蛙とお弁当
「それは、問題ですね。ますます、問題が難しくなる。」
テラミルは、朋の頭の上に乗っている蛙にそう話す。
「まあ、見えんかもしれんが、見るかもしれん。相手を見つけたら、ひとまず、探りを入れんとな。」
「蛙主を見せて、反応を見るとかどうですかね?」
「もし見えたとして、相手に警戒感を与えるだけだと思うが、下手にそいつが騒ぎ立てれば、我々化け物の立場も危うくなるしのう。」
「猫さん達に頼んだらどうですか?」
朋はそういった。
「猫は駄目じゃろうなぁあ。あやつらは、自分の利益になる事しか協力せんから。それにここ数日、猫は騒ぎすぎた。おとなしくしてた方が奴等のためじゃろう。」
「では、どうしましょう。」
「お前さんが魔法少女に変身すればどうじゃ?」
「向こうは私に注目しているのに、魔法少女に変身すればもっと警戒されると思いますが。」
「こういうのは。どうですか? 一瞬、相手が気のせいと錯覚するような魔法を隠れてつかって、反応を見るとか。」
そう朋が提案する
「おう、それは、いいのう。まあ、それは置いて、魔法少女その1よ、探しにいってこい。」
「どうやって探すんですか?それと、私一人なんですか?」
「わしがついて行ったら、もし相手が見える場合、問題があるじゃろ。それと探し方は簡単じゃ、お主が元に戻って、気分が悪くなる方向へ向かえば、きっといるはずじゃ。」
「私の感覚ってそんな、優秀じゃないんですけどね。」
「色々な場所にいけば、大体の予測はつくじゃろ。学校中を回って、気分が強く悪くなる処が大体わかるじゃろ。さっきも説明したが、遠距離での魔法は距離が離れれば効果が薄くなる。学校をぐるっとまわって、強くなる部分をチェックして、そこをつないだ中心に相手がいるじゃろ。」
「わかりました。」
「私も行きます。」
「朋ちゃんは待ってて、巻き込みたく無いし、相手が3年の教室にいたら朋ちゃん困るでしょ」
「はい、わかりました。」
朋は残念な顔をする。少し心が痛んだが、テラミルは美由に戻り、気分が悪くなる方を探しに向かった。
「腹が減ったのう。」
「そうですね。あ、私、お弁当がありますよ。」
そう言って、隅に置いてた自分のお弁当を取りにいく。
「おお、それはありがたいのう。」
朋は、お弁当を広げ、蛙と一緒にお弁当を分け合い食べる。
「ところで、化け物の立場が悪くなるって、何ですか?」
朋は、箸を口にあてながら聞いた。
「化け物が目立てば、人間にとって邪魔じゃろ?居ると知れば駆除したくなるじゃろ?」
蛙主は冷凍ハンバーグを食べながらそう言う
「蛙さんみたいなのなら、私は、別に。」
「うーん。たとえば幽霊が見たら怖がるじゃろ。」
「幽霊怖いです。」
「幽霊が特に人間の害にならなくても、居ると嫌じゃろ。それと同じで、居るとわかれば、駆除したくなる連中が結構いるんじゃよ。」
「なるほど。」
朋はご飯を口に運び、咀嚼する。
「化け物が居るとわかるだけで、駆除まで行動を移すのは稀じゃが、害をなすとなると、流石に駆除をするため、本気で動くじゃろ。」
そういって、弁当のプチトマトを蛙主はつかみ、飲み込む。
「確かにそうですねぇえ。」
「それにじゃ。化け物がいるという情報を聞きつけ、駆除をする事で金を稼いでいる連中がおってな。そいつらに見つからんようにしているというわけじゃ。」
「化け物さんも大変なんですね。」
蛙主はから揚げを食べる。
「あー蛙さん。私、から揚げたべたっかのに。」
「もう口の中じゃから駄目じゃよ。」
「あうー。そういえば、食べる時は、見える程までには存在をあげてないんですね。」
「まあ、結構、存在を強くはせんと食べる事は出来んが、見える程まであげる必要は無いのう。」
「そう言えば、存在を強めるとか薄めるとかどんな感じなんですか?」
「存在を薄くすれば、薄くする程、物質へ力を伝える事が難しくなる。空気とかの影響はそこまで無いのじゃが、ある程度、形があるものは、重くなって動かし難くなるという感じかのう。そして、ある一定のレベルまで薄くなれば、全くモノが動かせんようになる。そして、それ以上薄くなると、ある時、突然、物体を透過できるようになるんじゃ。まあ、物体の透過まで出来るやつは、化け物でも滅多におらんがのう。」
「蛙さんはできるんですか?」
「わしか?できるぞい。でも、結構、大変なので滅多にやりはせんがのう。」
「へぇえ。」
お弁当を食べ終わったので、「ごちそうさまでした。」といって、フタを閉め、青と白のチェックのハンカチにお弁当箱をくるむ。
「ところで、蛙さんって、何で美由せんぱいに協力するんですか?さっき、猫さんは駄目だって。」
「うむー。仲が良いのもあるが、あやつは意外とドジっ子じゃからのう。ほっとくと、どんどん悪い方へい行ってしまう。今日だってそうじゃ。」
「ほっとけないんですね。お母さんみたい。」