髪の毛
美由は教室に戻ろうと、廊下を歩き出す。その時、誰かが自分の背中をちょんと触って来た。
「桜間さん。後ろに髪の毛がついてましたわよ。」
そう言って、美由の髪をつかんでいたのは、同じクラスの女子だった。学園3番目の派閥の長で、片奈 麻奈加という人だった。
「ありがとうござます。片奈さん。」
美由は髪をつかんだ指に緑色の指輪をつけているのが気になったが、注意してもトラブルになるだけだろうからあえて無視する。先生が注意するだろう。余計な事をしてこれ以上目立ちたくもないし。
美由はそのまま、教室へと入っていった。
片奈はにやけけ、指にはめていた指輪をはずし、リング部分に美由の髪の毛を巻きつけ、また指にはめた。
『この指輪は指にはめている時は人には見えない。平民の下っ端どもは役に立たないどころか、私の名を傷つけたけど、この指輪は相手にわからないように呪いをかける。思い知りなさい、身分、不相応な夢を見たことを。』
朋は、自分の教室で、友達3人に参考書を見せる。
「見てみて!美由せんぱいからのプレゼント。」
「お、よっかたなぁあ朋。」
「でも、プレゼントが参考書とは、色気も糞もないなぁあ。」
「ぶー。美由せんぱいは、私を心配してくれたんだよ。心がこもっているから、私とってもうれしかったの。」
「でも、朋、この参考書4冊、重ねて置くと、物凄い分厚さだよ。本当に勉強するの?」
「がんばるもん。」
「多分、家に帰って、本棚に置いたらそのまま、捨てるまで一生出てこないな。」
「うむ、全く同意だな」
「ぶー。」
3時限目を過ぎた頃から、美由は体調がおかしい。肩が少し重いし、ちょっと熱がある。風邪にしては時期が違う様な気もするが、東南アジアとかは6月にインフルエンザが流行るというし。
昼休みに入り、美由は真っ青な顔をしていた。熱はちょっとだが、明らかに体が重い。風邪とは微妙に違う気がするというより、病気とは別な不自然な感覚を覚えていた。
外から、体を押さえつけらる様な感覚と、魔法のような気配。
『仕方ない。蛙主に聞いてみよう。』
そう思い、校庭に出て、蛙を探す。
そこで、外で友達3人と芝生の上でお弁当を食べようとしている朋を見つける。
「美由先輩。お弁当一緒にどうですか?」
そういって立ち上がり、てってってと近づいてくる。
朋は気分が悪そうにしている美由の顔を見て驚く。
「美由先輩。大丈夫ですか?顔が真っ青」
「朋ちゃん、シー。どうも、魔法関係の問題みたいなの。今から、蛙主を呼ぶから今はちょっと。」
「私も手伝います。」
美由は断ろうと思ったが、朋は既にそこにはいなく、友達のところに向かい、一緒にお弁当が食べられない事をあやまりに行っていた。