会議
蛙のクワクワという鳴き声が、学校の隅で響く。その横に朋と美由が立っていた。
「これで、蛙さんが来てくれるんですか?」
「多分ね。」
「どうやってくるんですか?走ってくるとか。」
「あんな山の中から蛙が走ってこれるわけないでしょ。蛙主は瞬間移動が使えるの。」
「へぇえ、蛙さんはワープが出来るんですね。でも、猫さんの時はワープが使える気配なんてありませんでしたよ?そしたら、猫さんから逃げられたのに。」
「発動に時間がかかるからねぇえ。存在が薄いとはいえ、自分の肉体を移動するわけだから、それなりのコストと準備が必要なのよ。」
「良く分からないですが、でも、ワープするには時間がかかるのは分かりました。それより美由先輩、体の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないかな。さっきよりは、ちょっとマシな気がするけど、気のせいかもしれないし。」
「私は、何にもできませんが、頑張ってください。」
美由は朋の頭を撫でる。
「ありがとう。朋ちゃんに応援されると、不思議と元気が出るよ。」
「えへへ。」
蛙主が突然、目の前に現れる。蛙主は何もしゃべらず、ジーっと美由の顔を見つめる。美由も何も話さず蛙主を見ている。
「何じゃ。魔法少女その1よ。この嬢ちゃんは、もう巻き込まんのじゃ無かったのか?」
「そういう、あなたも二日前に巻き込んだでしょ。」
「それと、これとは別じゃ。」
「あなたを呼び出そうと思ったら見つかってしまって・・。断るわけにもいかなくなったんで。」
「随分、決意が弱いのう。完全に拒絶するぐらいの覚悟をもたんかい。」
「すいません。」
「あうー。美由先輩に拒絶されるのは嫌です。これから気をつけます。」
「さて、何じゃったかな?そう言えば、魔法少女その1よ。顔色が悪いぞ、どうした。」
「蛙主。あなたは、何しにここに来たんですか?蛙の方に、魔法的力で、体調が悪くなったからアドバイスが欲しいと伝えたはずですが。」
「そうじゃったのう。お前さんの熱でうなされる寝姿を拝みに来たんじゃった。随分、色っぽいじゃろうに。」
「そういう、エロい考え辞めてください。」
「わしの生きがいじゃからしかたあるまい。」
「それより、調べて貰いますか?」
蛙主はジーっと、美由を見つめる。
「何か魔法的な力がお前さんの周りを包んでいる様じゃが、触ってみんと良くわからんのう。」
「どうぞ。」
蛙主は足をスケベな手つきで触る。美由は飛びあがる。
「何するんですか、このスケベガエル。」
「いや、気持ち良さそうな足だったんで。」
朋はしゃがんで怒った顔をする。
「蛙さん駄目ですよ。美由先輩は綺麗なので、そういう風に触りたい気持ちは分かりますが、恥ずかしがり屋なので、そんな事しちゃ駄目です。」
『わかるのか・・・。』
「すまん。すまん。それより、魔法少女その2よ。わしを、きゃつの頭の上まで持ち上げてくれんか?手が届かん。」
朋は蛙主のわき腹を両手で抱えて、持ち上げる。
『軽い。二日前は色々あって気にならなかったけど。蛙さんって、見た目よりずっと軽いんだ。』
朋は美由の頭まで、蛙主をもっていこうとする。身長差があるので、少し万歳気味になるので、美由は上半身を前に倒して、頭を前に差し出しす。蛙主は、美由の頭に手をのせた。
「むー。お前さん呪われとるなぁ。しかも、かなり強い呪いじゃ。」
美由は上半身を起こす。朋はぬいぐるみを抱える様に蛙主を抱く。
「呪い?」
「そうじゃ。呪いじゃ。」
「それって、もしかして、正義の味方である魔法少女を倒すために、悪の組織が魔法少女に呪いをかけてたとか。」
そう朋が言う。
「うんにゃ。そんなのあるか。この魔法少女が自分達に害があるのかどうかもわからんのに、魔法少女だからという理由だけで、いきなり呪いをかけるなど、ただのアフォがする事だぞい。」
「確かに。でも、私は呪われるんですよね。」
「多分、これは、個人がお主を呪っておるんじゃ。お主、誰かにかなり恨みを買っているようじゃの。」
「最近、トラブルはありましたが、呪いをかけられるような事とはとても・・・。」
「そう、思っているのは、お前さんだけかもしれんぞ。」
『また、その台詞か・・・。』
朋は自分の胸元にぬいぐるみの様に抱かれている蛙主を見る。
「この呪い解けないんですか?」
「解けるぞい。力は強いが単純な呪いじゃし。」
「では、お願いします。」
「嬢ちゃん、わしを、嬢ちゃんの頭の上に乗せてくれるかな?」
朋は抱きかかえていた蛙主を頭の上に乗せる。
蛙主は呪文を唱える。すると、緑の光が美由を包む。
「どうじゃ?」
「体が軽くなりました。押さえている力も無くなったみたいです。」
緑の光が消えると、また、美由の体調が悪くなる。
「駄目ですね。また、体を押さえられる様な感覚が来ました。」
「うーん。外からずっと、力を送り込まれているようじゃのう。」
「何とかならないんですか?」
「魔法少女に変身して、力を中和すればどうじゃ?対象が分かったんじゃから、そんな難しくは無いじゃろ。」
「それは、気づきませんでした。」
美由はテラミルに変身する。
「確かに、大丈夫みたいです。でも、私、長時間、この格好を維持できませんよ?授業もあるし。」