事後処理
ホームルームが終わると学園1位の成績を誇る桐野 舞奈が美由の席にきた。
「桜間さん、大変ね。どうせ、あのいけすかない誰かの仕業だとは思うけど。」
「桐野さん。犯人が誰かわからないので、そういう事は心の中でお願いします。」
「そう、心の中ね。」
桐野は意味深げにそう言った。
「ところでそれ消さないの?」
「今は道具が無いので・・・・。」
美由は嘘をついた。桐野は美由の顔を観察していた。
「なるほどね。ひとまず、今のあなたの対応は正解だったと思うよ。ただ、やった本人があなたのその嫌味に気づけるかは、別の問題だと思うけどね。」
「嫌味なんてそんなつもりは。」
美由はまた嘘をつく。
「きっと、あなたがその机に座り続けている姿がみじめに見えて、あなたの発言が負け犬の遠吠えとしか聞こえてないでしょうけでね。あいつらの性格だと。」
「桐野さんまた。」
「これは失礼。これだけは聞いて。私はあなたを手伝う事は出来ないし、多分、助けない。だから、なぐさめもしないし、応援もしない。多分、他の人たちもそう。先生もきっと役にたたないでしょうね。なぐさめたり、応援すれば、人は弱いからそこにすがり、あなたは戦うのをやめてしまう。だから、私は優しくしない。」
「これは私の問題なので、桐野さんはお気になさらずに。」
「あら、気にはするし、注目もするわよ。」
須王寺麗菜は教室に入って、美由の机を見た時、怒りを覚えた。
でも、すぐに怒る事をやめた。
これこそが、自分が巻いた種が実った成果からだったからだ。
HRが終わり、美由に慰めの言葉をかけようかと思ったが止めた。
理由は桐野と同じだった。
『彼女はこれに勝たなくては駄目だ。』
だが、罪悪感もある。
まさか、ここまで、露骨な事をするとは考えていなかったからだ。
そして、失望感もあった。
多分やったのは聖エルナール学院出身者の誰かだからだ。この行為は自分たち学院出身者の品位を傷つける行為であると、麗菜は思っていた。
今日、自分の派閥の人を集めて、この件で学院の品位が傷つけられた事は皆に伝える必要があるとは思っていた。
昼休み。
美由は生徒指導室に向かった。
美由が呼び出しを食らった事は瞬く間に学園女子の間に広まる。
「桜間おねぇえ様が、生徒指導室?何か悪いことでもしたの?」
「違う違う。なんでも、机に卑猥なことを書かれたらしいよ。そのことで先生たちが話を聞きたいって。」
「ええ。桜間おねぇえ様被害者じゃん。誰よ。」
美由は生徒指導室に入る。。
先生は理由を尋ねるが、美由はわからないの一点張りだった。
先生方はやられる様な原因を作った美由が悪いみたな話にもっていこうとしていた。すぐに除光液をもって、机の落書きを消し、この件は無かった事にしろという方向へもっていこうとしていた。
『まいったなぁあ。ここまで、役に立たないとは。』
「先生。私が一人我慢して、無かった事にすればこの件だけは解決するかもしれませんが、この手のヤツはクギをさしておかないと、問題が更にエスカレートしますよ?」
「そんなことは無い。これ以上問題を大きくする方がかえってエスカレートする。」
ようするに、先生方は上が聞きつける前にもみ消そうとしているらしい。
美由は除光液とタオルを持って生徒指導室を出る。
扉を閉めた後、ため息をついた。
『本当に桐野さんが言ってたように、役にたたないなぁあ。』
美由は自分の机に戻ってくる。
しばらく、机の落書きをしばらく放置しておこうと思っていたが、除光液でいそいそと消しはじめた