テスト返却
翌日になった。今日は金曜日である。
本日から何日かかけてテストが帰ってくる。
テストが終わったので、登校中もギスギス感が無く、いつもの華やかな感じだった。
みんな心に余裕ができたので、挨拶も活発に行われる様になる。
当然、テスト期間中はあまり挨拶をされなかった美由も「おねぇえ様」として、後輩にいっぱい挨拶される。今日も引きつった顔をしながら笑顔で返事を返していた。
朋は今日の返却分は赤点では無かったが、赤点に近かった。
美由は予想通り点数がいつもより15点程落ちていた。
「ふう。分かっていたとは言え、流石にこの現実はヘビーだな。」
美由はテストを返してもらってそう思った。
ただ、点数が落ちていたのは美由だけでない。ほとんどの生徒が点数を落としていた。彼女はまだマシな方で、クラスの半分ほどがかなり落としていた。
3年になり問題レベルが一気上がったため、難しい問題に強い本当に勉強をしてきた人達だけが、成績を落とさずにすんだのだった。
ただ、今回のテストは赤点はほどんどいなかった。なぜなら、赤点ラインが10点台だったからだ。この学校では平均点数が60点を上回っている場合30点未満が赤点で、それ以下の場合は平均点の半分が赤点ラインになる。
問題を難しくしすぎたために、大幅に平均点数が下がったため赤点の点数が下がってしまったのである。後に「中間テストの奇跡」として語られる事になる。
まあ、実際は、この学園の毎年の名物行事だったりもするのだが。
この学校は進学校なので、生徒に実力不足を知らしめるために、あえて3年の一学期の中間テストから問題をかなり難しくして、生徒に勉強をしなければならないという意識を植え付けるさせるのだ。そのため、赤点ラインが酷く下がるのが名物になっていた。
テストの答え合わせで、先生が1時間で答え合わせをすませようとするので、答えだけを黒板に書いていき、おまけ程度に補足をつけるという事をやってしまう。
先生の事情もわからなくもないが、問題レベルが上がっているので、考え方とか解法を説明してくれないと正直困ると美由は思った。
『この答えあわせのやり方では、身につかないではないか。』
昼休みになった朋は、いつもの三人と教室でお弁当を食べていた。
「うー。あずさちゃん。何とか30点以上とれたから赤点じゃなかったけど、もう少しで追試だったよ。」
あずさは朋の頭をポンポン叩く
「はいはい。もっと勉強しようね。」
「ぶー。冷たいのです。いいなぁあ、みんな。」
「こういうのは甘やかすと、本当に勉強しなくなるから冷たくします。」
「あうー。」
「朋ちゃんは部活やってないし、帰りも早いんだから、美由先輩の尻ばかり追いかけてないで、勉強しないと。」
「はーい。」
朋は思い出す。そう言えば、テストが終わったら参考書の使い方を教えてくれると美由先輩が言っていた。後で、使い方を聞いて、勉強しなくてはと思った。