挑戦状
ウサギ主はアスファルトにどってと座った。
朋はウサギ主に近づき、頭を下げた。
「こんにちは、ウサギさん。この前の夜は、助けて貰ったのにあいさつも出来ず。」
彼女は夜遅く蛙主に巻き込まれ、彼女のウチの近くの公園で、茶トラ猫の暴走でウサギ主に助けられた事を言っていた。
「嬢ちゃん気にする事は無い。あれは、そこのカエルが悪い。」
朋は首を上下にして3mを超えるウサギをジーっと見る。
「ウサギさん、触ってもいいですか?」
「む?いいぞ。」
その言葉を聞き、朋はウサギ主をちょんとつつく。
毛が豊富なので柔らかい。
もっと、強めに押してみると、下に硬いモノがある事に気づく。
それはウサギ主の筋肉だった。
朋はウサギ主に抱きついて見る。
少し変なにおいがするが、そこまで嫌な臭いではない。でも、さわり心地は良くなかった。
朋は放れて言う。
「ウサギさん。何かゴツゴツして、さわり心地がイマイチ。」
「む、硬いのはしょうがないのだがなぁあ。」
ウサギ主は立ち上がり、筋肉が膨れ上がるポージングを見せる。
「わしは、体を鍛えるのが趣味でな。この豊富な毛から見ても分かる筋肉美を出す事に全力を傾けておるのじゃ。」
「ええ。せっかく大きくて可愛いのに、もったいないです。」
ウサギ主がガックリとする。
「そうか?」
美由は朋に弄ばれるウサギ主を見て思った。あの硬派なウサギ主もちびっ子少女には弱いんだなと。
「それよりウサギさん。」
そう言って、朋は自分の水色で蛍光色のリュックサックを引っ張り寄せる。
リュックから顔だけを覗かせているカメをウサギ主に見せた。
「このカメさんが、ウサギさんに用事があるそうです。」
ウサギ主はリュックから顔を出しているカメをじっくりと眺める。
「むー。お主は確か、数年前、戦ったカメだな?」
「そうだ。3年前に砂浜のかけっこで負けたあのカメだ。」
カメはそう答えた。
「おお、やはりあの時、砂浜で戦ったカメか。そのカメが今更何の用だ?」
「お前を負かすために、この3年間それだけを考え修行してきた。勝負しろ。」
「む?勝負なら是非も無い。では、早速、この人がつくり出した道で勝負だ。」
「待て待て。」
いきなり勝負を挑んでくるウサギ主にカメは制止をかける。
「今日は果たし状を貴様に渡しに来ただけだ。第一、海ガメたる自分がこんな山奥で勝負して勝てるわけが無いだろう。勝負は今度の日曜。場所は前にお主と戦った砂浜だ。」
「よかろう。発汗機能が本来は無いウサギが発汗機能を得たらどんなに凄いか教えてやる。」