神石
あのメス猫が言っていた『神石』の情報を得るために、普通の蛙を使って蛙主に呼び出しをかける。
伝言の内容は「知りたい事があるから来て欲しい。」とだけ伝えている。
あの茶トラ猫との約束を破るのは心苦しくもあったが、どうも、ほっとくと、やばい気がした。
蛙主はすぐに現れた。
「何じゃ。猫が街で暴れ回っていて、来たくなかったのじゃが。」
「すいません。聞きたかった事があったんで。」
「わしゃ、お前さんの辞書ではないぞ。今日はこんなにリスクを犯してきてるんじゃ。胸を触らしてくれ。」
美由は胸を隠すように腕組をして、体をそむける。
「い・いやです。」
「では、教えられんのう。」
「むむむ・・・・。何でそうなんるんですか。」
「嫌ならいいじゃよー。」
「わ、わかりました。」
そういって、腕を下ろし、しゃがみこんむ。
「どうぞ。」
蛙ぬしはいやらしい手つきで、美由の胸をなでた。
「いやぁあ」
といって、胸をそらした。
「もう、終わりか。まあ、ええじゃろ、処でなんじゃ?」
「あの、神石というのについて聞きたいんですけど。」
「親戚?血縁関係のある身内の事じゃろう?」
「そっちではなくて、神の石と書いて神石だそうです。」
「なんで、また、神石なんぞ。まあ、ええじゃろ。神石は神の肉体が化石化したモノと言われておるが事実かはわからん。結構そこら辺にころがっとるから、信憑性は薄いと思うがのう。」
「そんなゴロゴロしてるんですか?」
「してるぞい。力は全く無いといっていいぐらい弱いがな。」
「力ですか?」
「神石は我々生き物に魔力に近い力を簡易的に与えてくれる事が出来る石じゃ。まあ、そこらへんのやつじゃ吸収しても雀の涙にもなりゃせんがのう。」
「へぇえ。力がある程度ある石なら、結構便利そうですね。」
「それが、そういうわけでもないのじゃ。」
「どうしてですか?」
「力が強すぎる石は扱いが難しすぎてのう。かなりの訓練と精神力と魔法抵抗力が無いと、暴走のパワーアップ版みたいな状態になるんじゃ。」
「この前の猫以上ですか?」
「あんなもんじゃ無いと聞いておるぞ。わしも、見た事は無いから確実とは言えんが。昔、化け物たちが共同して押さえ込まなければならない程の大事件になったと聞いておるぞ。」
「うわぁあ。それは、大変ですね。石がそこら辺にあるんなら結構、やばいんじゃないんですか?」
「大丈夫じゃ。力の強い神石は普段は眠りについておる。」
「石が眠っているんですか?」
「そうじゃ。石がその眠りから目覚めないと力の吸収は出来ん。だからそんなに気にすることはない。」
「はぁあ。」
「ただ、石が目覚めたら、化け物がその石に触れただけでそういった状態になるそうじゃ。」
「へぇえ。石が目覚めた場合、危険なんですね。」
「時折、自然に目覚める事もあれば、特殊な魔法を使えば強制的に目覚めさせる事もできるのじゃ。でも、目覚めても1時間から1日ぐらいで眠りにつくんで、よっぽど運が悪くない限りそういう事にはならんじゃろ。」
「蛙主も石を目覚めさせる事ができるんですか?」
「わしか?できるぞい。というより、ワシが蛙主を継げたのは父親が厳しく神石の扱いを教えたからじゃ。神石の扱いが出来なくては、蛙主を継げんからのう。」
「なるほど、父親が厳しく訓練したら、今の蛙主がいるんですね。それが無かったらタダのスケベガエルですね。」
「くう。痛い事を言うのう。」
「さっき、『石が目覚めたら化け物が触れただけでそういった状態になるそうじゃ』と、言いましたよね?なんで、『そうじゃ』なんですか?目覚めさせられるなら知っていてもおかしく無いような。」
「ワシは自力で押さえ込めるし、他の化け物を実験台に使うわけにもいかんじゃろ。」
「それは、そうですね。」
「第一、知的好奇心を発揮して、化け物に目覚めさせた石に接触させてたら、ワシの身が危ないじゃろ。」
「確かに。」
「それに、そんな状態成る程力を持った石なんて、地面の表面や地中の浅い処には、ほとんどない。」
「何でですか?」
「さあ。地上に出ると風化が早く起こるのか、それとも、使いようによっては便利だから取り付くしたのか、それとも、運の悪い虫なんかが触って、奇跡的に発動したのか。まあ、ワシが知る限り、化け物でない限りは滅多に反応せんはずじゃが。」
「生き物が触って、暴走のパワーアップ版が起こる可能性が全く無いとは言えないと。」
「そうじゃと聞いているが、高い力がある石は滅多に見んからのう。見つかるのは砂岩や泥岩※『砂や泥が地中内で高温と高圧にさらされ固まり石になったもの。』※の中や、地中深くとかにあるからのう。」
「はい。要するに、他の生物が触って影響がある程強い石なんて滅多に無いし、石が偶然目覚めざる可能性もあわせると、ほとんどゼロに近いと。」
「そうじゃ。第一、そんな、人間や他の生き物が突然化け物化した事件なんて聞いた事じゃいじゃろ。」
「無いですねぇえ。」