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元の生活に

次の日、なかなか目が覚めなかった。

薄く目を開け隣を見るとカオルはまだ熟睡していた。


その顔を見ながら少しずつ眠った頭を起こした。


普段のカオルとセックスしている時のカオルの違いを思い出しながら・・・

そして昨日の夜の自分を思い出し恥ずかしくなった。

いままで経験はあったが昨日ほど感じたことが無かった。


そのうちカオルが目を覚まし。


「おはよ・・・」と言いながら優しく髪を指に絡めながらニヤついた。


「ベットの中のまゆは可愛いよな。普段と全然違う」と言いながら

たぶん昨日のことを思い返しているような顔をした。


「ベットの中のカオルはイヤらしいよね。普段と全然違う」

と言い返した。


「男はみんなそんなもんだって。でも性格の相性があるように

 体の相性もあるんだなーって思ったよ。昨日すっごくよかった」

と言い抱き寄せて髪を撫でた。


「うん・・・あたしもあんなに良かったの始めて」

「お世辞じゃなくて?」

「うん・・・」



またそんな雰囲気になりそうだったがチェックアウトの時間が

迫っていたので、ベットから出た。


ホテルを出て車からヤスに電話をしたが、寝ているのか電話は繋がらず、

いつまでも呼び出し音が響いていた。



「今日はどうしようか?」

「う〜ん・・・明日帰るんだよね?」

「うん。明日の最終にな」

「じゃあ、今日はうちに泊まる?」

「え?いいの?」

「うん。いいよ。じゃ行こうか!」



結局、あたし達は観光なんかそっちのけで、そのまま家に向かって車を出発した。

明日帰ってしまったら、今度はいつ会えるか分らない。

そう遠くはないだろうが、普通のカップルのようには会えないと思うと、

この短い時間で自分のことをできるだけ知って欲しかった。



カオルは部屋に入り落ち着かない様子で辺りをキョロキョロして見た。


まだ時間は早かったので、

せっかくだからそこらを散歩でもする?と言うと

そうしようか!と言って二人で外に出た。


普段は来たことが無い近くの公園や、車でしか通ったことの無い道を二人で歩いた。

きっとカオルが帰った後、あたしはこの道を通る度に思い出すだろう。

そんなことを思いながら隣にいるカオルの横顔を見ながら歩いた。


「夏休みってどれくらいあるの?」

カオルがジュースを買いながら聞いてきた。


「うーん・・・だいたいみんなお盆前後に有給を使って1週間くらい

 かな? どうして?」


「いや、今度会えるならその休みかなってさ・・・」


「そっかぁ・・・ちょっと遠い話だね」


まだ1ヶ月とちょっとあった。

それまで会えないのか・・・

遠距離ってこんなもんなんだなと思った。

自分には縁の無いことだと思っていたが、実際そうなるととても寂しいものなんだと感じた。


「それまではまた字でしか会えないんだな・・・」

「いままでそうだったのに、会ってしまうと物足りないね」


そう言って二人で笑った。



その夜、ベットに入って朝まで延々と話をした。

いくら話しても話は尽きないような気がした。

体を重ね、また話をし、まだ何度となく求め合った。

眠りについた頃にはもう空は明るかった。


昼過ぎまで眠り、夕方まで家で過ごし重い足取りで空港に向かった。

空港の道を示す標識が見えるとお互い無口になった。

何か言葉にすると先に涙が出そうになるのを我慢しながらカウンターに向かうカオルを見ていた。


いざ別れが近づくとこんなにも悲しくなる自分に驚いた。

カウンターから戻ったカオルは覗き込むようにあたしの顔を見て


「泣いちゃいそう?」と悪戯っぽく聞いた。


「ううん・・・大丈夫」と頑張って笑顔で答えた。


「ここで映画のようにキスの一つもしたいとこだけど、 

 俺、そんなとこ硬派だから人前ではできないな〜」

と笑わせようとしていた。


カオルが時計を見て搭乗時間を確認した姿に、自然と涙が出た。

見られないようにサッと隠したがシッカリと見られてしまった。


「泣かないでよ。そんな泣いた子置いて行くの辛いじゃん・・・」

寂しそうな顔で言うカオルの顔を見たら、我慢していた涙がどんどん出てきた。


「また・・・会えるよね?」

「何言ってんだよ・・。会えるに決まってるだろ?なに心配してんだよ」

「そうだけど・・・」


いつも彼氏という存在は会いたい時にいつでも会えるという経験しか無いあたしには

これから遠くに行ってしまうカオルにどんな顔をしていいのか分からなかった。


搭乗手続きの入り口には他にも別れを惜しむカップルの姿が何組かあり、

その中に偶然にもヤスとミライの姿を見つけた。


「あ。。。。ヤス達だ!」そう言うとカオルも振り向き


「同じ飛行機なら連絡くらいすれよな、、、アイツ」

と言いながら二人を見ていた。


周りの人の目などまったく気にせずにヤス達はベッタリと寄り添い

何度もキスをしながら手を繋いでいた。


「わ・・・・」

二人で同時にその言葉を言いながら、ヤス達を見ていた。


だんだん人が少なくなり、もう乗り込まなければならない時間になり

泣くのも忘れてヤス達を見ていた。


「じゃ。着いたら電話する。帰り道気をつけろよ?」

そう言って一瞬だけ素早く頬にキスをしてカオルは搭乗手続きの

入り口に走って行き途中、鞄でヤスの頭を叩いた。


カオルに気がつきヤスがこっちを見て手を振った。

その姿でミライもあたしに気がつき、ヤスに別れをいうとこっちに歩いてきた。


ミライの目は真っ赤だった。

あたしの顔を見た瞬間、ミライは大泣きした。

その姿を見て、こっちが泣くどころじゃ無くなり、手続きを終え

扉の向こうに消えるカオルに手を振るのが精一杯だった。


その姿を見てカオルはニコリと笑い、ヤスは

「後はよろしく」と言う顔をして手を振りながら消えていった。



その後、ミライと屋上に出て飛行機を見送った。

その間じゅうミライは泣きっぱなしだった。

どう慰めればいいか困りながらレズカップルのように抱き合ってることが

他の人に変な目で映らないか心配だった・・・



「毎回、空港に来てこの瞬間が一番イヤ!」そう言ってミライはいつまでも泣いた。

飛行機が飛び立ってしまった後に、ミライが落ち着くまで

喫茶店に入り珈琲を飲んだ。1時間くらい経った辺りで

やっと涙が止まったミライに「大丈夫?」と聞くと

「うん・・・」とまだ目に涙を浮かべながら小さく答えた。



「リオは平気だったの?」グズグズと鼻をすすりながら聞くミライに


「そんなことないよ。さっきまでちょっと泣いてたもん」


「そうなんだ、、、カオルも笑顔だったしそうでも無かったのかと

 思っちゃった」




十分、ヤスも笑顔だったけどね・・・・



ミライが普通に戻り、お互い明日の仕事もあるから

そろそろ帰ろうか?と話をしていたら電話が鳴った。

着信画面を見たらカオルだった。


「もしもし?」

「あ。まゆ?俺。今着いたんだけど・・・もう家?」

「ううん・・・まだ空港・・・・」

「えっ!なにしてんの?」

「だって、、ミライが、、、、」


その時、ミライの携帯にも着信があった。

隣で電話に出ながらまた泣いていた。


「やばい、、、ヤスの電話でまた泣き出したよ・・・」

そう聞いて電話の向こうでカオルは大笑いをしていた。


こっちとしては笑い事では無かった。

もう帰りたいんだけど。。

そのままミライをその場に置いて帰りたかったが、

さすがに可哀相に思い、一旦電話を切りカオルに折り返し連絡をすると伝え、

ミライを車まで送った。




なんとかミライを車に乗せ、別れをいい帰路についた。


30分も走った頃、ヤスから電話がきた。

車を停め、電話に出ると


「いや〜悪かったな〜。でも助かったよ。いつも大変なんだ」と

それほど悪そうでも無い感じでヘラヘラ笑っていた。


「うん。大変だったよ〜」とヤスが消えた後のことを教えた。


「毎回、大変だから今日は家にいろって言ったんだけどなぁ」


「それもまた悲しいじゃない。いいんじゃない?」


「そういや。お前達もウマくいったんだってな。よかったな」


「ん。でも部屋のみんなには言わないでおこうってことにしたんだ。

 下手に気を使われたら嫌だしね。だからバレるまで内緒にね」


「そうなんだ?そんなに気を使うことねーじゃん。

 ま。二人がそうしたいならいいけどよ。じゃ、気をつけてな」


そう言って電話を切った。


家に戻り、電気の消えた部屋に入るとさっきの寂しさが一気に戻ってきた。

木曜の朝までは誰もいなくてもなにも感じなかった部屋なのに、

今は一人でいるのが悲しかった。


着替えをしてお風呂に入り、髪を乾かしていたら電話が鳴った。

カオルからだった。


「ごめん。先にお風呂入ってた」

「うん。そうかと思ったんだけど心配だったから」

「なんだか長い4日間だったね」

「本当だな・・・今日一人で寝るのがなんか寂しいよ」

「あたしも・・・・」

「ここ数日、ネットのみんなに会ってないし今日は行ってみるかな」

「うん。そうだね。じゃ、また後で」



そう言って、いつもの生活に戻った。

たった4日間のことだったが、そうとは思えないほど長い時間だった。


そしていつのもようにチャットをした。


さっきまで泣いていたミライも、ヘラヘラしていたヤスもいた。


そして昨日は側にいたカオルもそこにはいた。

カオルの出す文字を見る度にそこには前のような字だけでは無く、

薄っすらとその言葉を言うカオルの顔が浮かんだ。


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