第3話終わり。
「あやつ、気を失いかけとるなぁあ。」
蛙主は少し何かを考え、片奈の方へ向かって飛んでいく。
そして、彼女の頭の上までやってきて、手を置き、眠りの魔法を使う。
彼女は簡単に眠りにつき、机に寄りかかるように倒れる。
蛙主は、彼女の体が占領している机の空きスペースまで移動し、存在を強める。
そして、彼女の手を優しく握り、指から指輪を抜いた。彼女はそうされても目覚めない。
蛙主は自分の顔の前まで指輪をもっていき、指輪を眺める。
ちょっと間、指輪を眺めた後、リングの部分に巻きつけられた美由の髪の毛をはずし、机の上に置いた。
そして、また、存在をかなり薄めた後、彼女の頭に手を置き、目覚めさせる。
彼女は目を開け、体を起こす。
『私は気を失っていたのか?』
彼女はまだ、英語の授業が続いているのを確認する。
「いいか?This is a Pen.の a は、theではなくaだ。何故、the で無く、aかと言うと、aは特定、theは不特定だからだ。ペンで言うと、theは一般で言う処のPenというもの全般を指す場合に使い、aは、そのペンが特定されている場合使う。この文の場合、これはペンです。なので、目の前にあるその一本のペンを指して、言っているわけだからペンが特定されている事になるだからaなんだ。」
※ 高校3年生にもなって、こんな事教えません。もっと最初の頃に教えます。
彼女は机の上に視線を移す。そこには、指輪が置かれていた。
『体調が悪くなるのがこの指輪のせいだと分かっていたから、何度も何度もはずそうと思ったけど、そのたびに我慢して、あんなに耐えていたのに、結局、気を失った時、無意識に、はずしたのか・・・。』
彼女は美由の髪の毛が、指輪から無くなっている事に気づく。
『多分、はずした時に取れたのね。そこら辺の髪を拾っても、彼女のとは限らない・・・。』
彼女は指輪を手にとり、制服のポケットの中に入れた。
授業が終わり、美由と蛙主は、3年の女子トイレの個室の中にいた。
「この変態ガエル。変態とは思ってましたが、女子トイレにまで入るとは。どこまで変態なんですか。」
「ええじゃろ。たまには。」
「良くありません。それより、授業の途中から体がいきなり軽くなりました。授業中に彼女に分からない様に蛙主、壊したんですか?」
「うんにゃ。壊さんかった。やつを眠らして、指から抜いて、机の上に置いただけじゃ。」
「そうなんですか。」
「いかんかったか?」
「いいえ。でも、壊すと言っていたのは蛙主なのに、何で壊さなかったんですか?」
「わからん。ただ、壊すとワシ等の立場が悪くなる様な気がしてな。」
「どうしてですか?」
「何となくじゃ。理由は幾つかあるが、判断の根拠としては弱いのう。だから、感に従ったとしか言えん。」
「でも、どうしましょうか?彼女があの指輪をまた使かったら。」
「多分、もう、つかわんじゃろ。」
「どうしてですか?」
「あの指輪を使った時の痛みを覚えたから、恐怖と本能が拒絶して、もう使わんじゃろ。もし、使ったら、その時は壊そう。」
「そんなに簡単に解決しますかね?」
「髪の毛はとったから、しばらくは大丈夫じゃろうし。お前さんが彼女に髪の毛をとられんように気をつければ大丈夫な話じゃ。それに、怒りで我を忘れて軽い気持ちで使ったんであろうから、冷静になり、振り返える時間が出来れば、恐怖心が強くなって、中々やろうとはするまい。」
「わかりました。」
第3話終わり。