タヌキ主
夜になった。
朋のウチにいた友達3人は、夕方には帰り、それと入れ替わりに両親がデートから帰ってきた。その後、家族三人でご飯を食べながら、二人のデートの話で盛り上がり、テレビを見ながら、のんびりしていた。
「朋。明日、テストだろ?そんなに、ゆっくりしてて大丈夫か?」
父親は朋にそう話しかけてきた。
朋は恐ろしい事に気づく。
明日のテストのために、覚えなくてはならない処が、まだ、いっぱいあった事に。父親に言われるまですっかり忘れていたのだ。
「いけない。忘れてた。急いでやらなくちゃ。」
朋は慌てて、自分の勉強机に向かった。
「あんまり、遅くまでするなよ。パパもママも明日から仕事だから。」
「はーい。気をつける。」
朋はノートを手に取り、勉強をはじめた。
美由の家は一軒屋であり、木造をベースにした二階建てであった。
彼女の部屋は二階にある。
彼女には下に弟と妹が一人づつおり、三人共用の部屋があったのだが、学校から帰って着て、勉強をした後、運動に行き、また夜遅くまで勉強する、灰色の生活をひたすら続ける美由について行けず、二人に部屋を追い出されてしまい、元々、物置であった3畳程の部屋に移動させられた。
よって、この狭い部屋は彼女専用の部屋である。
美由は勉強机に座り、ひたすら、英単語・英熟語の暗記をしていた。
英熟語というのは、英単語を二つ以上合わせてひとつの意味をもつ言葉である。代表的なのは、中学校の意味である、ジュニア ハイ スクール。これは3つの英単語をあわせて中学校という意味になる。
英語は英熟語で文章が構成さているものが多い。例えばば 「This is~.」 は「これは何々です。」という、英熟語として覚えされらるし「Is this ~?」は「これは何々ですか?」と英熟語として暗記させられる。これらが英熟語として成立しているかどうかは微妙だが、英熟語と割り切って暗記しないと、英文は読めない。
美由は英語の単語、英熟語は、簡単な例文と一緒に暗記しないと覚えられないと思っている。英単語・英熟語単品で覚えても、すぐに忘れてしまうので、例文と共に覚えることにしている。
彼女の覚え方はひたすら書き、ぶつぶつ言う事であった。視覚と触覚と聴覚を使い覚えるという手法である。
彼女は窓際にある机の上で、英単語・英熟語を覚ええるための例文を書きながら、ぶつぶつ言っていた。
そんな時、窓から「カリカリカリ」と爪で引っかく音がする。
窓の方へ顔を向けると、窓の向こうに何か動物がいるのが見える。その動物は猫よりちょっと小さいぐらいの動物だった。その動物はいつまでも、窓ガラスを爪で引っかくのをやめない。
美由は窓ガラスを開ける。
そこに、いたのは狸だった。
「おや、狸主様。こんな、夜遅くに何でしょう?」
「よお。魔法少女。おまえさん、何、怪しげな呪文を一人きりの部屋で唱えてるんだ?」
「聞いてたんですか?」
「おう、ブツブツと。正直、不気味だったぞ。」
「くうう。何故、こんな処だけ、みんな見てるの。」
「それより頼みがあって来たのだが。」
「明日、テストなので、今日は無理ですよ。明日は昼からなら空いてますけど。」
美由の学校のテスト期間中は、学校は午前中だけで、午後は空いている。
それは、生徒を遊ばせるためではなく、生徒がテスト勉強するために、空けてある時間なのだがどうも、美由はテスト勉強をするつもりは無いらしい。
「いやいや、明日でかまわん。」
「で、何ですか?」
「お前さんが最近、猫と仲良くしていると聞いてな。」
「別に仲良くはしてませんが。というより、警戒されて、監視のために近づかれているといった方が正しいかなと。」
「それでも、構わん。仲介役を頼もうと思ってな。」
「何のでしょ?」