかった〜」と抱きついてきた。

ちょっと驚いたけど、ラビの印象からしてそれも許されると思った。


「入る?カオルいないけど・・・・お茶でも飲んでから出かけようか?」

「うん!カオルの部屋も見てみたい!ほら、ヒデ早く!」


後ろから体格のガッチリした男の人が入ってきた。

ラビとの身長差が軽く30センチ以上あった。


「あ。ヒデ?初めまして〜」


「こんにちは〜」

ちょっと緊張した顔でヒデが挨拶をした。


二人を部屋に入れ、珈琲をおとしていた。

それを見てラビが「なんかリオの家みたい」と笑った。


「だって昼間、黙って家にいるんだもん、、、だいたいの物の場所とか分っちゃったよ・・・・」

「いいなぁ・・・なんかこーゆーの」

 

ヒデがそう言いながら部屋の中を見ていた。


それから3人で珈琲を飲みながら話をした。

ほとんどがあたしとカオルのことだったけど、前日に逢いに来たことや

最初から同じ部屋に泊まったことなどは言わなかった。


なんとなく、、、ひかれてしまうんじゃないかと思う、あの日の自分の行動に

さすがに言えないと思い自然と隠してしまった。



「でもさリオ。遠距離って淋しくない?」

「う〜ん・・・ちょっとはね。でも最初から分かっていたし」

「そうだけど・・。でもまだ付き合ったばかりなら、一緒にいたいじゃない〜」

「でも、その分久しぶりに逢えた時はとっても嬉しいよ!」


ニッコリと微笑むあたしの顔を見て二人は同時に、

「ごちそうさまでした〜」と冷やかしたように笑っていた。


「でも意外だったなー カオルとリオなんて俺、全然想像してなかったよ」

「そうだよねー 前のオフ会でもカオルって静かだったしね」




「でも、夏の海では大活躍だったんでしょ?カオルは」

「あ・・・・・もしかしてこの前のチャットの時・・・居たんだよね?」

「うん。しっかりね。それもあたしが画面の前で打ってたの」

「うわ・・・・ だってそうとは思わないじゃん・・・・」



そのことについてカオルはなにか言ってた?と聞かれたが、

別に?と言うとなるほど・・・・という顔をしてヒデは黙って珈琲を飲んでいた。


この意味深な顔に対して質問をしようか迷ったが、

また知らなくてもいいことを知ってしまいそうなのでなにも言わなかった。


そこにお昼休みのカオルから電話がきた。

「みんな無事ついた?」

「うん。今、うちでお茶飲んでるよ」


その言葉を後ろで聞きラビとヒデは(お邪魔してま〜す)と

電話のほうに向かって言った。


「俺、今日は7時くらいまでには帰れると思うんだ」

「あ。そうなの?じゃあご飯用意しておくね。なに食べたい?」

「うーん。簡単なものでいいよ。あ!なんならラビもヒデも一緒に食っていけば?」



そう言われてラビとヒデに言うと(いいの?わーい!)と喜んでいた。



「じゃ、みんなで待ってるね。気をつけて帰ってきてね」



そう言って電話を切ると二人はニヤニヤしながらこっちを見ていた。


「新婚さんみたい〜〜〜〜」

「俺もきいてもらいてぇー「なに食べたい?」って」

「ヒデ、なに食べたい?なんでもいいよ?」


そう言うと真剣に時間をかけ献立を考えていた。


その姿を見てラビが小さい声で

「普段そんなこと言われないから必死だ・・・」と言って笑った。


それから3人で近くのスーパーに買い物に行った。

カートを押しながらヒデは(いいな〜・・・こんなの。

俺も彼女とこんな風に買い物したい)と遠くを見ながら呟いていた。

それを見てラビとゲラゲラ笑った。


ヒデのリクエストに答えながらラビと二人でキッチンに立ち夕食の支度にとりかかり、

ヒデはTVを見ながらビールを飲んでいた。


7時ちょっと過ぎた頃にカオルが帰ってきた。



「あ〜ん。旦那様お帰りなさ〜い」とヒデがカオルに抱きつき

「気持ち悪いから・・・・」とカオルが突き飛ばして笑った。



そして4人で楽しく食事をした。

カオルとラビとヒデは以前会ったこともあるし、

とても仲良く話しをしていた。

元々、関東の男性達は気の合う人同士、ちょっと遊んだりもしていたようだし。

あたしも昼間からずーと一緒だったので違和感無く過ごした。


そんな時、ラビが


「私ね。マサって人から食事に行こうって誘われたの。でも怖くて断ったけどね」

「え?ラビも?」とカオルが言った。

「え・・・・カオルも?・・・・・」とヒデがカオルを見ていった。

「そんな訳ねーだろ・・・・まゆだよ。昨日の夜に電話きたんだよ」


電話が来たことよりもカオルが「まゆ」と呼んだことのほうに

衝撃を受けたヒデが、


「まゆって呼んでるんだ・・・・・・ なんか、、、生々しい」

「お前、、、真面目に話する気あるか?」とカオルはヒデの頭を叩いた。



「やっぱりさ、、、ネットの中っていろんな人がいるよな。レナのことにしてもそのマサって人に関してもさ。怖いよな〜 」

やっとマトモな意見をヒデが言った。



「そうだよな。不思議なもんだよなぁ・・・・」とカオルが言うと

「ねぇ?カオルに会う時怖かった?」とラビが聞いてきた。


「うーん?そうでもなかったかな?電話とかもしていたし」

「そうなんだー なんかドキドキした?」と更に目をキラキラさせた。

「それは、、うん」

 

目の前に本人がいるのにそんなことを聞かれるとは思っていなかった。

「で?で?」ラビとヒデは身を乗り出して聞いていた。



「俺は「あぁ。この子と俺は付き合うな」と思った」

カオルが真面目な顔をして言うと横でラビが「キャー」と声をだし、

それを見てみんなで笑った。




「なんか二人とも幸せそうだな〜」ラビが羨ましそうに言った。


そんな風に言われるのはくすぐったいような気がした。


「あーぁ。今年は海でカオルのナンパ術が見れないのは残念だな〜」

ヒデが言うとカオルは慌ててヒデの口を押さえた。


「そんなにカオルはナンパが上手なの?」ラビが聞くとカオルは慌てて

「そんなこと無いよ。全然」と作り笑顔で答えた。




「こいつさ〜手馴れたもんだぜ?「あれ?この前スタバで会ったよね?俺の隣に座ってたでしょ?」とか言っちゃってさ。そんな古い手引っかかる奴いないと思ったら、

これがまた!相手も「え?そうだった?」とかって話に乗る訳よ。

で、そこにヤスが言ってくだらない話で盛り上げて、仲良くなったら俺達が合流。

そんなんで結構、去年はいい思いしたよな?カオル?」



ヒデが一気に暴露し、カオルはこっちを見ながら

「まずい・・・・」という顔をしていた。


「ふーん。でもそんな自然な感じのほうが話やすいかもね〜」

とラビが言った。


「もっと凄い話したいけど、もうやめとく〜 後からカオルに殺されるから〜」

そう言って再度、カオルに頭を叩かれていた。



10時を過ぎた頃、「じゃ。日曜ね」」と言ってラビとヒデは帰っていった。



二人で食器を洗っていると・・・


「あの。さっきの話さ。そんなに気にしてないよね?」

探った目でカオルがこっちを見た。



「なんの話?ナンパの話?」

「そう・・・」

「そうだなぁ。これ以上聞くと一人の時に心配になるからもう聞かない」


「いや。心配させるようなことはしないって。ほんと!

 俺、浮気とかしたことないんだって。だって去年は彼女いなかったしさ」


「なら。信じる。だって離れてるから信じることくらいしかできないもん。

 でも、、、、、、、もしも浮気したら・・・それが一度でも絶対ダメ。

 その時はどんなに謝っても許さない。二度とカオルとは会わない!」



そう言ってまた食器を洗った。



「そんなこと言うなよぉ・・・・ いや、浮気なんかする気ないけどさ。

「二度と会わない」なんて言うなよ。今っすっげぇ落ち込んだ」



そう言って後ろから抱き付いて髪に顔を埋めた。

その姿がとても可愛いと感じた。


大人っぽい所があったり、子供っぽい所があったり。

一緒にいればいるほどカオルのことが好きになった。


「今日は早く寝るって言ってたじゃない。明日試合でしょ。早くお風呂入ったら?」

「そうだな。一緒に入らない?」


「いや!早く入っちゃいなさい!」と言うと 

「は〜い」とカオルは一人で浴室に消えていった。


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