5話始め
夜の学校のグラウンドの中央で白の猫は消えた。
それを見て呆然としているテラミルのもとに蛙主が近づいてきた。
「すまんかったな。最初の時にお前さんでなくワシが神石を掴んで置けば、お前さんに化け物殺しをさせずにすんだのに。」
「いいえ、私も浅はかでした。神石の危険性は頭では理解していたつもりでしたが、心のどこかで自分には関係ないと思ってたんだと思います。」
「浅はかだったのはワシも同じじゃて。ワシはまだまだだのう。」
「蛙主もそう思うことがあるんですね。それより、怪我をしてますよ?」
「ワシは自分でやる。それより、あっちのウサギと猫を治してやれ。やつ等の方が大怪我している。」
ウサギ主と傷だらけの黒猫はこちらに向かいゆっくりと歩いてくる。擦り傷や引っかき傷で全身の毛に血が染み込んでいる。
「すまんな。魔法少女よ。ワシ等がもう少し頑張れたらよかったのだが。」
「いいえ。私が一番致命的なミスを犯しましたから。多分、ミスを犯した私への罰なんでしょう。それより、私の魔法で傷口を塞ぎますので、そこに座ってください。」
二人は座り込む。
ウサギ主は蛙主が担当し、傷だらけの黒猫はテラミルが担当する。
「ありがとうございます。魔法少女様。それより、あなた様が手を下さなくても、ミスを犯さなくても、あの猫は殺さざるを得なかったので、それが我々だったのか、あなた様だったのかの違いがあっただけで結果は同じだった事は忘れないでください。」
「嫌な事をいいますね。」
「そうですか?そう聞こえたのでしたら申し訳ありません。」
二人の治療中にふとっちょの三毛猫がやって来る。
「おわったんだぎゃか?」
「終わりました。」
傷だらけの黒猫はそう答える。
「そりゃ、良かった。で、あのいけすかんメスの白猫はどぎゃんしたとね。」
「神石の力で、暴れた後、肉体的破綻が起こり存在が消滅しました。」
「そうかね。あん猫は好かんかったけど、消えたとなると淋しかね。で、神石はどこかね?」
「蛙主が持ってます。」
「ほれ」
蛙主は光を失った白い珠を三毛猫に投げる。三毛猫は珠を両前足でつかみ確認する。
「ちょっと、ちいさくなってりゃあせんか?」
「すまんな。神石で暴走した猫を止めるため、少々使ってしもうた。」
三毛猫は首輪についている巾着袋にしまう。
「しかたにゃあねぇえ。」
治療が終わり、解散になる。
美由と蛙主は一緒に歩いていた。
「それにしても、私、神石を、あれだけ吸収して良く無事でしたね。」
「そうじゃなぁあ。」
「どうしてでしょうね。」
「さあなあ。」
「? どうしたんですか?何かノリが悪いですけど。」
「イヤな、お前さんの家の前で神石の探知を行った時、魔法少女の力の放出が邪魔だといったじゃろ。」
「はい。言いましたけど。」
「神石を感知する事になって初めて気がついたんじゃが、魔法少女の力の放出は神石の波動と似ておる。」
「はい。で、それで?」
「それだけじゃ。後はわからん。」
「そうなんですか。神石の力を吸収して大丈夫だったのも、一時的にパワーアップして体に負担が無かったのも、そこら辺が関係してるですかね?」
「かもしれんなぁあ。」
「魔法少女って何なんですかねぇ。有るから使っていますけど、本当の所は何も分って無い。化け物を退治するには目立ちするぎるし、何より化け物に対抗できる程、強くない。」
「さあなぁあ。存在が強ければ、存在が弱いものにダメージを与え難いし、その逆も同じで、存在の強弱の差でダメージの与え難さが変化するが、魔法少女はどの存在の強さにでも似た様な力で介入できるが、ダメージもそのままんま食らうからなぁあ。化け物との戦闘に向いているのか考えるとかなり疑問じゃの。でも、あの精神吸収はかなり強力な武器になりそうじゃな。」
「魔法少女の最大の武器は、パンチでもキックでもなく、触れるですか。正義の味方っぽくないですね。」