桐野と美由の下校
昼休み、先生はまず犯人は名乗り出る様に言うが誰も出てこない。
名乗り出た時点で、確実に一週間以上の謹慎である。それが、分かっているから当然誰も名乗り出ない。
やった人間は誰がやったか分から無い様に、全員に疑いがかかる手段をとっているのだから様、当然逃げ切るために、名乗り出るはずがない。
先生はさっきまで隠蔽する事しか考えておらず、女子生徒のクレームに折れて渋々この説教をはじめたのだが、突然、正義の心に火がついたらしく熱く語りだしはじめた。
「いいか?こんなことをするヤツはクズだ。」
正直、美由一人に罪をかぶせようとしていた事を知っている人たちが聞くと、滑稽としか思えない言い分なのだが、大事なのは全体責任という形で、大事な昼休みを拘束され、不快な説教を受ける事で犯人にリスクがあると知らしめるのが目的なので、あえて、黙って聞いていた。
放課後になり、美由はいつもの様に素早く、席を立った。
「桜間さん。待ちなさい。」
声の相手は桐野だった。
桐野は自分のカバンを持ち、美由に近づく。
「一緒に帰るわよ。」
「はあ」
二人は一緒に教室を出て桐野は口を開く。」
「その前に今日、猫に餌をあげてないの。昼休みあれだったから。一緒にいい?」
「はい。構いませんよ。」
二人は裏庭に向かった。
「流石に、須王寺さんは違うわね。私達の説得だけでは、全然やるつもりが無かったのに、彼女が発言するだけで、簡単に折れるなんて。」
「ですね。先生が私に声をかけてきた時、明らかに私を牽制してましたし。」
「ところで、あのまま先生と言い合いをしたら、今回も折れた?」
「今回は覚悟を決めてたので。多分折れなかったと思います。」
「それでよし。これで、連日の落書き犯もこりるでしょう。」
「それなんですが。多分、昨日の人と今日の人は違います。」
「何で?そう言い切れるの?」
「文字の書き方が違います。昨日の人はかなり達筆でした。今日みたいにバカっぽくなかったですし。それに今日は複数犯です。多分、数は3人。」
「その根拠は?」
「文字の書き方の違いです。昨日みたいに達筆な人はいませんが、一人はかなり字が汚いうえに大きく書いてます。一人は小さく詰めて書いてます。もう一人は、普通ぐらいですが。」
「なるほどねぇえ。その人数とあの体育の時間のアリバイを考えれば、おのずとその条件に当てはまる人物は推理できるわけだ。何で言わなかったの?」
「リスクがある事だけ理解させるれば、それでいいかなと。言えば、その人たちは間違いなく謹慎になるので。」
「甘いわねえ。」