白猫
とある一軒屋家の軒下に一匹の白猫が入っていく。
その猫は、化け猫でありメス猫だった。
コンクリートで仕切られた基礎の迷路を進み、奥へと入っていく。
一番奥につくと、その猫は穴を堀りはじめた。
そこから、直径5cm程の磨いた大理石の様に輝く白い球体が出てきた。
『まだ、見つかって無いみたいね。』
猫は白い珠を見つめる。
『あのババァ猫。ボスをやっているけど、ただ、神輿として担がれているだけじゃない。あのババァの私に対する執拗なイジメ。もう耐えられない。みんなも助けてくれない。もういい。あのババァから奪ったこの神石で自爆してやる。』
当人は有終の美が飾れるので良いかもしれないが、他の人達から見れば、ただ迷惑な猫であった。
化け猫社会は、ある程度上下関係が固まっているので、彼女の努力ではどうしよう無いのは確かなのだが、どこかよそに行って、別のグループに入るなり、一人で生きて行くなり、時間がたてば上にいたものが死ぬので自動的に自分の地位があがるわけだがら数年我慢して待つという手もあった。
選択肢は幾つもあるはずである。
でも、復讐のための自爆を選択した。
『あのババァの話によると、その内この石は目覚める。その時、この石に接触すれば、私は誰よりも強大な力を手に入れる事が出来る。散々暴れ周り、命を散らす。それが私の美学。』
「それまで、私が犯人だと、あいつ等に気づかれない様にしないと・・・・。」
「あなたなが犯人でしたか。」
白猫は振り返る。
そこには、傷だらけの黒猫がいた。
「クロさん・・・。」
「あなたを、ずっと疑っていたんですよ。だからずっと、泳がせ、監視しておりました。」
「疑っているなら、私を拷問すればよかったじゃない。」
「それでも良かったんですが、猫はやりすぎてしまうので・・。殺してしまっては、神石が回収できない。それに疑いがあったのはあなただけではない。ウチは規模が大きいですからねぇえ。野心があったり不満を持っている猫は幾らでもいる。そんな疑いがある猫を全員潰していたら組織は持たない。」
「相変わらず、計算高いようで。」
「それに、あなたをなるべくなら、殺さないでおきたい。今なら紛失だった事にして、あなたが見つけた事にすれば済みます。」
「その言葉を私が信じるとでも?化け猫社会のルールは裏切り者は消すでしょ?」
「信じてもらいたいものですね。どうせ、もう逃げられないんですから。」
「お断り。」
白のメス猫は不敵な笑みを浮かべる。
「いつバレて、殺されるかも分からない。脅えながら日陰で生き続けるぐらいなら、花火をでっかく揚げて華々しく散るわ。」
そう言うと白のメス猫は傷だらけの黒猫に砂をかける。
一瞬、黒猫はひるむ。
その瞬間、口で白い珠をくわえ、コンクリートが破損して出来た抜け穴へと入っていく。