ハイキングの帰り
美由と朋は来た山道を下っていた。もちろん朋はカメを自分のリュックサックに入れて背負っている。
流石に下り坂なので朋の足取りも軽い。
「美由せんぱい。帰りは楽ですねぇえ。」
「そうだねぇえ。行きは登り坂ばっかりだったから。」
朋は走りだす。
「朋ちゃんあぶ・・。」
「見て見て、こんなに足が軽い・・。」
朋はそう言って美由の方を振り向いたとたん、足を絡まらせコケた。
美由は朋に走りよる。
朋は上手く倒れる事が出来たらしく、今回は怪我はなさそうだった。
「もう、朋ちゃんたら。」
美由は前かがみになり、朋に手を差し伸べる。
朋は美由の手を握り起き上がった。
「えへへ、コケちゃった。」
「下り坂は、コケやすいし、走ると足の負担が大きくなるから、気をつけないと駄目でしょ。」
「はーい。」
カメが話しに割り込む。
「しっかりしてくださいよ。私を背負っている事も忘れないでください。私動くことができないんで。」
「カメさんごめんね。」
二人は歩きはじめる。
「ところで、美由先輩。私が知っている化け物さん達って、普通の動物がただ存在が薄くなっただけの方々ばかりなのような。」
美由は自分の記憶を振り返る。
「私は2度くらい、如何にも妖怪さんみたいなののを見たことはあるけど、滅多にみないね。」
「へぇえ、如何にも妖怪さんみたいな化け物さんもいないわけじゃないんですね。」
カメが割って入る。
「私が住んでいる海とかは、妖怪みたな化け物が結構いますよ。でも、普通に歳をとって化け物化している方が多いですけどね。」
「いっぱいいるんだ。そだ、幽霊とか神様とかもいるんですか?」
「幽霊は見た事ないなぁあ。神様は結構いるけど。ほら、蛙主もウサギ主も神様だし。」
「カエルさん、神様なんですか?」
「一応、さっきまで居た処よりもう少し奥にいった処に神社があって、蛙主は祀られているんだけど。ウサギ主もこの山の上の方に祀られているのよ。」
「へぇえ。」
「本当は彼等を数える時はひと柱ふた柱と数えなきゃいけないんだけど、どうしても、一匹・二匹って数えちゃうよね。」
「えっと、神社に祀りさえすれば、神様になるんですか?」
「そうよ。朋ちゃんだって、神棚を家に置いて自分の名前が書かれたお札を入れて、祀る人がいれば生きた状態で神様になれるよ。他の人が認めるかどうかは別の問題だけど。」
「何か、随分簡単に神様になれるんですね。」
「まぁあ。趣味で祀る分にはねぇえ。正式な神社として公に神様と認められるには、神職の資格で正階以上の資格を持っている人に祀ってもらって、神社本庁に認められる必要があるけどね。」
「ちゃんとするとなると、何か大変そうですね。」
「自分も早く祀られたいものです。」
そうカメが言った。
学校へ着く。別に学校に用事があったからではなく。山道から街に戻るには学校を通る必要があったからだった。時はもう夕方になっていた。
朋はカメに語りかける。
「カメさん、ここで、お別れだね。」
朋はカメとここで会ったので分かれるのは当然、学校前だと思っていた。
「ええ。海まで連れってくれないんですか?私、海ガメ何で、地上を歩くの大変なんですけど。」
「ワガママなカメですね。ここまで歩いて来たんだから、帰れるでしょ。」
美由がカメに怒りの表情を見せる。
「私の足では二日かかります。対決に間に合わないかもしれません。」
「しょうがないなぁあ。朋ちゃんを遅く帰すわけにもいかないし。朋ちゃんリュック貸して。私が海まで連れてくから。」
「でも美由先輩も、リュックもってますよ。」
「まあ、私のは荷物が少ないから大丈夫だって。手で持るし。」
「わかりました。」
朋はカメ入りのリュックを下ろし、美由に渡した。
「じゃあ。朋ちゃん気をつけて帰ってね。」
「はい。また明日学校でです。」
そう言って朋は帰っていく。
「さて、いきますか。カメさんかなり揺れますけど気をつけてくださいね。」
美由は自分の存在を薄め、海へ向かって走り始めた。
そして、無事に海岸までカメを送り届けた。