坂道を占領している犬
朋は学園の横を通る道を進み、学園の裏手にある坂道までやってくる。
その坂道はかなりの急勾配で、一歩、歩くだけでもうんざりしそうな傾斜であった。
道は車が1台通れるぐらいの幅で、学園の裏庭に沿って200m程続いており、そこから山手に曲がっている。学園側は崖になっており、反対側の山手には3件の家が強引に建てられている。
「うー。ここまでじゃ駄目ですか?」
「駄目。私のこの短い足で、ここを登れと言うの?私の家はこの坂を登って、そこを曲がって、まだまだ上にあるのよ。」
「面倒くさいのです。」
「それに、私を追い掛け回した犬はそこを曲がった処にいたの。まだ、いたらどうするの?」
「あうー。イヤな事を聞いたのです。」
朋は坂道を登り始める。
見た目と同じく、一歩登るだけで、疲れる坂道を踏みしめながら登っていく。
『私、絶対ここには住めないな。』
彼女は坂道の曲がり角までやってくる。
曲がり角にある家はコンクリートブロックの壁があり、朋はそこから顔を出し、曲がり角の向こうを覗いた。
そこには、ロットアイラーという筋肉質の大型犬が道に真ん中に座っていた。
朋は頭を引っ込める。
「あうー。犬さんがいたのです。しかも、凄く、怖そうな犬さんなのです。」
「私、ウチここを超えないと、いけないの。人間なら襲わないかもしれないから。早く行ってくださるかしら。」
「無理です。噛まれたらどうするんですか。」
「大丈夫よ。多分。」
「あうー。信用ならないのです。」
朋は、坂道を渋々、歩きはじめた。
朋が見えても犬が動く気配は無い。
彼女は、犬を避ける様に道の端ギリギリを歩きはじめる。
犬は顔をあげ、朋に顔を向ける。
更に歩き続けると、犬が「うー」と、唸りはじめ、「ぼう」と一回吼えた。
『怖いのです。』
無理に歩くと、立ち上がり、「ぼうぼう」と二回吼え、足をピクリと動かした。
朋はパニックになり、後ろを振り返り、坂道を網ダッシュで下りはじめた。
「こら、逃げるな。」
「あうー。無理なのです。」
坂道を下りきって後ろを振り返ると、犬は追いかけてこない。
『どうしよう・・・。』
その時、どこからともなく、声が聞こえてきた。
「おお、魔法少女その2ではないか。こんな処で何しとる?」
そこにいたのは蛙主だった。