勝負開始前
二匹と女子高生二人は、雨の中、海岸へとやって来た。
海岸線沿って、車2台が何とか通れそうなアスファルトの道路が続いており、その道に沿って1m半程の防波堤も続いていた。道路の反対側には灰色の砂浜がずっと続いていた。
ここは海岸で雨が『しとしと』と降っているのだが、今日は風があまりなく、海もそこまで荒れてない。
今、4人が居る場所は、港の近くなので砂浜には船や漁に使う道具が置かれていた。
港から少し離れたところは何も無く砂浜が続いている。少し遠くの方には岩場も見える。
ウサギ主は少し遠くの岩場を指す。
「あそこが多分、待ち合わせ場所だろう。ここからでは見えないが、あそこに鳥居と社がある。」
みんなでその社に向かって歩きはじめた。
美由は道路を歩いた。
朋と彼女の頭の上にのっている蛙主は防波堤の上を歩く。
ウサギ主は修行のためだと言って、砂浜を走って先に社へと向う。
『ウサギ主、今日も元気だなぁあ。』
みんなが鳥居の前に集まった処で、カメが海からあがってきた。
「何だ、あんた達もう来てたのか?というか、今日は雨だから、こなくて不戦勝で勝利するつもりでいたのに。」
『何て、志の低いカメなんだろう・・・。』
「ふん、この程度の雨を理由に負けられるか。早くはじめよう。コースを説明せい。」
「この鳥居から、港へと行き、またここの鳥居へと戻ってくる。鳥居を先に抜けたものが勝者だ。泳いでも良いし、砂浜を走っても良い。防波堤の上でも良い。ただ、道路に出れば負けだ。」
『泳ぐって・・・。この勝負はかけっこでは無かったのか?』
「よかろう。」
ウサギ主は相手の提案をあっさり呑む。
『いいのか?ウサギ主。まあ、やると言っている本人が良いと言っているんだから。口出しはしないけど。』
「審判は、この魔法少女とカエルがつとめる。ゴール地点は魔法少女がカエルは港の方で折り返し地点の置物とする。いいな?」
「わかった。」
「カエル。先に港に行って、適当なところに座っておれ。」
「勝手に決めおって。まあ、折り返し地点が決まっておらんとな。カメに配慮して海の近くにいることにするぞ。」
「好きにしろ。」
蛙主は姿を消す。
朋が話し始める
「ウサギさん、ずいぶん自信があるんですね。」
「みたいだねぇえ」
「カメさんがんばってください。足が遅いものとして応援します。」
「おうよ。」
カメは前足を上げ、朋の応援に答える。
「美由が手をあげる。では、位置について。」
カメは鳥居からすぐ、海に飛び込める位置につく、ウサギ主は砂浜を行くようだ。
『うーん。本当に節操が無いカメだな・・・。そんなに勝ちたいのだろうか?』
「よーい、ドン」
そう言って美由は手を下ろした。