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魔法少女ガラミン  作者: からっかす
6話 未定
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 淋しそうな朋の背中を見ていると、美由は心が痛んだ。

 『私は朋ちゃんに別れを告げる事に覚悟が足りなかったな。多分、別れを告げる事になるんだという認識すら持ってなかった。』

 美由は言って後悔をしていた。

 『ごめんね。こんな駄目な人で。』

 「あらあら、かわいそうに。」

 どこからとも無く、声が聞こえてきた。

 美由は声の方向を見る。そこには傷だらけの黒猫がいた。

 「酷い事をしますね。魔法少女様。」

 美由はその言葉に落ち込む。

 「すいません。私が浅はかでございました。」

 「そういう言葉は私ではなく、彼女に言うべきでは。」

 「ですね。」

 「でも、今の状況から考えれば、あなたの判断は間違ってませんよ。配慮が足りないとは思いますが。」

 「イヤな事を言いますね。ん?もしかして、学校の事を知っているんですか?」

 「ええ。あの魔法少女誕生のきっかけになった茶トラ猫がいたでしょ。そいつに餌をあげている女性が言ってたそうなんで、それの伝聞ですが。」

 「あの、おしゃべり猫め。」

 「お困りでしたら手伝いましょうか?あなたには恩があるので犯人を探し出して、あなたの代わりに制裁をしましょうか?」

 「やめてください。そんなこと。絶対にしないでください。」

 「そうですか。せっかく恩が返せるチャンスだと思ったのに。しかも、早期に解決しそうなのに。」

 「この件は化け物さん達が関わっていい話ではありません。第一、そんな事をしたら私が一番最初に疑われます。」

 「なるほど。」

 「そう簡単に折れるという事は、断ると分かっていて提案してますよね?」

 「わかりますか?」

 「私を試すのはやめてください。」

 「それは無理というものですよ。あなたは魔法少女なんですから。ところで、魔法少女様、本当に解決できるんですか?」

 「さあ。わかりません。」

 「特に何か作戦があるわけじゃないと?」

 「はい。手札が足りないので、手の打ちようが無いというのが正直な処ですね。」

 「だったら、犯人だけ調べましょうか?」

 「今回の落書き事件の犯人が分かっても、私への不満に対する解決になるわけじゃないので、今は必要ありません。第一、下手に知っていると、現段階では問題になる可能性があるので。」

 「では、どうするつもりで。」

 「待ちます。多分、次に何らかのアクションがあるでしょ。それが起こってから考えます。」

 「まあ、それしかないでしょうね。処で、普通の女性なら、泣いておかしくないのに、何で泣かないんですか?」

 「泣いて解決するなら。思いっきり泣きますよ。」

 「泣けば解決するかもしれませんよ。」

 「だったら、いくらでも、泣きますよ。ウソ泣きでも何でも。今回はいじめです。いじめを受けて一番やっちゃいけないのは、嫌がらせを受けた時にリアクションをとることです。相手が何故嫌がらせをするかと言えば、こちらがその嫌がらせに対して不快感をしめしたリアクションが見たいからです。ですからリアクションするというのは相手に報酬を与えるのと同義です。そして、一番やってはいけないリアクションは、泣く事です。いじめの最高の成功報酬は泣く事なんです。一度、報酬の快楽をしれば、次も報酬を求めるようになります。それが徐々にエスカレートしていく。私が泣くというのは相手に麻薬を与えるのと同義です。第一、泣くというのは弱みを見せるという事です。弱みをみせれば、そこに付込まれ、そこから崩されていく。相手は絶対に手を抜きません。親の敵の様に攻めてきます。」

 「我々猫の縄張り争いと大してかわりませんね。まるでヤクザじゃないですか。」

 「人は自分の行為がどんなに酷い事であっても、気付かなければ正義だと思うもんですからね。正義だから、何をしても許されると信じてる。そして、自分に被害が及ばない事で、自分が正義であると再認識する。」

 「無知の正義は恐ろしいですね。」

 「そうですね。私は今、正義の味方ではなく、悪そのものなんですよ。」

 「悪の魔法少女ですか。それは恐ろしく聞こえますね。」

 「自分が悪だとわかっていて、戦うのはイヤですねぇえ。」

 「別にあなたが本当に悪なわけじゃない。学園の一部があなたを悪に仕立て上げようとしているだけですよ。知っています?人間が昔書いた絵に7つの大罪というのがあるそうですが、実はもう一枚8つ目の大罪があるそうです。7つの大罪を凌ぐ最大の罪それは正義だそうです。」

 「へぇえ。」

 「正義という大儀があれば、人はどんな酷い事でもできる。強盗でも人殺しでも。あなたが正義を敵に回しているなら、自分を守るために正義と戦うしかないでしょうね。今回あなたは被害者です。でも、悪にされようとしてます。ここで戦うのをやめたら、本当に悪にされますよ。」

 「私に残された選択肢って、『戦う』以外に無いのもわかっているんですよ。こちらがいじめに妥協して不登校になる事が相手の目的だと思います。不登校という選択肢を選んだら、自らの手で完全敗北を認める事になります。それは、相手にとっても自分にとっても最もやってはいけない手段です。それに不登校になって、退学してニートには、なりたくありませんし。」

 「早くこの戦いが終わるといいですね。もう一人の魔法少女様のためにも。」

 「終わりますかね?」

 「終わらせたく無いのですか?」

 「そんな事、絶対にありません。私は朋ちゃんが大好きですから。また一緒に仲良くしたいと思っています。だから戦います。」

 「では、頑張ってください。前にも話しましたが、私達もあなたに潰れられたら困るので。手が必要になったらいつでも言ってください。いつでも待っているので。ただし、その時は、ちゃんと言葉で伝えてください。空気を読んで王子様が助ける何て事はありませんから。」

 「ありがとうございます。」




 朋は美由と別れ、しばらく、うなだれていたが、次第に涙が出ていた。

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