テスト前日の日曜日(2)
成美矢 朋のウチは、公営住宅の中にある。
無骨なコンクリートで作られた5階建ての建物の中に、朋の家がある。
昼過ぎに朋と仲良い友達である鈴木 あずさ・田中 佐和・佐藤 絵里の3人が、テスト勉強のために朋のウチにやって来てる。
ピンポーン
朋は入り口で待ち構えていたので、直ぐに鉄の扉を開け、笑顔で三人を出迎えた。
「いらっしゃーい。みんなぁあ。」
「おっす。朋。」
「こんにちわ。」
「入って、入って。」
朋はそう言って、玄関の扉を押さえながら、体を後ろに引いて、みんなが家の中に上がれるだけのスペースを作る。
「おじゃましまぁあす。」
「あれ?誰もいないの?」
「今日はパパとママは仕事が無いから、街でデートしているのです。夕方ぐらいには帰ってくるんじゃないかな?」
「おお、お熱いねぇえ。」
「えへへ。というより、ウチ狭いから、みんなで勉強するのにいたら、邪魔だろうって、気を使って貰ったんだ。」
勉強会がはじまる。
みんな、各自持ち寄った、過去の先生の出題パターンや、別のクラスの子から聞いた出題予定情報などを整理していく。朋は情報をほとんど持って無いので、あまり役に立たない。
みんな数日前から放課後とかに、他の生徒から情報を聞きまくっており、かなりの情報が集まっていた。
「さて、他のクラスなんかから集めた先生が出すと言ってた処と、出題される可能性の高い処はひとまず分かった、そこを集中して検討してこう。」
そう、鈴木 あずさは提案する
「はーい。」
残り三人も同意した。
「まず、現代社会だけど・・・・。」
そんなこんなで、一時間ほどが過ぎる。
朋はみんなと勉強会をして思った。みんな自分より頭が良いなと。
しかし、実際は、朋は錯覚をしているだけだった。
みんな、それぞれ、得意分野があり、得意分野は一応、皆に教えるために前もって準備していたし、得意分野しか口を出さないので、朋みたいに表面だけを見てれば、確かにそう感じるのだった。
だた、得意分野が何も無い朋は、駄目な子なのは違いはなかった。
『うー、よく、私、この学校に入学できたな。塾とかに通って、いっぱい勉強したけど、それでも、中学の先生なんか、この学校は落ちる可能性が高いとか言ってたし・・・。それでも、私立は受験日が重ならなければ、何校でも受けられるんだから記念に受けて来いと言われて、行ったら、合格してしまって、中学のみんなから、奇跡とか言われたし。』
身の丈に合ってない学校に来るって凄く大変なんだと、今更、思い知った。
もう、入学してしまったのだが、しょうがないと割り切る事にする。
朋はほっぺを叩き、自分に気合を入れる。
「よし、赤点とらない様に、がんばるぞぉお。」
「おお、朋、やる気だなぁあ。志は低いけど。」
「そのいき、そのいき。」
「がんばるために、ここは休憩して、お菓子を食べよう。」
そう朋が言い出す。
「いきなり、心が折れたな。ま、いいや。休憩しようよ。」
「あたまを使うには糖分がいいと言うので、オレンジジュースと、チョコレートを用意したのです。」
朋は誇らしげに言う。
「おお、いいね。いいね。」
そう言って、冷蔵庫に向かった。