ラブホテル
傷だらけの黒猫と、彼に取り憑いているセーラー服姿の幽霊は、どしゃぶりの雨の中、海沿いにあるラブホテルの室内駐車場にいた。
隔離された空間に籠もった雨音が重低音で響き渡る。
「ふっふっふ、ジロー。私をこんな処に連れ込んで、何をするつもり?」
意地悪な笑みを浮かべながら幽霊の本田は猫に話しかける。
「はいはい。」
黒猫は香箱を作り、しっぽをふりながら、そっけなく、こたえた。
「ジロー。ここが、どんな処か知ってる?」
「人間の男と女が、交尾する処でしょ?」
「ジローが姿形が違う生物とHをする趣味があったなんて、以外。」
「あなたは、生きて無いし、肉体もないじゃないですか。」
「そうか、ジローは、カワイイ猫さんに私を取り憑かせて、襲うつもりだね。ジロー変態。」
「何で、そんな、言われも無い非難を浴びなくちゃいけないんですか。」
「だって、ラブホテルだよ?中学生の身の上としては、出来れば一生縁が無く、彼氏のおうちとかで結ばれたいと願うものだよ。それを強引につれてくるなんて。これは責任をとってもらわないと。」
「あなたはカワイイとは思いますが、正直言って、欲情する対象ではないので。」
「酷いジロー。何のために、ここまで来たと思っているの?」
「何を言っているんですか。あの黒服の女と宮崎とかいうスーツの男が、ここに泊まっているんで彼等が出てくるのを待っているんでしょうに。」
「もう、ノリが悪いなぁジローは。もっと、ジョークを交えて、会話を楽しまないと。」
「こんな、周囲から太鼓で威圧されている様な環境で、良く会話をしようとか思いますね。」
「ただ、待っているの退屈なんだもん。」
「引っ込んでればいいじゃないですか。出てくれば、起こしますんで。」
「でも、そういう気分じゃないんだよねぇえ。ジロー。肉体かして。」
黒猫は少し考える。
「・・・・・。いいですよ。」
そうして、少女に肉体を貸す。
「・・・・!!。何?この臭い。」
「生ゴミと、人間の男女の汗と欲情した臭いがしみついていて、それを芳香剤か香水でごまかしている感じですかね。ここは外に視覚情報を漏らさない様に密閉されてますからね。換気をちゃんとしてなければこんなもんでしょ。」
「Hすると、人はこんなキツイ臭いを出すの?」
「欲情すれは、多かれ、少なかれ、本人には分からない程度ですが臭いは放ちますよ。臭いのタイプは人それぞれ違いますが。それに人間だとそこまで感じないと思いますよ。猫の鼻を通しているからきつく感じるだけかと。」
「なるほど。処で、ジロー。ここから離れない?あんな臭いがつくのは正直、嫌だな。」
「私もそうしたいですが、外は大雨ですよ。」
「離れた場所でも大丈夫なんでしょ?あのシスターさんは強い臭いを放っているから。遠くからでも分かるって言ってたじゃん。」
「大雨で臭いがかき消される上に、ここには似た臭いが充満していて、感知できないんですよ。雨が止むまで我慢してください。」
「はーい。処でさ。ジロー?」
「何ですか?」
「彼等の目的って何なのかな?」
「分かりませんね。彼女等は魔法少女様達が通う学校と、退魔師の方々が副業で改築している家を下見されていたので、もしかしたら、あの月見とかいう退魔師に用事があるのかもしれませんね。」
「もしかして、私達みたいな、幽霊や化け物を共闘して退治しましょうとか。ほら、私達を突然、襲って来たし。」
「さあ。分かりませんね。それに、私達を襲ったのは偶然見つけたから、思想的に襲った感じに思えましたが。」
「ジロー。心当たりがあるのに分からないと言ってる?そろとも、リアルで分からないの?」
「後者ですね。私はそんなに優秀ではありませんし、判断をするには全く情報が無いので。」