呪っている相手
美由は自分を呪っている相手を探すため、重たい体を引きずりならが学校中を歩いていた。
最初、彼女は、気分が悪くなる方へまっすぐ向っていたが、初めての経験なので感覚に従って方向を決ていると、どっちが正解だか全く分からないようになり、断念する。
今度は、蛙主が言った、一度、学校中を歩き周り、呪いが強くなるポイントをチェックして、その真ん中を導き出すという方法に切り替る事にした。
美由は学校中をくまなく歩く。
『どうも、3年の私のクラスから、呪いは来ているみたい・・・。要するにクラスメイトの誰かか。』
美由は自分のクラスに向かい廊下を歩きはじめた。
呪いが強くなる方へ向かっているので、だんだんと気分の悪さと、体の重さが増してきた。
そんな感じなので頭が回らないのだが、何とか思考を続ける。
『さて、クラスメイトの誰か?昨日の私を取り囲んだ人たちは別のクラスだから違う。クラスメイトは仲の良い友達はいるが、クラスメイトの中で私に呪いをかける程、トラブルになっている人はいない。須王寺さんの今朝の話では、私が派閥を作ると勘違いして、嫌な思いをしている人がいると言っていた。でも、そんな事で、呪いをかけるまで恨みを持つ人が果たしているだろうか?』
美由は頭が回らない状態ながら、犯人を推理する。
『ああ、クラスメイトを疑うの嫌だなぁあ。でも、放置したらその人の肉体的破綻が待っているわけだし。そっちの方がもっと後味、悪いし。』
美由は真っ青な顔で、自分のクラスへと入り、クラス中を見渡す。
すると、犯人はすぐに分かった。その人物は学園3番目派閥の長、片奈 麻奈加であった。
美由がそう判断した理由は単純であった。
今朝、自分の背中から髪の毛をとった時は、彼女は健康そうだった、だが、今は、自分ほどでは無いにしろ、少し辛そうに机に座っている。片奈 麻奈加は、派閥の長であるため弱いところを見せるわけにはいから、背筋を伸ばし、気丈には振舞っているが、無理をしているのは顔色を見れば分かった。
蛙主は言っていた。呪いの力が強いので、使っている魔法力は少なくは無いだろうと。それが機械的に常時続くわけで、美由が体調が悪くなりはじめてから3時間近くたっている。そのため、今朝は体調が良くとも、それだけの時間、呪いに力を使えば、体調が悪くならないはずはないのだ。
それに、自分がクラスに入って来た時に、一瞬だけ、刺す様な視線で自分を睨み、すぐに、視線をそむけ反対側を見たのが決定的だった。
『片奈さんなのか・・・。』
彼女の席は窓際の一番後ろの席だった。美由はゆっくり、片奈の方へと歩いていく。
片奈は美由を見ない様に、窓際をずっと見ている。
彼女に近づくにつれ、体の重さと気分の悪さが増していくのがわかる。
美由は、彼女を見る。彼女の指には緑色に光る指輪がはめられている。そのリング部分に、黒い線が増えているのがわかった。
彼女とすれ違う距離まで近づくと、その黒の線は髪の毛だと気づいた。それに、今朝は気づかなかったが、よくよく見れば、普通の人にはこの指輪は見えない事がわかる。
『私は見る力が弱いのに、なんでこの指輪は、こんなに見えるのだろう?』
美由は一瞬、力が抜けて、よろめく。そして、猛烈な吐き気に襲われる。
『まずい。このままじゃ倒れる・・。』
美由は急いで、教室を出た。
片奈 麻奈加は一瞬、よろめき、慌てて、教室を出ていった美由を見て、唇を噛む。
『この指輪は確かに利いている。私だってこんなに辛いんだから、あれ位じゃないと割りに合わないわ。』