振り上げた拳は
昼休みになった。
美由は周りをお嬢様方に取り囲まれていた。
『前にもあったなこの展開・・・。今回は別の方々ばかりだけど。しかも、如何にもお嬢様ばかり。』
彼女達のリーダー格が話しはじめる。
「桜間さん来ていただけるかしら?」
『さて、どうしようか?』
美由はちょっと思案する。そして、ひとつの考えが浮かんだ。
「拒否します。」
それが、彼女が出した答えだった。そして言葉を続ける。
「用があるなら、ここでお願いします。」
その言葉が終わる前に腕をつかまれ、無理やりひぱっられ、立たざるを得なくなる。
「何をするんですか?」
「いいから来るのよ。」
そう言って、二人の人間にそれぞれ片腕をつかまれ、強制連行された。
強制連行された先は裏庭だった。
そこには桐野が猫を見ていた。
桐野は複数の女性に無理やり連れてこられている美由を確認する。
リーダー格の女子が桐野に話しかける。
「すいません、桐野さん。ちょっと、ここから立ち去っていただけますか?」
桐野は状況を観察する。美由は別に助けていう顔をしていない。
桐野はニッコリと笑みを浮かべた。
「いいわよ。立ち去ってあげる。」
彼女は歩み始める。
「桜間さん。頑張ってね。」
美由は何も答えなかった。
両腕を二人の人間に抑えられているのだから、下手に話すと何が起きるかわらないのでしかたない。
桐野が立ち去ったのを確認し、お嬢様方は美由をフェンスごしに立たせ、取り囲む。
『流石に、これだと無傷で逃げ切るのは無理だな。』
「さて、何ですか?私は拒絶したのに、無理やりこんな人気の無い処につれてきて。」
リーダー格の女子は美由の腹にグーで拳を入れる。
美由は反射的に回避行動をとり、体をくの字に曲げる。
所詮、鍛えておらず、殴り慣れていない女性の拳なので、鍛えている美由には全く利かないのだが、反射行動で大きくダメージを与えたように見える。
彼女は美由のむらぐらをつかみ、状態を起こさせ、フェンスに押し付ける。
美由は抵抗をせず、相手のなすがままにされる。
「生意気ね。あなた。」
美由は無言のまま、相手を見ていた。
リーダー格の女子は空いている手で、美由の頬を3発続けて平手打ちする。
美由は反射行動で、ダメージを受け流すが、平手は痛かった。
「何とか言いなさい。」
美由は無言のままである。
別に恐怖に震えて、無言でいるわけではなかった。正直、対応に困っていた。
『どうするかなぁあ。本人はいたって真面目にやっているんだろうけど、正直この程度だと対応のしようが無いのだが・・。』
襟首を掴んだまま、強い力で美由のあごに押し当てる。
『むー。ポイントがずれてるんだよなぁあ。相手を息苦しくさせるなら、もっと下なんだけど。』
「な・ん・と・か・い・い・な・さいよ。」
そういって、襟首を掴んだ手を離す。美由は倒れこみ、息苦しかった演技をする。
『私。何て猿芝居やってるんだろう・・・。』
他の女子が口を開く。
「ねぇえ。彼女ひん剥いて、写真とらない?」
「いいねねえ。インターネットにアップして世界中にばら撒こう。」
「やめてください。タダではすみませんよ。」
彼女達は、集団で美由をつかみ、強引にひっぱりる。ベストとカッターシャツのボタンが弾け飛び、美由のブラジャーが露出する。
美由は胸を隠した。
その姿をシャメで撮る「はい送信。」
『ああ、やっちゃたぁあ。私はしらないぞー。』
「このまま、素っ裸の写真も撮っちゃおうよ。」
そう言って、集団で押さえこまれ、服を強引に引っ張られる。
美由のカッターシャツの片腕がとれてしまった。
その瞬間後ろから大きな声が聞こえてきた。
「あなた達、何やっているの?」
その声の主は須王寺麗菜だった。