さあ行こう!あれ?
美由は蛙主の話を聞き思った。
猫達のあの焦り様は、神石が紛失したから、あんなに慌てているのだろう。
蛙主の話だと目覚めた神石に化け物が接触しただけで、暴走のパワーアップ版になるという。
これは、強力な威力をもつ爆弾が街のどこかに、無防備に転がっている事に等しい。
この爆弾を爆発させずに取り扱うにせよ、犯人を捕まえるにせよ、特殊な知識が無いと駄目なのだろう。だから、あの傷だらけの黒猫の部隊だけが動かざるを得ない。
封鎖しているのも、縄張り内の化け物が活発に動かないように襲っているのも、化け物が不用意に動いて、たまたま接触してしまい暴走のパワーアップ版にならないようにしているのと、そんなものを自分の縄張りの中に入れさせないためなんだろう。
『さて、いくか。』
美由は何処かに行こうとする。
「魔法少女その1よ。何処に行く。人を辞書がわりに使っておいて、有り難うも無しか。」
その言葉を聞き、彼女は「あ」と、思う。
そして、振り返ると、自分は犯人の顔を知らないし、石がどんな形状なのかも知らない。
手を出そうにも、実はどうしようもない事に気づく。
「有り難うございます。蛙主。」
「魔法少女よ。お主、何かあせっとらんか?」
美由はギクリとする。多分、表情にも出ただろう。
「いいえ、そんなことは無いですよ。」
「そうか。こんな猫が暴れているところに長居しとうない。それじゃあのう。」
そう言って、蛙主は消えていった。
美由は、ため息をつく。
『ふー。何とかごまかせた。でも、どんな風に、やばいことが起こっているのはわかったけど、私が手を出せるわけじゃない。分かっているのに手を出せ無いなんてじれったいなぁあ。』
美由はカバンを取りに教室に戻った後、校門を出る。
校門の前では、ガックリとうなだれている朋がいた。
朋は美由の姿をみるなり、走りより抱きつく。
「美由先輩。」
突然の出来事に美由は、状況が良くわからない。
「ど、どうしたの?朋ちゃん。」
朋は美由を見上げる。
「美由先輩。テストが全然できなかったんです。元気を貰うために、美由先輩を追いかけたら、いないし。でも、こうして校門の前でうなだれてたら美由先輩にあえたのです。」
美由は朋の言い分に一瞬、唖然とする。
でも、優しい笑顔を作り、彼女の頭を撫でた。
「はいはい、わかったわかった。ごめんね。」
「えへへ。」