Where have you gone?
時はずっと止まったまま。
貴方に会うまで動かない。
[없다(オプタ)]
月日が流れる。今どうしているだろうか。
私はこんなに大きくなって、貴方はきっともっと大きい背中で今を生きているんだろう。
この狭いような広い世界ですれ違えば、きっと運命なのに。見渡しても目が廻るだけで、私は貴方を見つけることは出来ない。
貴方もここにいることは分かっているのに、影を踏み留めることは出来ずにいる。渋谷で、新宿で、私はぐるぐると探した。
「どこにもいない」
ここに来れば会えるかもしれないと期待していた。でもそれは違うのかもしれない。もしかしたら貴方はアメリカやヨーロッパに高飛びして、私を避けているのかも。いや、忘れてしまったのか。
「東京にいたら、また会えるよね。私、絶対行くから待ってて」
「うん、待ってる。ずっと東京にいるよ」
そう言っていた二人の姿は、もう15年も昔の姿。好きだった声も姿も変わっているのだろうけど、きっと私は見つけ出す。
だからチャンスくらい下さい。
心の中で祈りながら、友達と一緒にいたり母親と一緒にいる。
私は貴方のことを忘れたフリをしてきた。
「このキーホルダー、誰に貰ったっけ」
そう母に聞かれても「友達?」と答える。だけど何で大切に持ってるかなんて、貴方に貰ったものだからに決まってる。
貴方の好きだった歌を聴きながら、思い出している。
「だけどやっぱり、どこにもいない」
今どうしているのだろうか。あの人が、あの人が、貴方だったらどんなに嬉しいだろうか。
私を照らして、日陰に追いやろうとする太陽が笑っている気がした。
「笑うな」とキッと睨む。どれだけ間違えようと、どれだけ転ぼうと、起き上がってきたのだから、あの生意気な太陽に負けたら恥曝しだ。
探して探して、また一年。そうやって月日すら私の味方にならずに無情に過ぎる。
もう、これ以上は。そう思って何年だろう?だけどずるずると先延ばしで期待を捨てられずにいるのだ。
「もうそろそろ、やめどきなのかもしれなあ」
諦めきれない気持ちを押し殺した。
だけど最後の最後で、女神様は微笑んでくれる。
擦れ違った一人の男性。見たことのあるキーホルダーと懐かしい匂い。
ふと振り返ってみる。そうすれば相手もこっちをみていた。
「「あ、」」
もしかして、と相手が言う。やっぱりそうなんだ。また逢えた。
「……오빠(オッパ)!」
貴方は嬉しそうに笑ってた。
・없다・・・いない、ない
・오빠・・・兄