出会い(5)
カラン、カランと可愛らしく鐘の音が鳴る。それは来客の合図だが、こんな朝早くに来客は来ない。なぜなら、村の皆はカフェが開く時間を知っているからだ。
「おはよう、ライト」
「おはようございます」
鐘が鳴ったのをしってか、ライトの前にあるカウンターの越しに立っているおばちゃんは、ライトに挨拶をする。宿屋兼酒場……と、言っても朝と昼はカフェのオーナーである。ライトは、カフェのホールスタッフで働いている。
「今日も頑張ってね」
「はい……」
おばちゃんから渡された黒のエプロンをライトは着用し、掃除道具が入っているロッカーを開けて、掃除道具を取り出す。箒とちりとりを持って入ってきたドアを開けて、外に出る。
「…………はぁ」
外に出た途端にため息をつけ、ライトは"仕事"を始めた。生活をしていくため、仕事をしなければならないのは、どの世界でも共通である。
「………ん」
サァ、サァと外から聞こえる音で、リッドは瞳を開けた。
(朝早くから、誰だ……)
隣のベッドで寝ているクリスを見て、リッドはため息をつけ、頭を抱える。
(いつもは気品で溢れているのに……)
そういつものクリスは気品に溢れていて、……っぽく見える。見えるのだが……。
(その寝相は如何かと、思います)
さすがのリッドも、落胆せざる得なかった。リッドは「はぁ」と思い出したのか、宿屋の入口の方の窓から外を見る。仕事を終えたのか、そこには、誰もいなかった。
「リッド……」
窓からの差し込む光で、瞳にかかったのか、クリスは上半身を起こし、瞳を擦っている。
「ああ……、すみませんでした。ちょっと気になる音がしていましたので……。それより、起こしましたか?」
「ううん。起きる所だったから……。ふぁ〜」
クリスは眠たそうに欠伸をする。もちろん、口元は右手で覆っている。
「……クリス様。もう少し立ち振る舞って下さい……」
「い、いいじゃない。今はそんなの関係ないじゃない!」
リッドの言いたい事は、クリスも理解しているつもりだ。だけど、してしまうものは仕方がない。
「……まぁ。そうですけど、クリス様は仮にもラグクラフト大陸の第一王女です。流石にシーツから足を出して寝るのは如何かと思います」
「……ソレを暴露しないでよ!」
流石のクリスも顔を真っ赤にして、リッドに怒鳴りつける。クリスも自分が寝相が悪いのは知っている。
「は、はい……」
クリスの怒鳴りつけでシュンとなる。