朋が頑張る。
朋は家に帰ってきて、ジャージに着替え、自分のウチの公営住宅の近くにある公園に立っていた。かなり勇敢な顔をしている。
「美由先輩のためにも、私は強くなるのです。ひとまず、美由先輩が言っていた、一日20分走るのです。」
そう言って、朋は走りはじめるが、すぐに息が荒れる。
『うー。やっぱり駄目だぁあ。』
朋は足を止め、前かがみになる。
『そういえば、美由先輩言ってたな。まずは心肺機能を徐々にあげていかないと駄目だって。それには歩く様なスピードで走れって、最初はきついけど、毎日やっていれば一週間ぐらいでなれるって。美由先輩の言葉を信じるのです。』
朋は、ゆっくりと歩くようなペースで走りはじめた。
確かにきつい。でも、すぐに息が切れるような感じでない。頑張れば何とか長く持続できそうだと思った。
道路に出て、3分程走ると、徐々に疲労がたまっているのがわかる。ちょっときつくなっているでも、頑張ればいけそうだ。でも、やめたい。
朋はまた足を止めた。
『うー、頑張れそうなのに。頑張れないよ。そういやぁあ。疲れたら、ちょっと休んで、また走りはじめれば良いとか良いとか言ってたな。』
朋は歩き始める。そして、また、歩くようなペースで走り出した。
「ああ、さっきの疲れが消えてる。もうちょっと、頑張れそう。」
朋は2分ほど走った。
「うー。さっきより、疲れるのが早いよー。」
そういって、また歩きはじめる。しばらくして走り始めた。
『ああ、こういう事なんだ。』
朋は20分程走ってウチに戻り、着替えて、勉強をはじめた。
今やっているのは、美由から貰った数学Ⅰの白本であった。美由に言われた通りにやると意外とスイスイ進む。でも、ちょっと、面倒くさくなり、わかったつもりになって、読み飛ばしをしてみたら、すぐに理解できなくなったので、また読み飛ばしをする前に戻り、ちゃんとやりはじめる。
「むー。やっぱり丁寧にやっていかないと駄目だな。」
夜になり、お母さんが帰ってくる。
勉強をしている朋も見るなり、買い物が詰まったレジ袋を落とす。
「と、朋が試験でもないのに勉強している・・・。」
「うー。ママ酷いのです。」
「いや、もの凄く、珍しいものをみたから。どうぞ、どうぞ続けて。」
母親は慌てて、レジ袋を拾った。
「ぶー。でも、頑張るのです。」