表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/270

保健室

 朋は近藤遙人にお姫様抱っこをされながら、保健室へと向かっていた。

 登校ラッシュ時なので、彼女達が進む先には当然、登校して来た生徒がいっぱおり、冷たい目線で朋を見つめていた。

 イケメンの先生に抱かれている、小柄な少女は頭の回転が鈍いために、そういう視線には全く気付かずにいた。

 保健室は靴だなの隣にあった。扉は閉まっている。

 「月見君。保健室の扉を開けて貰えるかな?見ての通り両手がふさがっているんで。」

 「ええ構いませんよ。」

 そう言って、月見は扉を開ける。

 「ありがとうね。月見君」

 「どういたしまして。」

 近藤は、づかづかと保健室の中に入り、室内を見回す。

 「あれ?保健の先生はいないのか。」

 近藤はベッドの上に朋を置き、毛布をかける。

 「月見君。僕は保健の先生を呼んでくるから。今日は特に伝える事も無いし教室に行っていいよ。」

 近藤は、『朋』に気を回しすぎて、待ち合わせ場所を決める事を忘れていた。

 「気になさらずに。行って下さい。私はこの子の様子を見ておりますんで。」

 「そうかい?」

 近藤は朋のほっぺをつつく。

 「良い子でいるんだよ。」

 そう言って、振り返ると、複数の女子生徒が保健室の入り口で、三人を覗いている事に気付く。

 「ハイハイ、君たち。良い子だから、そこ開けてね。」

 入り口を塞いでいた女子達は、すぐさま道をあけた。近藤は保健室を出て行く。

 そして、女の子達はまた、保健室内に目をやる。

 その視線に気付いた月見は、彼女達を見て言う。

 「申し訳ありませんけど、彼女、気分が悪いの。そっとしてくれるとありがたいんだけど。」

 「あ、すいません。月見さん。」

 野次馬の女子達は慌てて、去っていった。

 月見は、朋を見つめる。

 朋は毛布で口を隠しながら、ちょっと怯えた表情で月見をみていた。

 「あなた、昨日、瞑想を使ったでしょ?」

 朋は不思議そうな表情をする。

 「昨日、全校朝会があった後に、私の前で桜間先輩に使ったやつ。今のあなたの症状は覚え立ての子が、自分の力量も考えずに調子にのって使った症状にそっくり。」

 「あ、あのーえっと。」

 朋は何か言おうとするが、頭が回転しないために、何を言って良いかわからない。

 「いいわよ。無理にしゃべろうとしなくて。私もなった経験があるから。今はじっくり寝なさい。寝れば治るから。」

 朋はしばらく月見を見ていたが、視線をはずし、ゆっくりと目を閉じた。

 「あなたは何モノなのかしらね。」

 

 「失礼します。」

 そう言って、保健室に入って来たのは、桜間美由と桐野舞奈だった。

 「あら、桜間先輩に桐野先輩。おはようございます。」

 「月見さん。そこで寝てるの朋ちゃんだよね?どうしたの?」

 「うーん。ただの寝不足だと思いますよ。」

 美由も桐野も、月見の言い回しが奇妙だとは思ったが、無視してベッドに寝ている朋を見る。

 朋は目を閉じていたが、目蓋を開き、美由を見た。何かボーっとしている。

 美由にもこの症状に心当たりがあった。イメージ戦闘のやり過ぎで脳に負荷がかかりすぎた時に出る症状だった。

 「美由せんぱい・・・・。」

 「朋ちゃん。大丈夫?」

 「桜間先輩。今は寝かしてあげましょう。」

 「そうだね。」

 

 近藤と保健の先生が帰ってくる。

 近藤は新しく増えている二人を見る

 「あれ?君たち。どうしたんだい?」

 「朋ちゃんが、先生に連れられて保健室に入るのを見たので。」

 「なんだい。僕のメイドさんになたいって言いに来たんじゃ無いのか。」

 「ハイハイ。冗談はいいから。そこの三人どいて、邪魔。」

 保健の先生がベッドにむらがる三人をどけて、朋の横につき、指を一本つきたてる。

 「はい、これ何本?」

 「・・・・・・。一本です。」

 「じゃあこれは?」

 「三本です。」

 「一足す一は?」

 「・・・・・3いや。2です・」

 「一引く1は?」

 「2?いいえ0です。」

 先生は毛布をはぐ。

 「右手をあげて。はい、つぎひだりてあげて。ぐっぱーぐっぱーして。どっか、しびれるとか、逆に動かないとかある?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ