呪いを解くには。
「それは、大丈夫じゃろ。この呪いは、力が強いとはいえ、徐々に力が蓄積していって、お主を疲労させておるわけじゃから。1時間~2時間毎に一瞬、魔法少女になって、呪いの蓄積した力を中和しておけば、死にはせんじゃろう。」
「何か根本的解決には、なって無い気がしますが。」
「常に、呪いの力がお前さんに送られてくるんじゃから、しかたあるまい。」
朋は頭の上の蛙にを見るように、瞳を上にする。
「それじゃあ、寝れないような。」
「大丈夫じゃろ、術者から遠く離れれば、多分、呪いの力は薄くなる。術者がお前さんのウチにずっと張り付いて、ストーキングしてるなら別じゃろうが、相手もそこまで暇じゃなかろう。そいつにも生活があるじゃろうから。」
「呪いって、距離が関係するんですか?」
「しないのもあるが、基本的には力を相手に送っているわけじゃから、遠距離になればなるほど、力を送るための力が必要になるし、距離が長くなれば長くなるほど、力は拡散し、薄くなる。更に相手の位置の特定も難しくなるし、もし特定が出来たとしても命中率も下がる。」
「魔法といっても、そんなに便利じゃないんですね。」
「そうじゃ。ワシが言うのも何じゃが、魔法より、普通にやったほうが遥かに楽じゃ。正直、呪いなんてまどろっこしい事をせんでも、相手を殴った方が遥かに楽じゃ。」
『?何かおかしい。』
そう、テラミルは思った。
「美由先輩の呪いを解く方法って無いんですか?」
「相手を特定して、辞めさせる意外にないじゃろう。じゃが、ほっといても良いと思うぞ、わしの個人的予想じゃが、一週間も我慢すれば、多分、収まると思うぞい。」
『やはり、おかしい。なぜ、一週間と言えるんだろう?』
「すいません、蛙主、何か隠してませんか?」
「別に何も隠してなんぞおらんぞ。」
「では、何故、一週間と言えるんですか?」
「そりゃ、多分、この呪いをかけているのは個人で、呪いとはいえ力を使う。かなり強い力な上に接触ではなく、長い距離から力を送り、しかも、正確にお主に力を送っておる。使っている魔力は少しではないじゃろう。それがずっと続くのじゃ、肉体的負担はかなりのもんじゃろ。言ってみれば、お前さんがその姿でずっといるみたいな状態が続くわけじゃ。どんな力を使っているかは知らんが、魔法少女の様な存在を犠牲するタイプかもしれんし、精神に異常をきたすタイプかもしれん。ただ、魔力を使うだけのタイプかもしれん。どちらにせよ、そんな状態をずっつ続ければ、どうなるかは想像できるじゃろ。」
「と、言うことは、その人がこの呪いを使い続ければ、いつかは、肉体的限界が来て、その人は破滅して終わると。」
「わしはそう思っておるが。どうせ、本人に辞めてくださいと言って、はい、そうですかと、聞くとも思えんし、お前さんは既に呪いを中和する方法をもっておる。後は時間が勝手に解決してくれるのが分かっておるんじゃから、ほっとくのが一番だと思うがのう。」
美由は傷だらけの黒猫の言葉を思い出す。
『大抵の事は、火の粉を払っていれば、そのうち勝手に解決するか・・・。』
「でも、それでは後味が悪すます。」
「人間のことわざに、人を呪わば穴三つというのがあるじゃろう。意味があってるかどうかは分からんが、呪いには呪いのリスクがある。そのリスクを呪っている当人が知っているか知らないかは別にして、その責任は当人が負うべきことであって、お前さんが心配する事ではない。第一、わしが言っている事だって、わしの推測にしか過ぎんし、もし、この推測が当たっていたとしても、お前さんは知らないフリをしてれば良いだけの話じゃ。」
「駄目です。私も手伝いますから、相手を探して、辞めさせましょう。」
朋が両拳を握って前に出し、そう力強く言う。
「お主は、関わらん方が良いと思うんじゃがなぁあ。まあよい。別の手を考えよう。多分、相手はこの呪いをかけるのに、道具を使っておるはずじゃ。」
『このカエルも、私と同じで、この子に弱いなぁあ。』
「そう、思う理由はなんでしょう?」
「ずっと呪いがお前さんに送られてきておるからじゃ。ずっと力を使い続けるのは無理じゃ。多分、魔法の道具を身につけ、その魔法道具が自動的に相手の力を吸収してお前さんに呪いを送っておると思うのじゃ。」
「なるほど。」
「その魔法の道具を壊すか取れば、解決する。」
「でも、人前でその人のモノを壊したり、盗んだりしちゃ。後々、問題になりますよ?」
「それは、魔法少女になって姿を消して、魔法少女の魔力を中和する力を使って魔法道具の力を発動する能力だけ壊せば問題なかろう。」
「相手がそれを身に着けている状態でその力を壊したら、相手に影響が出るんじゃないですか?」
「まあ、全く無いとは言えんなぁあ。破壊時の影響を回避したいのなら、相手から一度それを引きはがさないと駄目じゃろなぁ。まぁあ、その前に、お主の力では、多分、魔法道具の力を無力化するのは無理な気もするが・・・。」
「では、どうするんですか?」
蛙主は朋の頭を叩く。
「この嬢ちゃんの爆発的な力を使わんと無理だと思うぞい。」
「朋ちゃんを巻き込めと・・・。」
「私、頑張ります。」
「蛙主では駄目なんですか?」
「わしか?わしなら出来ん事は無いじゃろうが、相手が身につけているものを引っぺがすとなると、一度、姿を見せる必要があるぞい。魔法少女は見えなくても、物質に強く干渉できるが、わし等はそれなりに物質に干渉するなら、存在を強くする必要がある。別にひっぺがさんで破壊して構わんなら、やっても構わんが。姿を現すのはいやじゃなぁあ」
「でかい蛙が、突然、現れたら、そっちの方が大事ですもんね。」
「私がテラミルになって、相手から一度引き離した後、蛙主がその場で破壊してから私が返すという方法ならいいでしょ?」
「まあ、それでも、よかろう。今は相手の魔法の道具が何か分かっとらん。相手の身に着けているものが何かわからんと、作戦の立てようがないからのう。それは、分かってから、どうするか考えるとしよう。」
「あと、ひとつ、別の懸念があるぞい。」
「何です?」
「相手が魔力を使っているという事は、魔法少女が見える可能性もあるという事じゃ。魔法少女は普通の人間には見えんが、化け物のわしらにはハッキリ見えるからのう。」