朋が怒る。
「ええ?美由先輩の机に落書き!許せないのです。」
そう言ったのは朋だった。
「まあまあ、朋ちゃん落ちついて。」
朋はふてくされている。
「朋ちゃん私が聞きたいのは、美由先輩を恨んでいる人に心当たりは無いかって事。」
「ぶー。美由先輩は素敵なので、人に恨まれる様な事はしないのです。」
『やはり、駄目か。期待はしてなかったけど・・。』
「じゃあ、美由先輩に何か変わった事とかなかった?」
朋は思い返すが、化け物関係の話しか思いつかないので、言えるわけがない。それに化け物関係なら美由が学園でいじめにあっている事と関係は全く無い。
片奈の指輪の件にしても、朋は蛙主が勝手に解決させたと聞いているだけで、美由に恨みを抱いての行為だったという事に気づいてない。ぼんやりと悪の組織の仕業だったと勝手に思い込んでいる。
「あ、言葉につまった。何かあるのね?」
「無いです。この前、美由先輩に貰った参考書の使い方を教えてもらうためにウチに来てもらったことぐらいしか・・。」
「面白そうなネタだけど、今は良いわ。他には。」
「本当に無いよう。」
加奈は派閥とのいざこざの話をしようと思ったが、朋の純粋な感じを見ていると、こういった話をすべきではないと思った。
放課後になった。
朋は美由を追いかけるため、すばやく学校を出た。
「美由せんぱーい。」
「ああ、朋ちゃん。」
「美由先輩聞きました。机に落書きをされたって。」
「ああ、朋ちゃんの耳にも届いているのか。」
「はい加奈ちゃんから聞きました。」
「加奈ちゃんって、前に登校の時にあった朋ちゃん友達だっけ?」
「はい、そうです。それにしても許せないのです。美由先輩の机に酷い言葉を書いてあったと聞いたのです。」
『卑猥な言葉だったけど、酷い言葉に摩り替わっているな。』
「まあ、朋ちゃんが怒る事ではないよ。私の問題。」
「美由先輩がいじめらるのを見ているのは、私がイヤなんです。」
美由は朋の頭を撫でる。
「そっか、そっか。そんな事を言ってくれるのは朋ちゃんだけだよ。」
「そうなんですか?」
「そうだよー。ある人なんか、私にやさしい言葉をかけないとか言ってたし。」
「酷いのです。」
「ああ、勘違いをさせちゃったか。やさしい言葉をかけても、そこに甘えるだけだから問題は解決しないって、だから、やさしい言葉をかけないって、応援されたのよ。」
「良くわからないです。」
「まあ、そのうち分かるよ。それより朋ちゃん。大事な話があるから聞いて。」
「なあーに?美由先輩。」
「ちょっと、この件が長引きそうなの。私と仲良くしていると朋ちゃんにも迷惑がかかりそうなんだ。だから、ちょっとの間だけ、私と距離を置いてもらえるかな?」
「ええ、私、イヤです。迷惑がかかってもかまいません。」
「私が構うの。朋ちゃんが大好きだから。その人に迷惑がかかるを見ている方がつらいから。」
「わかりました。」
二人はその後、無言のまま歩き続け、別れた。